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第4話

木村祐子が私と戸棚の間に立ちはだかった。

「佐藤さん、なんて無礼な方なの!不法侵入はまだしも、私という家主をまったく眼中に入れていないのね!」

私はゆっくりと手を下ろしたが、心の中ではすでに確信していた。

先ほど見かけた顎髭を生やし眼鏡をかけた男は、間違いなく私の夫、田中浩二だった。

そして今、彼はこの目の前の戸棚の中に隠れているのだ。

隠れたいなら、とことん隠れていればいい!いつまで隠れていられるか、見ものだわ!

「自分の家に来て、あなたに何の関係があるというの?」

私はバッグから不動産証書を取り出し、彼女に向かって振ってみせた。「あなたが家主だっていうなら、私は誰なの?」

木村祐子はその場で固まってしまった。私はその隙に、すでに階下で待機していた引っ越し業者に連絡を入れた。

作業員が荷物の搬出を始めると、木村祐子はようやく我に返った。

「たとえあなたが家主だとしても、事前連絡もなしに退去させるなんてできないわ!」

「あなたはもう半月も家賃を滞納しているのよ。私が立て替えたけど、それでもあなたは出ていかなきゃならないの!」

しばらくすると、引っ越し業者の人たちは部屋を綺麗さっぱり片付けてしまった。

木村祐子は階下に立ち、可哀想そうに泣いていた。大勢の野次馬が集まってきた。

「私と浩二はずっと昔に別れたのよ。あなたたち結婚してこんなに長いのに、どうしてまだこんな昔のことにこだわるの」

「これだけ長い間、私たちは一切連絡を取らなかったわ。あなたを気遣ってのことよ。今、浩二が亡くなって、帰国したのは彼を悼むためだけなの!」

「佐藤さん、こんなふうに私を追い詰めなくてもいいでしょう。浩二が知ったら悲しむわ!」

義母も横から口を挟んだ。「みなさん、見てください!この女が、どうしてもケーキが食べたいって言い張ったせいで、私の息子が車にはねられて死んだんです!」

彼女たちの息の合った芝居に、周りの人々の私を見る目が次第に変わっていった。

好事な人が見かねて警察に通報しようとしたが、木村祐子は慌てて手を振った。

「いいえ、結構です。引っ越しますから」

木村祐子と義母が苦労して戸棚を運んでいるのを見て、私は心の中で痛快に思った。

彼らは人脈作りにお金を使い果たし、もう残りは少ない。義母の家に引っ越せば発見されるリスクがある。

私に追い出
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