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第116話

山口清次は由佳をしばらく見つめ、笑った。「由佳、それは全然面白くないよ。たとえ君と彩夏が仕事で衝突していても、そんな冗談を言うべきじゃない。」

彩夏がそう言ったのも無理はない。

だが、彩夏が先に言わなかったとしても、彼は信じなかっただろう。

彩夏は山本家族企業で何年も働いており、彼女の人柄や仕事ぶりは彼の目にも明らかだった。さらに、彩夏には長年の彼氏がいるのだから、自分を好きになるわけがない。

由佳は黙り込み、何も言わなかった。

ほら、山口清次は自分の言葉を全然信じていないのに、何故わざわざ心配するふりをするのだろう?

由佳は忘れてしまった、山口清次が演技上手なことを。彼の心配を本気にしてしまうとは、なんて愚かだったのだろう?

昼休みが近づくと、由佳は山口清次からメッセージを受け取った。

「昼食は私のオフィスで食べよう。君のために出前を頼んでおいた。」

由佳はメッセージを見て、いくつの言葉を打ち込んだ。「私は食堂で食べるよ。」

彼女の指は送信ボタンに触れたが、なかなか押すことができなかった。数秒後、彼女はその言葉を消し、「分かった」と返信した。

山口清次のオフィスに行くと、ソファーの前のテーブルには既に昼食が並べられていた。

由佳が近づくと、昼食の容器の隣に見覚えのある包装が置かれていた。

由佳の視線を見て、山口清次が口を開いた。「君のためにブラックフォレストケーキを頼んでおいた。好きだろう?昼食の後に食べなさい。」

由佳はようやく気づいた。山口清次はケーキで自分を宥めようとしているのだ。

以前だったら、確かに効果があっただろう。だが、今、スイートメロディのブラックフォレストケーキを見ると、良い気分が台無しで、食欲も失ってしまった。

彼女はソファーに座り、ケーキの包装紙袋からできるだけ遠ざかった。

山口清次は彼女の向かいに座り、食事を始めたが、由佳は途中で箸を置いた。「もう食べ終わりました。」

山口清次は顔を上げた。「それだけしか食べないのか?もっと食べなさい。」

由佳は腹の子供のことを考え、無理やりもう少し食べた。

「ごちそうさまでした。」由佳は食事を終え、立ち上がった。

山口清次は彼女の冷淡な態度に眉をひそめ、ケーキを持って行くように促した。

由佳はテーブルの端に置かれた包装を見つめ、強い抵抗感が湧き上がった。

山口
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