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第3話

田中浩二の一周忌も過ぎないうちに、義母が会社にやってきた。

前世と同じように、彼女は同じ理由で私に会社を譲るよう迫ってきた。

「私の息子があなたのために命を落としたのよ。何か言い分があるんじゃないの?」

「どんな言い分が欲しいの?」

私は眉を上げ、彼女の演技を見守った。

義母の表情が和らぎ、まるで大きな恩恵を与えるかのように言った。「あなたの名義の車と家を美英にあげなさい。彼女は兄を失い、これからの人生の支えもなくなったのよ」

「ふーん、それで?」

「そして、この会社をわたしにちょうだい」

「あなたが浩二を死なせたんだから、私の老後の面倒を見てくれる人もいなくなったわ。会社をくれれば、私も将来の希望が持てるわ」

私は思わず笑ってしまった。彼女は即座に焦り始めた。

「息子が死んだばかりなのに、そんなに嬉しいの?わざと彼を殺して、不倫相手と一緒になりたいんでしょ!」

私は彼女の戯言を無視し、銀行カードを彼女の前に置いた。

「車も、家も、会社も、あなたには渡さない」

「これが田中浩二名義のすべての財産だ。問題なければサインして」

私が契約書を彼女の前に置くと、彼女は一目見ただけで慌てふためいた。

田中浩二名義の財産はほとんどなかった。彼はただの高給取りで、月給制だった。

さらに、プライドが高く、密かに義母と義理の妹に送金し続けていたため、今や口座には200万円しか残っていなかった。

「このあまっ!不倫相手と一緒に私の息子を殺しておいて、彼のお金まで横取りするつもりね!ああ、年寄りが若い者を見送るなんて、なんて悲しいことなの!」

彼女が何度も私が浩二を殺したと言い続けるので、長年抑えてきた憎しみがついに爆発した。

「あなたは私が殺したと言い続けているが、警察に田中浩二の死を調べてもらう?」

「加害者のドライバー、葬儀社の職員、そして事故現場周辺の監視カメラ、すべてよく調べるべきだ!」

「本当に私が彼を殺したのか、それとも......」

私が言いながら携帯を取り出して警察に通報しようとすると、義母は慌てて私の手を押さえた。「サインする、サインするわ!」

義母は不本意ながら自分の名前にサインし、帰り際に私を睨みつけた。

私は表情を引き締め、このままではいけないと悟った。積極的に行動を起こす必要があった。

前世で義母が私に見せた写真から判断すると、田中浩二と木村祐子はずっと裕福な生活を送っていたようだった。

義母が私から会社を奪ったのは、当然田中浩二に渡すためだろう。

そう考えると、私は急いで階下に降り、こっそりと義母の後をつけた。

しばらく歩くと、夫の初恋の相手である木村祐子と、顎鬚を生やし、眼鏡と帽子をかぶった男が近づいてくるのが見えた。

彼らに気づかれないよう、遠くから観察するしかなかった。

義母が何を言ったのかわからないが、木村祐子とその男は落胆した表情を浮かべていた。

その日、私は彼らの後をずっとつけて家まで行き、都心のあるマンションに入るのを見届けた。部屋番号をしっかりと記憶した。

会社に戻ると、私は助手を呼んだ。

「このマンション、所有者と連絡を取ってくれないか」

助手の仕事は速く、午後には所有者の情報が私の机の上に置かれていた。

私は番号に電話をかけた。

高額で一括払いで購入したいと伝えると、所有者はすぐに同意した。

たった一日で物件の名義変更が完了した。

「今、部屋には入居者がいるが、退去してもらおうか?」

私は首を振った。「いいえ、結構だ。私が直接謝罪に行く」

翌日、私は引っ越し業者を連れてそのマンションを訪ねた。

驚いたことに、ドアを開けたのは義母だった。

彼女は私を見て驚愕し、入口を塞いで中に入れようとしなかった。

「佐藤美咲?なぜあなたが?」

「家を引き取りに来たのよ!」

私は彼女を押しのけて、堂々と中に入った。

部屋の中をあちこち歩き回ると、義母は慌てふためき始め、首を伸ばして廊下の奥の一室に向かって叫んだ。

「佐藤美咲、これは不法侵入よ。警察を呼ぶわよ!」

「誰か来て!殺人犯を捕まえて!」

私はすぐさまその部屋に向かった。

ドアノブに手をかけた瞬間、ドアがゆっくりと開いた。

そこには夫の初恋の相手、木村祐子がいた。

「浩二からよく話を聞いていたわ。今日やっとお会いできて......ただ......」

彼女は演技がかった様子で目頭を押さえた。私にはそんな芝居を見ている暇はなかった。彼女が差し出した手を無視して、部屋に入った。

書斎のような部屋で、中央に机が置かれ、その横には大人一人が入れそうな背の高い戸棚があった。

私は戸棚の前に立ち、木村祐子の緊張した表情を見てほんの少し微笑んだ。

戸棚を開けようとした瞬間、木村祐子はついに演技をやめた。

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