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第277話

 彼が電話を切り振り向くと、清次が一人で椅子に座り、虚ろな目で前方をじっと見つめていた。まるで石のようだった。

翔が近づき、彼の肩を軽く叩いた。「清くん」

清次が我に返り、翔の心配そうな目を見て、声を絞り出した。「お兄さん、大丈夫です」

ただ、ショックを受けただけだ。

おじいさんは清次にとって、由佳にとっての山口たかしのような存在だった。

母親が誰かも分からず、父親の顔も覚えていない。

記憶がある限り、おじいさんのそばにいた。

おじいさんとおばあさんが彼を育ててくれた。世代が違うにもかかわらず、実の親のように感じていた。

「由佳ちゃんには伝える?」

「今は隠しておこう。彼女はまだ胎気が不安定だから、耐えられないかもしれない」清次は遠くを見つめながら言った。

こんな大事なことを長く隠し通すのは難しいと分かっている。

「そうか」

「お兄さん、お兄さん、記者が来ました」龍之介が遠くを指さした。

「まずは警備員を呼んで、彼らを止めさせよう。ボディガードも呼ぶ」翔が言った。

山口氏グループの会長が急に入院し、社長の人事が変わったことは、メディアにとって大ニュースだ。

最近では流行を追うために手段を選ばないメディアが多く、以前には女優が重病で、その病室の前で待ち構え、医師が死亡を発表するのを待ってニュースを流していた。

記者の数が多すぎて、警備員は強硬に阻止することができず、場は混乱していた。

誰かが救急室の前に突進し、カメラを清次の前に突き出した。「こんにちは。お話を……」

「バン——」

記者は割れたカメラを見下ろし、立ち上がった山口清次を見て、驚愕し、残りの言葉を喉の奥に詰まらせて黙り込んだ。

清次は手を払って無表情でスーツの内ポケットから名刺を取り出し、軽く地面に投げた。「いくらですか?秘書に連絡してください」

翔はすぐに近づき、清次の肩を叩いて冷静になるように促し、記者に向かって言った。「申し訳ありませんが、祖父が亡くなったため、家族全員が非常に悲しんでいます。今はインタビューを受けられません。追悼会が終わった後にお話しします」

しかし、記者の中には諦めきれず、遠くから救急室の前の写真を撮り、すぐにニュースを発表した。

11月1日10時、山口氏グループの会長が徳興病院で亡くなったとのこと。

配信された写真は救急室の前で、清
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