第003話

白井ルルは石田語の懐に隠れ、私を挑発するように一瞥した。

甘えたように鼻を鳴らしながら、「何突っ立ってるの？おもちゃはおもちゃのいるべき場所に行けばいいじゃないの」と言った。

私は石田語を見つめ、「腕輪はもう壊れた。これで私たち一刀両断だ」と告げた。

そう言い終えると、私はその場を去ろうとした。

「待て！」石田語が私を呼び止めた。

私は立ち止まり、できるだけ彼と目線を合わせるようにした。

しばらくして、彼は煙草をもみ消し、私の前に歩み寄った。

細長い指で私の顎を掴み、無理やり彼と視線を交わさせる。

ほのかな煙草の香りが鼻をくすぐった。

石田語の顔はすぐ近くにあり、かつて私はどれほど彼を愛していたか、今となってはそれがどれほど恐ろしいことか。

彼は私を見つめ、突然、軽く笑った。

だが、その笑いは目に届かず、冷たい気配が漂っていた。

「どうした？本当に出て行きたいのか？」

だけど、木村家の罪はまだ清算されてないんだぜ」

私は唇をぎゅっと噛み締め、一言も反論したくなかった。

そんな私の様子を見て、彼の黒い瞳には危険な色が浮かんだ。

「木村悠、お前の父親は汚職を働き、俺の家族を破滅させたんだ。その罪はお前が償うんだよ。俺がどうやってお前を苦しめているか、天国のあいつに見せてやるさ。彼が決して安らかに転生できないようになぁ」

彼は、どんな言葉が私を最も傷つけ、怒らせるかをよく知っている。

私は彼を睨みつけ、一語一語はっきりと言った。

「父はそんなことをする人じゃない。いつか私は真相を突き止めるわ」

だが、その反論はあまりに無力で、周囲の人々はまるで私を笑いものにするような目で見ていた。

石田語は私の顎を掴んだ手にさらに力を込め、その瞳には冷たい氷のような光が宿っていた。

「出て行きたい？いいぜ！

あそこにゴミの山が見えるか？汚すぎるな。お前が全部きれいに食べてくれたら、俺はお前を解放してやるよ」

私は彼を見つめ、胸の中にはただ深い悲しみが広がっていた。

なんて完璧な顔なんだろう。まるで神様が自慢する傑作のように、どの輪郭も驚くほど精巧に作られている。

かつて、私はこの顔に心を奪われたことがあった。しかし、こんなにも多くの出来事を経て、今この顔を見ると、ただ冷淡で残酷な印象しか残らない。

それでも、彼から逃げられるなら、私は何でもする覚悟だ。

私は歯を食いしばり、地面に跪き、手で床に散らばった食べ物を拾い上げた。

耳元で石田語の冷たい警告が聞こえてきた。

「木村悠、汚すぎる真似はするな」

私は無視し、そのまま食べ物を手に取り、口に押し込んだ。

「汚い」って何だ？どうすれば「綺麗」なのか？

私は今まで一度も汚れたことなどなかった。

周囲の笑い声が鋭く耳を刺した。

「この木村悠、ゴミまで食べるなんて、頭おかしいんじゃないか？」

「彼女、どうかしてるさ。全央都、彼女が石田お坊に夢中だって知らない人はいないのに、今は出て行くためにゴミまで食べるなんて」

「これって、まさかの欲擒故縱？」

突然、私は誰かに強く引き上げられた。

石田語だ。

冷たい声が響く。

「消えろ！」

私は彼を見る勇気もなく、周囲の異様な視線を無視して、その場から全速力で走り去った。

その瞬間、ただ遠くへ逃げ出したい、できるだけ遠くへ行きたいと思った。

全速で町に戻り、濡れて汚れた服を着替える暇もなく、胃が痛みで締め付けられるのをこらえながら、急いで病院へ向かい、母の退院手続きを済ませ、飛行機のチケットを予約した。

「お母さん、私たち……」

しかし、お母さんは病室にいなかった。

「お母さん？」

私の声は震えていた。

屋上、人工池のそば、階段の角、病院中を探し回ったが……

彼女はどこにもいない！

足が震え、壁にもたれかかり、そのまま床に滑り落ちた。

震える指で、私は石田悠に電話をかけた。

「私のお母さん……どこにいる？」

しばらくの沈黙の後、彼の冷笑が電話越しに響いてきた。

「お前、俺から完全に離れるんだろ？この時になって、なんで俺に助けを求めるんだ？」