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第117話

山口清次は由佳を見つめ、彼女の手を握って病室に入った。

由佳は唇を噛み締めて深く息を吸ってから気を引き締め、山口清次と一緒に「おじいちゃん」と声をかけた。

祖父はとても喜び、嬉しそうに笑顔を浮かべてソファーに座っていた。「来たね、さあ帰ろうか」

祖父は杖をついて立ち上がった。

由佳は山口清次の手を離し、祖父のそばに行って彼を支えた。「おじいちゃん、ゆっくり歩いてください」

「大丈夫だよ」

山口清次は何も言わず、祖父の反対側に寄り添って彼を支えた。

祖父は手を振った。「心配しなくていい、まだ歩けるよ」

今回、彼らと一緒に老宅に戻るのは、健太の助手も含まれていた。

翔は祖父を心配して、彼が帰りたがっていることを知り、健太の助手を老宅に一緒に住まわせることを提案した。

祖父は仕方なくそれを受け入れた。

老宅に着くと、祖父はまだ元気そうだった。

由佳と山口清次はソファーに座り、祖父母と話をした。

しばらくすると、翔とその妻の森由美咲が息子の山口拓海を連れてやってきた。

山口拓海は現在四歳で、幼稚園に通っており、まるまるとした可愛らしい姿が人を魅了していた。

彼は小さなリュックを背負い、まず祖父母の前で「ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃん」と元気に挨拶した。

「はいはい」祖父は拓海の頭を撫で、曾孫をとても可愛がっていた。「ひいおじいちゃんに抱きしめてもらうか。今日は学校が休みだったのか?」

「パパとママがひいおじいちゃんに会いに行こうと言ったから、僕はいい子になるんだ」

「本当に良い子だね!拓海、これは誰かを覚えているかい?」祖父は由佳と山口清次を指さした。

拓海は丸い目を由佳と山口清次に向けて、「おじさん、おばさん」と元気よく叫んだ。

「拓海の記憶力は本当に素晴らしいね」由佳は笑って手招きした。

拓海は小さな足で由佳のそばに駆け寄って座った。

由佳は拓海の頬をつまんでみたくなった。「本当に柔らかい」

「おばさん、つままないで。僕はもう大人なんだから」拓海は真剣な目で由佳を見つめた。

その真剣な表情に、由佳は思わず笑い出した。

祖母も笑いをこらえきれず、「拓海は由佳と本当に仲が良いのね。小さい時、誰にも抱かせなかったのに、由佳だけは抱かせていたのを覚えているわ」

「拓海が可愛いからこそ、みんな好きになるんですよ」

「彼は可
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