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第32話

晩ご飯を食べに行く途中、さっき起きたことを考えて、まだ動揺していた。

江川アナがあの質問をした時、私はなぜか江川宏が私を守る言葉を言ってくれることを期待していた。

例えば

「彼女が家のお金を使うのは当然だろ」とか

「彼女が家のお金を使うのにはお前の同意が必要なのか?」とか

しかし、江川宏の答えはこうだ。

「この車は祖父が彼女に買ってやったものだ」

彼はこう言ったのだ。

それで江川アナの口を塞いだ。

しかし、この車は明らかに彼が最近私にバレンタインデーのプレゼントとして贈ったものだ。

江川アナが騒いでいる時、彼はこの車が私のものだと気づかなかったし、それはどうでもよかった。

まさか彼はこの車がどうやって私のもとに来たのかすら忘れ去っていたなんて。

いや、もしくは彼は覚えているのかもしれない。

でも、江川アナには知られたくなかったのだろう。実は彼の私に対する態度はそこまで悪くないということを。

私、この江川夫人、この名前はどうしてこうも役立たずなのだろうか?夫婦の共同財産も使えないの?昔の恋人の前で隠さなきゃならないの?

しかし、彼は私の前で江川アナに車を贈り、冷たく彼女をなだめたのだ。

「もう30歳なんだからわがまま言うなよ。同じ車を買ってもいいし、色を変えるのにも時間はかからないだろ」

ネオンがつき始めた外の景色をみながら、突然胸が痛くなり、胃もとても気持ち悪くなった。

私に贈ったものと同じものを他の人にも贈ることができるなんて。

河崎来依は車を運転しながら尋ねた。

「さっきのことを考えているの?」

「うん」

離婚の件は変更することはないとわかっているのに。

それでも何度も失望するのが怖かった。

河崎来依は目を細めて、いつものように叱ることはなく、ただこう言った。

「彼女が本当に同じ車を買うっていうなら、私が彼女に人としてのルールを教えてやるわ」

「何をするつもり?」

私は違和感を覚えた。

「安心して、私が計画を立てているから、あなたは安心して妊娠期間を楽しんでなさい!」

その火鍋店はディーラーからさほど遠くない場所にあり、河崎来依が言い終わると車はゆっくりと店の前に停まった。

この店は10年以上営業しており、少し不便な所にあるが、味が良いのが魅力だった。秋冬の季節には地元の人が集まり、繁盛していた。

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