共有

第218話

若子は一歩一歩、藤沢修のスポーツカーに向かって歩いていき、副座のドアを開けて座り込んだ。

藤沢修は冷たく彼女を一瞥し、無表情なまま硬い目つきで彼女を見つめた。

「シートベルトを締めろ」彼は冷たく命令した。

以前なら、彼が自ら手を伸ばしてシートベルトを締めてくれることもあっただろう。しかし、今回はただの指示に過ぎなかった。

二人の関係は、もう深い深い闇へと落ちていくしかなかったのだ。

若子はぼんやりとシートベルトを締め、力なくシートに寄りかかり、後ろのミラーに映るあの姿を見つめた。彼女を心配しながら、夜の中に佇んでいる孤独な影。

若子は痛みで目を閉じ、顔を横に向けた。

遠藤西也は、そのスポーツカーが見えなくなるまで、じっとその場に立ち続けた。

背後から足音が聞こえ、遠藤花が寝ぼけたように歩いてきた。彼女は乱れた髪を揉みながら、自分の兄に向けて不思議そうに声をかけた。

「お兄ちゃん、こんなところで何してるの?何かあったの?」

彼女はぐっすり眠っていたが、何か騒がしい音が聞こえたようで、起きて降りてくると、大きな鉄の門が開いていて、西也が門の外を遠く見つめていた。

薄暗い中、門前の街灯だけがぼんやりと灯り、その明かりに照らされた西也の影は長く伸びていた。彼は重々しく息をつき、静かに家の中へと入っていった。

遠藤花も後ろについていきながら尋ねた。「何があったの?ねぇ、何か言ってよ、お兄ちゃん」

鉄の門が閉じられた後、西也はようやく口を開いた。「若子は家に帰った。さっき、旦那が迎えに来たんだ」

「え?旦那さんがここに来たの?」西也の孤独な目を見て、まさか現場が浮気現場みたいな感じだったの?と一瞬思った。

でも、若子は旦那と離婚するって言ってたはずじゃなかったの?これ、いったいどういうことなの?

花はもっと早く起きて降りてくるべきだった。そうすれば、すべての様子をはっきりと見られたのに。

若子の旦那がどんな人間なのか、花は見てみたかった。果たして、彼が自分の兄に勝てる相手なのか?

西也はハンサムで金持ち、温厚で優雅、まさに紳士のような存在。こんな彼に勝てる男なんているのかしら?

西也は何も言わず、ただ静かに家の中へと歩いていった。

......

若子と藤沢修は、帰り道ずっと何も話さなかった。

家に着くと、修は車を降りて、副座のドアを開
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status