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第209話

 再度思い返すと、山口清次に対しては常に微妙な敵意を感じていたが、最初は自分の錯覚だと思っていた。

当時は気づかなかった細かい点が、今になってから思い出されてようやく理解できた。

実際には、いくつかのことには早くから兆しがあったのだ。

彼は、由佳が言う「彼氏」というのは山口清次を指しているのではないかと疑い始めた。

そして前回、由佳が「私たちはもうすぐ別れる」と言ったとき、その引き金となったのが山口清次が加波歩美の誕生日を祝ったことだった。

吉村総峰はさらに思い出す、前回加波歩美が火傷したとき、傷は大したことがなかったにもかかわらず、山口清次は一晩中彼女の病床に付き添った。

山口清次は加波歩美との男女関係がはっきりしていなくて、由佳とは釣り合いが取れないじゃない。

それで吉村総峰は再び由佳にメッセージを送った。「もしニュースが本当なら、よく考えてみて。山口清次は信頼できる人ではないよ!」

スマホの画面を開けると、由佳は吉村総峰からのこの2つのメッセージを見た。

以前なら、吉村総峰がこんなことを言っていたら、由佳はきっと山口清次のために弁解する。

しかし今、由佳はただ眉をひそめ、返信しようとしたところで山口清次の声が耳に入った。「僕が信頼できない人だって?」

彼の声には少しの遊び心が含まれており、反問してきた。「それなら誰が?吉村総峰か?」

由佳は驚いて、慌ててスマホを背中に隠し、山口清次を警戒して見た。「どうして私のスマホを盗み見たの?」

「盗み見てなんかいないさ、堂々と見たんだよ。」

朝食のとき、彼女がスマホを抱えてチャットしていたので、山口清次はそれをちらっと見たとき、連絡先が吉村総峰だった。

彼女が車に乗り込んだ後も吉村総峰とチャットを続けているのを見て、山口清次はついには我慢できずに由佳のスマホの画面を見たら、そこにこんな一言が書かれていた。

「あなた……」由佳は山口清次に白い目を向け、何も言わずにスマホを開き、吉村総峰に返信した。「時間があるときに説明するね」

そのメッセージを見て、吉村総峰の目には暗い影が差した。

彼はさらに返信しようとしたが、由佳が自分の口出しを嫌がるのではないかと心配し、由佳がうんざりするのを恐れた。

彼の気持ちが由佳に知られるのも嫌で、打った文字をすべて削除した。

「まだ答えてないよ。」山口清次
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