第211話

誰も彼女と休み時間に手をつないでトイレに行くことはなかった。

一見人間関係が良さそうでも、実際には彼女の成績がよかったから、同級生がよく質問しに来てるだけだった。

大学入試後、すべてが明らかになった。

彼女は再び一人になった。

彼女は国語の先生が彼女に対してため息をついた目を覚えている。

先生は彼女があまりにも警戒心が強いと言っていた。

彼は彼女のように警戒心を持つ学生を見たことがなかった。

もし彼女が猫だとしたら、それは地面に伏せて息を荒げ、他人に襲いかかる準備を常にしている野良猫であり、決して柔らかい腹を見せることはない。

山口清次に対しても同様に、彼女は心を開くことができず、山口清次に自分の心の奥深くを知られることを恐れていた。

彼女は昔、彼を深く愛していたことさえ知られてほしくなかった。

山口清次と結婚して三年が経ち、表面上は仲良く見えたが、実際には彼を完全に信頼することはなかった。

由佳は額の髪の毛を軽く撫でた。

人間関係が悪いならそれでもいい。

彼女は山口氏グループに長く留まることはできないだろう。

トイレから出ると、由佳は一部の社員の視線が彼女に向けられているのを感じた。

彼女は直接自分のオフィスに戻り、仕事を始めた。

昼過ぎ、由佳は高村さんからメッセージを受け取った。

「由佳ちゃん、ニュース見た？」

「見たよ」

「山口社長とどうなってるの？」

「マジで、このニュース見たら本当のことを言っているみたいなんだけど？」

「うん……一部は本当」

「え？何？？？」

高村さんは連続で五つの疑問符を送信し、信じられない様子を表した。「本当に山口社長と付き合ってるの？」

「うん」

高村さんはしばらく沈黙した。

由佳は、彼女も吉村総峰と同じように驚いているのだろうと思った。

しばらくして、高村さんはメッセージを送った。「本当に山口清次と加波歩美の間に割り込んで第三者になったの？」

言葉は鋭く、話題の中心を突いた。

由佳は怒らず、高村さんの性格を理解している。率直な言い方が好きな人だ。

「心配する気持ちはわかるけど、私は第三者ではない。事情は少し複雑なの」

「ダメだよ、今日は必ずちゃんと説明して！さもないと、私たちは連絡しないほうがいい。第三者の友達とは付き合えない！」

高村さんは由佳が嘘をついていると感じ