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第207話

通常であれば、由佳は一般人で、山口清次は有名人とはいえ、芸能界の人物ではないため、彼らの恋愛生活に注目する人は少ないはずだ。実際、どこかの芸能人のスキャンダルの方がよっぽど面白いと言える。

しかし、話が加波歩美にまで及んでしまうと状況が変わる。

芸能人が関わると、一気に注目を集めるのだ。しかも、このニュースでは加波歩美が被害者として描かれていた。

また、ネットユーザーたちは、もともと資本家に対して良いイメージを持っていない。少しでも由佳や山口清次のための発言があると、すぐに「資本家の手先」として非難される始末だ。

そのため、二人は瞬く間にネット上で非難の対象となり、誰もが彼らを攻撃し始めた。

その影響で、山口氏グループの株価も急落し、赤字が続いていた。

山口清次は電話帳からある番号を探し出し、電話をかけた。

数秒後、電話が繋がり、相手の男性の低い声が聞こえてきた。「山口社長、どうした?」

「1日で、SNSの『感情ゴシップ』『八組のガチトーク』『芸能界の裏話』というアカウントの背後にいる人を見つけ出して!」

どうやら、自分がこれまであまりにも優しかったせいで、彼らが何度も自分の限界を試そうとしていたのだと感じたのだ。

相手の男性は軽い調子で「社長、安心してください。明日には報告をお届けしますよ!」

と答えた。

電話を切り、山口清次は再びウェブページに目を戻した。

林特別補佐員の手配で、投稿の人気が少しずつ冷めているのを確認し、彼は携帯電話を閉じ、主寝室に戻った。そして静かにドアを閉めました。

「まだ行かなかったの?」

声を聞いて、由佳は目を開け、山口清次にちらりと視線を送った。起きたばかりのため、喉が少し枯れていた。

山口清次は由佳が既に目を覚ましているのを見て、ベッドの側まで歩み寄り、眉をひそめながら言った。「行く?どこに行くの?」

暗闇の中、由佳は山口清次を見つめ、何も言わなかった。

その視線を受けて、山口清次は突然、由佳が自分が加波歩美からの電話を受けたのだと思っていることに気づいた。

由佳は、自分がなかなか帰ってこなかったのは、また加波歩美に呼び出されたからだと思っていたのだ。

この考えが頭をよぎった時、由佳の心は特に痛むことはなかった。

もしかしたら、もう麻痺しているのかもしれないし、もしかすると、もう気にしていないの
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