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第216話

加波歩美は山口清次の胸にしがみつき、彼の衣領をしっかりと掴みながら、声を震わせて「清くんは私を捨てたと思っていた。どうして今になって来たの?」と泣きながら訴えた。

山口清次はしばらくの間立ち止まり、ゆっくりと手を伸ばして加波歩美の背中に手を置き、低い声で「怖がらないで、大丈夫だよ」となだめた。

加波歩美は山口清次の胸で泣き続け、彼に抱きついていた。

才人と美人のカップルが抱き合い涙を流す姿は、実に悲劇的だった。

由佳は少し離れたところで、無表情に二人を見つめていた。

辛い気持ちはあまりないようだ。

病院に来る前に、この場面を想像していたが、実際に見てみると心は驚くほど平静だった。

「傷口がまだ出血しているから、まずは医者に処置してもらいなさい」

山口清次は加波歩美の傷ついた手首を握り、目で医者を呼ぶように合図した。

しかし、医者が一歩近づくと、加波歩美は狂ったように山口清次の後ろに縮こまり、「包帯は要らない!包帯は要らない!私から離れて!」と叫んだ。

医者はどうしていいかわからず、山口清次を見つめた。

山口清次は眉をひそめ、「加波ちゃん、出血を止めないと命に関わる!」と注意した。

加波歩美は涙を浮かべ、深い感情で山口清次を見つめながら、「清くんのそばで死ぬなら、私はそれを喜んで受け入れるわ!」と言った。

「そんなことを言うな!」山口清次は顔色が変わって、無意識に由佳を見た。

由佳はただ静かに二人を見守り、口元に微笑みを浮かべていた。山口清次は内心不安を覚えた。

「私は冗談を言っているわけではないの!清くんがいないと本当に辛い。この期間、食べられず、飲めず、眠れず、目を閉じると頭の中には清くんしかいないの。もしもう一度チャンスがあれば、あの時に別れることは絶対に選ばなかった。清くんが祖父を大事にしなければならなかったことはわかっているけど、私は自分の死で清くんの孝心を成就させるわ!清くんのそばで死ぬことで私は満足できるの!」加波歩美は涙を流しながら心から訴えた。

山口清次はただ由佳に目を向けて静かにしていたが、「考えすぎだ。まずは傷口に包巻きなさい」と一言。

「包帯は嫌よ、包帯は要らない!清くんがいないなら、死んでも構わない!」

山口清次の顔色が悪くて、「わかった、死ぬ覚悟があるなら、誰も止められない。俺は無駄な時間を過ごすつもりは
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