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第213話

「俺が見せてやる光景はまだまだたくさんあるんだ」藤沢修は冷たく言い放ち、「若子に伝えろ。俺はここで待っている。俺の忍耐は長くないし、事態が大きくなるのも厭わない」と言った。

そう言い終わると、修は遠藤西也の返事を待たずに電話を切った。

西也は苛立ちに唇を噛み締め、その目には凍りつくような怒りが宿った。

この藤沢修、まったくもって訳がわからない男だ、頭がおかしいのか?

修がわざわざここまでやってきた以上、若子に知らせないわけにはいかない。彼女には知る権利がある。

若子が何よりも嫌っているのは、誰かに騙されることだ。修が彼女をどれほど騙したか、彼女がどれほど傷ついたかを考えれば、同じように彼女を騙すわけにはいかない。

......

松本若子はうとうとと眠っていたが、遠藤西也が修のことを話すのを聞いて、一気に目が覚め、慌ててベッドから起き上がった。

彼女がドアを開けると、西也がちょうど部屋の前に立っていた。

「若子、部屋にいて。外には出るな。俺が下に行ってあいつを追い払ってくる」

若子に修のことを伝えたのは、あくまでも彼女の知る権利を尊重したからであって、決して修と一緒にさせるためではない。

若子は服の裾をぎゅっと握りしめ、今は修に会いたくなかった。修という名前を聞くだけで、心が痛んで仕方がない。

まさかこんな夜中に、修がここまでやって来るなんて、彼は一体何を考えているんだろう?明日離婚するのに、今さらどうして?

西也は若子が修に会いたくない気持ちをわかっていたので、彼を追い返すために階段を下りていった。

もし修が無理に居座って騒ぎを大きくしようとするなら、別に構わない。どうせ拳が疼いていたし、若子が望むなら、何の躊躇もなく修を叩きのめすつもりだった。

西也が玄関に向かおうとしたところ、若子が慌てて追いかけてきた。

「西也」

若子が彼を呼び止めた。

西也は振り返り、「若子、どうして下に来たんだ?部屋に戻れよ。あとは俺に任せてくれ」と言った。

「違う、これは私が解決すべき問題だから、西也に迷惑をかけたくない」

「若子、迷惑なんてことはない。心配しなくていい、俺が......」

「西也」若子は彼の言葉を遮った。「もし私を友達だと思ってくれているなら、私の言うことを聞いて。あなたは中に入って、これは私と修の問題だから、私が自分で決着をつ
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