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第273話

 「さて、皆さん、本日ここに集まっていただいたのは、私の考え方や方針と異なるからでしょう。したがって、無理に私の考えに従わせようとは思いません。それでは、本日より、山口清次は山口氏グループの社長および総経理職を辞任します!」

「どんなに不愉快なことがあったとしても、これまで私の仕事を支えてくださり、信頼していただいたことには感謝しています。来年は私が三十歳になる年であり、父親にもなる年です。妻が妊娠しているので、もっと時間とエネルギーを彼女に使いたいと思います」取締役たちは様々な表情を浮かべた。

会議室は数秒間沈黙に包まれた。

ある取締役が言った。「社長という職が山口氏グループにとって何を意味するか、皆さんも分かっていると思います。社長は感情的にならず、投票で決めるのが良いと思います」

「必要ありません」清次は席を立ち、万向きの車椅子が自動で後ろに滑った。「辞表はすでに取締役会のメールボックスに提出しましたので、皆さんには早急に承認し、業務監査を行い、新しい社長を選定していただければと思います。会社の規則に従い、仕事の引き継ぎも完了します」

どうやら、今日の取締役会で起こったことは清次の予想通りだったようだ。

清次が流れに任せて辞任を表明したことで、皆が驚いた。

一部の取締役は事態がこんなにスムーズに進むとは思っていなかったようだ。

また、他の取締役はようやく山口氏社長が交代するのかと気づき、自分の今後の利益を深く心配していた。

「新しい社長については取締役会で決定する必要がありますが、皆さんの心の中には既に適任者がいると思いますので、私の方はもう関与しません。それでは、また」

そう言って、清次は会議室を後にした。

取締役たちは互いに顔を見合わせた。

隼人取締役はすぐに気を取り直し、「社長職が空席になるのはグループにとって良くないので、早急に新しい社長を選定し、会社を軌道に戻すべきです。私からの提案として、山口翔を山口氏グループの社長兼総経理として推薦します」

会議室を出ると、山口翔が前に歩いてきた。彼の後ろには、すでに会社を退職した山本さんが続いていた。

清次は立ち止まり、驚くこともなく二人が一緒に歩いているのを見て、「お兄さん」

「清くん」

二人は互いに目を合わせ、特に説明することもなく、山口翔は変わらずに笑顔を見せた。

「お兄さ
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