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第276話

 「すぐに行きます!」清次は心が緊張し、すぐに返事をした。

「由佳ちゃんにはまだ知らせないで」

「わかりました」

出発前に、清次は再び主寝室に戻り、「由佳ちゃん、会社の仕事の引き継ぎが残っているので、ちょっと行ってくる」

「行ってきて。家には山内さんがいるから」由佳は特に気に留めなかった。

……

清次が病院に到着すると、救急室のランプがまだ点いていた。

おばあさんと家政婦が外の椅子に座って待っていた。

「おばあさん!」山口清次は急いでおばあさんの前に歩み寄り、心配と焦りを込めて尋ねた。「どうしたんですか?おじいさん突然……」

おばあさんは冷静な顔をしてため息をつき、言葉を発しなかった。

家政婦が清次を一瞥し、「加波さんが今朝、家に来て、おじいさんに何か話したようです……それからおじいさんが会社のことを知って、突然……」

清次は唇を引き結び、目に鋭い光を浮かべ、深呼吸をして消防通路の入口に向かい、電話をかけた。

「今朝、歩美が僕の実家に現れた。あいつををすぐに探し出せ」

「了解しました」

通話を終えた後、清次は待機エリアに戻り、おばあさんの前に片膝をつけ、彼女の手を握りながら、少し赤くなった目で見上げた。「おばあさん、僕を責めてください」

もし彼が歩美を国に連れ帰らなければ、由佳は離婚を望まなかったかもしれないし、こんなことも起こらなかっただろう。

もし彼が早く歩美を送っていれば、こんなことも起こらなかっただろう。

これらの問題の元凶は、すべて彼にある。

「いい子ね、早く立ち上がりきなさい」おばあさんはすぐに手を伸ばして彼を支え、「おばあさんはあなたを責めていないわ。ただ、お兄さんが……」

「おばあさん!」山口翔がエレベーターの入り口から駆け寄り、焦りながら聞いた。「おじいさんはどうなっているんですか?!」

おばあさんは首を振った。「中で緊急救助を受けている……」

「どうしてこんなことが……」

家政婦は先ほど清次に話した内容を山口翔にも繰り返した。

歩美がおじいさんと単独で会い、何かを話したと聞いた山口翔の顔色がわずかに変わり、目立たないように顔を背けて、自分の顔を二度叩いた。「すべて僕のせいだ!僕のミスだ!」

おばさん、いとこの龍之介、そして森由美咲が次々と駆けつけた。

一時間後、救急室の赤いランプが緑に変わり、お医者
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