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第78話

山口太輔は怒りを抑えながら言った。「でも、壊したのは君の義父だろう?」

田中健太は頷いて答えた。「そうです。義父であって、僕ではない。壊した人に責任を取らせるべきではありませんか?分かっていないのですか?」

山口太輔は苛立ちを覚えたが、田中健太の言うことも一理あると考えた。無理やり彼に弁償させれば、万福堂の評判が落ちてしまうかもしれない。

そこで急いで周囲の数人に命じた。「お前たち、あの人をすぐに捕まえてこい!」

田中健太は彼らが慌てて義父を追いかけるのを見て、一人で笑っていた。実際、彼は自分でお金を支払うことができたが、そうすれば無責任な義父が楽をしてしまうだけだった。彼に少し教訓を与えた方が良いと考えたのだ。そうでなければ、将来同じようなことがまた起こるだろう。

万福堂のスタッフは全員出動し、義父を追いかけていた。田中健太は暇を持て余し、壊れた瓶を眺めていた。その瓶は高さが約半メートルあり、今は二つに割れ、多くの破片が散らばっていた。その光景は本当に残念だった。

しかし、彼は瓶の下半分の底に何かが隠れていることに気づいた。急いで手を伸ばして取り出すと、小さな木箱が出てきたのだ!

まさか、この瓶の中にこんな秘密があるとは!

玉壺春瓶の形状は口が小さく胴が大きい。木箱は明らかに瓶の口よりも二、三倍大きかった。これは後から入れたものではなく、この瓶が作られたときに一緒に作り込まれたものであることがわかった。

つまり、この木箱も唐のものに違いない!

彼は木箱を手に取り、じっくりと観察した後、少し力を入れて開けた。

木箱が開くと、すぐに極上の香りが漂ってきた。田中健太はその香りを吸い込み、心が清々しくなった。

中を見ると、掌ほどの大きさの古書が横たわっていた!

田中健太はその小さな古書を手に取った。扉には『帰命吐法譚』と書かれた四つの文字があった。

「この名前は興味深い、何が書かれているのか見てみよう。」田中健太は本を開き、中を見た。

第一章は「医術篇」という、多くの症例と治療法が記載されていた。

田中健太は眉をひそめた。彼は医学にも触れたことがあり、基本的な理論は知っていたが、この本に書かれている内容は現代の医学をはるかに超えていた。

いくつかの治療法は聞いたこともなく、「医術篇」の最後には煉丹術の記載もあった。一部の薬の効果はまるで幻
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