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第279話

 この時、おじいさんの遺体は翔の手配で葬儀場に運ばれ、最後の身支度が整えられ、喪服が着せられていた。

葬儀の準備も進んでいた。

葬儀場に到着する寸前、清次は由佳の手を引きながら言った。「着いたら、おじいさんのそばにいるだけでいいから、他には何もする必要はないよ、わかった?」

「うん」

すでに白い喪服を着た森由美咲が、葬儀場の入り口で清次と由佳を待っていて、二人に白い喪服を渡した。

喪服を着終わった後、美咲は自ら車椅子を押しながら、「用事を済ませていいよ。由佳ちゃんは私が見守るから。」と言った。

「お世話になります」清次はまた由佳に俯いて、「体調が悪いときは無理しないで、必ず言ってください。私は先に行くから」と頼んだ。

「わかった」

清次は早足で離れ、美咲は由佳を車椅子で休憩室に案内した。由佳の赤く腫れた目を見て、美咲は慰めた。「由佳ちゃん、辛くてもおじいさんもこのように悲しむのを望んでいないと思う」

「わかっています。ただ……おじいさんに会いたいだけなんです……」由佳は言いながら再び泣き始めた。

「清くんは本当は由佳ちゃんに知らせたくなかったんだ。ただ、無責任なメディアのせいだ。清くんがカメラを壊したのに」

それが清次の性格だ。

おじいさんが亡くなったことに対する彼の悲しみは、彼女のそれに劣らない。それにメディアがこの時期に来るのは、ただの火に油を注ぐようなものだ。

「こんな大事なこと、隠すことはできないし、正直に教えてくれればよかったのに……」

「それも由佳ちゃんのためだよ。おばあさんとおばさんは休憩室にいる。私たちは先に行こう」

「うん」

休憩室で、おばあさんは一人椅子に座り、ぼんやりと考え込んでいた。

おじいさんの年齢と体調を考えると、すでに覚悟をしていた。

おじいさんが昏睡する前に彼女の手を握り、多くの言葉を交わした。その涙はすでに流し尽くし、今は大きく泣くことはないが、気持ちは非常に重い。

美咲が由佳を連れて来ると、おばあさんは我に返り、手を招いて言った。「こっちに来て」

美咲は由佳をおばあさんの前で止めた。

「おばあさん」

おばあさんは由佳の手を取ってため息をつき、「由佳ちゃん、どうして来たの?」と尋ねた。

由佳の目は再び赤くなり、「おじいさんに最後の別れを言わなければならないから」と答えた。

「良い子だね
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