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第9話

メッセージを見たとき、私は思わず笑みを浮かべそうになった。

真希は今、離婚したくないのが竜一だということを知っているのだろうか。

「彼がお前を娶りたければ、お前がここに来るわけがないじゃないか」

私が送ったメッセージには真希は返事をしなかった。

おそらくどう返すべきかわからないのだろう。

それでも感謝する、そうでなければ、竜一が『接待』と言っていたのがどういうものであるか知ることはなかっただろう。

思ってもみなかったのが、その日の午後、家に不速の訪問客が来たことだ。

川端さんが真希が私を訪ねてきたと聞くと、すぐに彼女を通し、買い物に出かけてしまった。

私が寝室から出てきたとき、彼女はすでにそこにいた。

「何の用?」

真希は笑顔で、まるで将来の家を観察するかのように、周囲を見回していた。

「綺麗だね、まさに私が夢見たような内装だよ」

私が無表情な様子をしていると、真希の顔色が一変した。

指を突きつけ、大声で叫び始めた。

「ここに住むべきは私なんだよ!これは全て私が好きなデコレーションなんだよ!」

「私と竜一はお互いに好き同士だ、お前がいなければ別れたりしないのに!」

結婚するとき、私は一度、竜一にこの家の内装が好きではないと伝えていた。

「両親が新しいマンションのことを話してくれた、お前の会社や私のスタジオにも近いから、どうだろう……」

「この家はお前のためじゃなかったんだ」

竜一がそう言ったとき、彼の顔は暗かった。

当時は単純に私が好きではないと思っていたが、実は真希のために用意されていたのだ。

私は自嘲気味に思った。だからこそ、竜一は離婚と彼女を解雇する間で選ぶことができなかったのだ。

「そんなんどうだっていいじゃない。ここに住んでいるのはお前じゃないんだから」

私の反応が全く予想外だったようで、真希の顔色が一瞬動揺した。

もし真希と竜一の過去を数日前に知らなければ、今頃は彼女の前で崩れ落ちていたかもしれない。

「知ってるんでしょ?」

「だから離婚もせず、竜一に私を解雇するように言ったんでしょ?」

私は少し驚いた。

竜一が彼女に本当にその話をしたとは思わなかった。

しかし、真希に説明する必要はなかった。

「川端さんを探してるの?」

「彼女は外出してる、今はこの家には私たち二人だけだよ」

真希はそう言っ
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