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第120話

山口清次はその場で呆然と立ち尽くした。

「由佳。」

由佳は返事をせず、体を反対側に向けて再び眠り始めた。

またか。

これは彼をからかっているのか?

しばらくして、隣からすうすうと寝息が聞こえてきた。

山口清次は呆れてしまった。

彼は隣に横たわりながら、どうしても眠ることができなかった。

まるで騙された女性のように感じた。

そして隣にいるのは、ズボンを上げて知らん顔する最低な男のようだった。

MQブランドの新しい一級服装がすでに宣伝期に入っていた。

歩美の広告は複数のシリーズに分かれ、次々と正式に公開され、各大プラットフォームやソーシャルメディアのトップページに登場した。

以前の歩美の化粧騒動のこともあり、メディアやネットユーザーたちは今回の代言に注目していた。

由佳も社員たちに動向を常に注意するよう指示し、必要なら水軍(インターネット上での世論を操作する人たち)を使うことを考えていた。

オンラインだけでなく、オフラインでもMQの宣伝活動は盛んに行われていた。

虹崎市の大型広場のLEDスクリーンにはすでに歩美の代言広告が流れており、地下鉄やバス停、空港など、至る所でMQの宣伝を見ることができた。

由佳は数日間、本当に忙しくしていたが、Twitterで雲水城のクランクイン式の投稿を見つけたのは3日前のことだった。

「由佳さん。」アシスタントが外から走ってきて、ノックも忘れていた。「結衣さんが病気です。どうしましょう?」

アシスタントが言っている結衣さんは、MQブランドの広報担当者のことだった。

3日後に予定されているライブ配信の製品発表会では、毎年結衣さんが登壇して製品の詳細な説明を行っていた。

「病気?どんな病気?大丈夫なの?」由佳は手元の仕事を止めた。

「今朝、結衣さんが突然腹痛を起こし、病院に運ばれました。急性盲腸炎と診断され、手術が必要です。医者は最低でも3日間の入院が必要と言っており、発表会には参加できそうにありません。」

黙っていた由佳を見ると、アシスタントは心配そうに繰り返した。「どうしましょう?さくらさんを代わりに出すべきでしょうか?」

桜さんはMQの製品マネージャーで、主にデザイナーや工場との調整を担当している。

「結衣さんの原稿を持ってきてくれればいいわ。あとは私が何とかするから、心配しないで。」

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