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第130話

離婚、また離婚か。

藤沢修はドアノブを強く握りしめた。

そうだ、俺たちは離婚すべきなんだ。

「修、約束したじゃない。今日こそ戸籍を取るって言ったのに、あなたがこうして出て行ったら、私は…」

「俺がここに残ったとして、何をするんだ?お前と一緒に寝ろってか?」

その声には、明らかに抑えきれない苛立ちが滲んでいた。

「じゃあ、どこに行くの?家に帰るつもり?それとも、桜井雅子のところに行くつもりなの?」

この男がここで解決できないなら、夜中に出かけるのは、そう疑わざるを得ない。

もし「家に帰る」とだけ聞いたなら、まだ納得できたかもしれない。しかし、若子はあえて「桜井雅子」という名前を出してしまった。その瞬間、藤沢修の眉が深く寄り、振り返りながら厳しい声で言い放った。「もちろん、雅子のところに行くさ!」

松本若子の胸は一気に締め付けられ、心臓が痛むようだった。「修、私たちはまだ離婚していないのよ。それなのに、他の女のところに行くなんて、私をどう思っているの?たった一晩も我慢できないの?」

「じゃあお前はどうだ?まだ俺たちは離婚していないのに、お前は俺に触らせようとしない。それで俺がどうしろって言うんだ?」

「私はさっき、他の方法で手伝うって言ったじゃない!」

「他の方法なんて要らない!」藤沢修は怒りを隠せず、「俺が欲しいのは、夫婦としての普通の方法だ!」と、強い口調で言い放った。

彼は深い目で彼女をじっと見つめながら、一言一言を噛み締めるように言った。「お前にそれができるのか?」

松本若子は本能的に毛布の下に手を伸ばし、そっとお腹に触れた。もしこの子がいなければ、彼女はきっとできたはずだ。

しかし、今は何も言えない。悲しみが胸に広がり、最終的にその感情は怒りへと変わった。

「じゃあ、行けばいいわ。桜井雅子のところに行きなさい。どうだっていいわよ!」

彼女はベッドに横たわり、毛布を頭まで引き上げ、その中で泣き始めた。

ごめんね、赤ちゃん。ママは本当に無力で、パパを引き止めることができない。それに、本当のことを言うこともできない。

ママが彼に触れさせないんだから、彼が他の人のところに行くのも仕方ない。もう離婚するんだし、好きにさせてあげればいい…ママは疲れちゃった…

しばらくして、若子は頭を毛布から出した。すると、藤沢修はもう部屋からいなく
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