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第213話

山口清次がそう言うと、棚田さんは驚きながらも「了解しました」と答えた。

山口清次は近くにあった書類を机の上に置き、長い指で前に押し出した。「秘書部と法務部に弁護士の意見書を作成させました。後で公式アカウントで発表しますから、ネットの動向に注意しておいてください」

「わかりました」棚田さんは机の上の書類を取り、ファイルを開いた。

案の定、それはエンタメ業界で非常によく使われる弁護士意見書で、効力はほとんどなく、警告の役割だけを果たしていた。

意見書には、感情ゴシップが山口清次氏の名誉権を侵害したと述べ、即刻投稿の削除と謝罪、山口清次氏に対する誹謗中傷の停止を要求していた。

この声明が発表されて数分で、人気検索ワードに上がった。

皮肉を言うコメントは多かった。

「弁護士の意見書?私の提案は直接訴訟だね」

「名誉権?それって本当なの?」

「山口清次:彼が私の名誉権を侵害しました。

裁判官:あなたは何をしましたか?

私:彼がやったことを繰り返しました」

感情ゴシップは全く恐れておらず、投稿を削除せず謝罪せず、むしろその弁護士の意見書をリツイートし、「終わった、訴訟になりそうだ」とコメントした。

加波歩美側は何も反応しなかった。

由佳はスマホを切り、椅子の背もたれに寄りかかり、ぼんやりと窓の外を見つめていた。

心の中には言葉にできない感情が湧いていた。

高村さんが言ったように、公表しない限り、被害を受けるのは彼女だけだ。

ニュースを見たとき、彼女は山口清次がどう処理するつもりかを考えていた。

前回のように注目度を抑えるのか、それとも公開して正面から対抗するのか。

彼女は今回も前回と同じく、注目度が下がれば自然に収束するだろうと思っていた。

しかし、山口清次は正式に弁護士意見書を出した。

高村さんにそのことを教えたとき、彼女は少し期待を抱いていた。山口清次が彼らの関係を公表することを期待していたが、それはほんの一瞬の考えだった。

弁護士意見書を見たとき、彼女はむしろ決着がついたような感じがし、悲しみも喜びもなかった。

加波歩美の立場が「愛人」のニュースを背負うわけにはいかず、山口清次は加波歩美のキャリアを守ると約束していた。

だから加波歩美がいる限り、彼らは公開できず、堂々と自分たちが夫婦であるとは言えない。

さらに、山口清次と加波
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