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第29話

「腰がとても痛いわ……」

彼女は江川宏の腕の中に抱かれながら泣き訴えた。

「ただ彼女の仕事の進捗具合を尋ねただけなのに、私を押しのけたのよ……宏、いっそ彼女を部長にさせましょ。他の人たちも彼女の味方だし、私はこんな職場にいたくないわ」

「……」

私は彼女が話をでっち上げる腕前に驚き、あまりの腹立たしさに笑いまで出た。それとは逆に江川宏の見定めるような視線とぶつかった。

「そうなのか?」

彼の声はまるで氷が張ったように冷たく、私は全身が凍りつくのを感じた。

私は自嘲するように言った。

「私が違うと言えば、あなたは信じるの?」

「宏……」

江川アナは涙を浮かべながら、細い指で彼の襟を引っ張った。彼が着ているスーツは私がデザインし、手作りしたものだ。

今年のホワイトデーに彼に贈ったプレゼントだった。

彼は私に答えず、ただ視線を下げて腕の中の女性を見つめた。眉をひそめてイライラしているようだったが心配した様子を見せて言った。

「子供じゃないんだから、転んで泣くなんてことがあるか?病院に連れて行ってあげるよ」

その後、大股で去っていき、心の中の大切な女性に何かあるのではないかと心配して、冷たい背中だけを残していった。

私は深呼吸して目を精一杯開き、にじむ涙がこぼれないように堪えた。

清水南、何を失望しているの?

彼はもうすぐただの元夫になるわ。

彼らが遠く去った後、小林蓮華が慌てて駆けよってきた。

「南姉さん、大丈夫ですか?」

「何ともないわ」

と私は苦笑した。

江川宏は私に対して何もできやしない。

でなきゃ、彼は祖父に説明できないから。

小林蓮華は彼らが去った方向を向いて唇を尖らせ

「社長が江川部長を抱いて出ていくなんて、みんな二人の関係をあやしんでいます。本当に彼女が私たちの社長夫人なんじゃないですか?」

そう思い、彼女は泣きそうな顔で私を見つめ、心配そうに言った。

「本当にそうなら、どうしましょう、姉さん?あなたと彼女は仲が悪いから、彼女はきっとあなたをいじめるでしょう!」

私の胸は少しチクリと痛み、もう麻痺していた。

彼と結婚して3年、河崎来依と加藤伸二以外の会社の誰も私と彼の関係を知らなかったのだ。

今、彼は私とまだ離婚していないが、江川アナとの関係を隠すことなく行動していた。

それなら、なぜ昨夜私を抱き
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