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第005話

石田語は平然とした様子で答えた。

「訴えてみろよ。俺が先に刑務所に行くか、お前の母親が地獄に落ちるか、見ものだな」

私は目を閉じ、母の生気のない顔が頭をよぎる。

「病気が治ったら、悠ちゃんを連れて山や雪を見に行こう。

悠ちゃん、本当に苦労をかけたね」

私は掠れた声で、かすかに答える。

「石田語、私はあなたに従う。あなたのそばに居続ける」

彼は向こうで聞いた。

「本当にもう二度と離れるなんて言わないか?」

「うん」

「よく聞こえなかったな、もう一度言ってみろ」

私は目を閉じ、声を震わせながら繰り返した。

「私、木村悠、永遠に石田語のそばを離れないことを誓う」

石田語は満足そうに笑い、電話を切った。

その夜、私は石田語が手配した人に連れられて、彼のもとへ向かった。

彼はそこに座り、指先に煙草を挟み、煙が彼の顔を覆い、顔がぼやけていた。

私は堪えきれず、問い詰めた。

「わざとなんでしょう? あなたはずっと私が腎臓を探していることを知っていた。わざと待って、母の病気が悪化し、もう手遅れになるまで。

そしてそれを利用して、私をあなたのそばに縛りつけるつもりだったんでしょう?」

彼はあっさりと認めた。

「そうだ。」

「石田語、私の望みをすべて壊して、楽しいの?」

彼は無関心な様子で、あっさりと答えた。

「楽しいよ」

私は必死に平静を保とうとしたが、抑えきれない嗚咽が喉から漏れた。

彼の前で弱さを見せたくなかった。

でも、もうどうしようもなかった。

私は彼の手のひらの中で、完全に翻弄されていた。

その夜、どうやってそこを出たのかもう忘れた。

ただ覚えているのは、あの晩、石田語が狂ったようになり、一晩中私は身動きが取れなかったことだ。

それ以来、石田語はしばらく私を訪れることはなく、私は仕事を休んで昼夜問わず母の病床を見守っていた。

夜更け、誰かの手が私の襟元に忍び込んできた。私は驚いて目を覚ました。それは石田語だった。

彼がここまで来るとは思ってもみなかった。

「木村悠、もう一秒も待てないんだ」

彼は少し酔っているようで、乱暴に私の顎を掴んだ。

「覚えておけ。今後、わがままは許さない。愛人には愛人の務めがあるだろう?」そう言いながら、彼は私の服のボタンに手を伸ばした。

ここは病院だ!

母が隣のベッドで眠って
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