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第118話

由佳は一瞬身を固くし、無言で山口清次と視線を交わした後、祖母に向かって笑顔を見せた。「おばあちゃん、今回は持ってこなかったけど、次回必ず持ってきてお見せしますね。」

美咲が賛同するように言った。「希望の晩餐会で手に入れた『海洋の心』のことですよね?あの日は用事があって行けなかったんだけど、山口清次さんがそれを由佳さんに贈ったとは知らなかった。今度ぜひ見せてくださいね。」

祖母にはうまくごまかせたが、美咲が口を開くと、事はややこしくなりそうだった。

「兄さん、それはちょっとひどいんじゃない?お姉さんがこんなに欲しがってるのに、同じものを用意しないと。聞いた話では、『海洋の心』の翡翠の原料はかなり大きなもので、いくつかブレスレットが作られたんだって。今回のものは試しに出しただけらしいよ。」由佳は言った

「本当に?」美咲は由佳の話に注意を向けた。

由佳は頷いた。「はい。」

美咲は翔を一瞥した。

翔は仕方なさそうに笑った。「わかった。手に入るようにしておくよ。」

「それならいいわ。」

「兄さんはお姉さんに本当に優しいですね。」由佳は二人のやり取りを見て、心から感嘆を感じた。

「山口清次もあなたに優しいじゃない。」美咲は言った。「数億円もするブレスレットを買ってくれるなんて、全然けちけちしないんだから。」

由佳は微笑んで頷いたが、それ以上は何も言わなかった。

山口清次は確かにお金を惜しまない。

でも、山口清次は歩美にもお金を惜しまない。

もし、一つしかなければ、それは必ず歩美のものになる。

歩美がいらないものだけが自分のものになる。まるであの時、彼が自分に渡したケーキのように。

自分は決して山口清次の優先順位にいない。

山口清次はずっと黙っており、自分を取り繕っていた。由佳の祖母と美咲の前で見せる無理やりな笑顔を見て、胸に何とも言えない感情が沸き起こった。

ブレスレットは由佳のところにない。

彼女がそのブレスレットを持ってくるのはありえない。

しばらくして、祖父は少し疲れてうとうとし始めた。助手と家政婦が祖父を手助けして休ませた。

祖母は二人に向かって言った。「もし用事があるなら、先に帰ってもいいわよ。ずっとここにいなくてもいいから。何かあれば電話するから、普段通り毎週末顔を出してくれればそれで十分よ。」

「それではおばあちゃん、失
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