第217話

「この言葉は加波さんに言うべきだと思うわ。どんなに感情が深くても、愛人になる理由にはならない。今朝、高橋さんがニュースが本当だと思って、『愛人とは友達にならない』って言ってたのよ。古い言葉にあるように、物は類をもって集まり、人は群れを作るってね！」

山本菜奈の表情が固まり、何かを言おうとしたその時、後ろから足音が聞こえた。

山口清次が病室から出てきて、由佳の後ろで立ち止まり、「行こう」と言った。

「包帯は済んだの？」由佳が振り返った。

「うん」

病室の中で加波歩美が驚いたような叫び声が再び響いた。

「山口社長、加波さんと一緒にいてあげないの？彼女が……」山本菜奈はまだ何かを言いたそうだったが、山口清次の冷たい視線に触れてすぐに黙り込んだ。

由佳は山口清次を一瞥した。

山口清次は彼女の小さな手を優しく握り、一緒に階段を下りた。

二人を見て、運転手は急いでタバコを消し、車のドアを開けた。「社長、会社に戻りますか？」

「うん」

車が病院の門を出て、大通りに出ようとしたその時、突然、運転手が急ブレーキをかけた。

突然、多くの人々が車を取り囲み、車のボンネットの前に立ちはだかり、カメラを持って車の窓に向かって激しく撮影を始め、様々な質問を投げかけてきた。

病院近くに待機していた記者たちだ。

由佳は車の外の人々をぼんやりと見つめた。

なんと懐かしい光景だろう。

ただ、自分が閉じ込められていたのではなく、今度は自分と山口清次がその立場になっている。

山口清次は暗い表情で、運転手に「前に進んで、俺が賠償するから」と指示した。

運転手は顔が青ざめ、汗をかきながら、車を少しずつ前に進めた。

社長は賠償できるかもしれないが、運転手自身はどうなるのか！

もし本当に誰かを傷つけたら、また一波の世論攻撃があるだろう。

記者たちはようやく当事者を見つけたのだから、離れるはずがない。車の周りにしがみつき、車が少しずつ動くに連れて前に詰め寄ってきた。

窓が閉まっていても、誰も応じず、マイクを窓に押し付け、一つまた一つと質問を投げかけてきた。

「降りてインタビューを受けられますか？」

「今朝のニュースについてどうお考えですか？」

「二人はどんな関係ですか？」

「……」

車の往来が絶えなく、後ろの車両のクラクションが鳴り響いた。

病院の警備員も