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第2話

健二はそれを聞いて、彼女の額にキスをした。「綾子、僕は絶対に君を幸せにするよ」

その言葉を聞いて、私の心は一瞬痛みを感じた。

かつて、彼は真剣にその言葉を私に言った。

大学の頃、私は誰かにぶつかって、倒れ込んだ。そして、彼は私を助けて立たせてくれた。

その日、彼の目は輝いていて、そこには私の姿だけが映っていた。

彼は心配そうに私の髪を撫でた。

「陽葵、これからは僕が君を守るよ。僕が君を幸せにしてあげる」

でも、彼は綾子に会ってから、彼の言う幸せは全て変わってしまった。

あの日、私は二人が階下で情熱的にキスしていたのを見てしまった。私が現れたとたん、彼は綾子を体の後ろに庇った。

私は彼の顔に付いた口紅の跡と腫れた唇を見た後、吐き気を覚えた。

私は心の痛みをを堪えて、ゆっくりと彼に近づき、なぜこんなことをするのかと尋ねた。

「お前のような人に、何も言うことはない、ただお前を汚いと思うだけだ」健二は私を押しのけ、もう説明する気もなくなった。

「陽葵、私達こそが真の愛なの。あなたは私達を祝福してくれるわよね?」

これは彼らが離れる時、綾子が笑いながら私に言った言葉だった。

心の痛みは、私の全身を密やかに襲った。

ある日、綾子は私に会いに来て、とても目立つように笑顔を見せた。

「陽葵、私は本当にあんたが嫌いよ。あんたなんて帰ってこなければよかったのに、ずっと田舎で暮らしたらどう?

健二の愛も含めて、ここにあるすべての愛は、私のものにしかならない。

特にあんたの顔のほくろ、自分が汚いと思わないの?」

汚い?

そう、私はかつての私は確かに汚れていたいうことを忘れていた

そして今、死んでいくのも、汚いまま…

3.

パーティーの時間になり、綾子は涙を拭き、メイクアップアーティストに綺麗な化粧を直してもらった。

私の父は彼女の隣に立ち、彼女の手をしっかりと握り、目には後悔の色を浮かべた。

「パパ、陽葵が来なくても、私は彼女を責めないよ。今は彼女に誕生日おめでとうと言いたい」

私は姉としても同じ女性としても至らず、彼女の心を傷つけた」

彼女はまた涙をこらえた。

私の前では冷淡だった父は、彼女の肩を叩きながら言った。「自分を責めないで。君はずっと私達の誇りだよ」

「あの不孝な娘に会ったら、必ず君に謝らせる」

母は横に立ち、ずっと頷いていた。

「あんな無情なやつ、無視するほうがいい」涼介はずっとぶつぶつ言っていた。

母は彼を叩き、めでたい日に不吉なことを言わないように注意した。

綾子は彼らに笑わされ、健二の腕を取ってステージへ向かった。

私は彼らを見ることを強いられた。こういった和やかな光景を、私は一度も経験したことがなかった。

でも私はもう慣れた。心はもう痛まなかった。

優雅なピアノの演奏の中で、彼らは指輪の交換を始めた。

母はステージ下で感動の涙を流していた。

観客達は今日が私の誕生日でもあることを忘れている人が大半だったが、覚えている人もいた。

「陽葵は見当たらないね。今日は彼女の誕生日でもあるのに?」

「さっき運ばれていったケーキに、彼女の名前があったのを見たよ」

「健二は彼女を好きだったと聞いたけど、今は義兄になったんだね」

そしてまた批判的な声もあった。

「彼女はいい人じゃない。人格が悪くて、嘘ばっかりだ…」

「誰も彼女のことを好きにはならないよ」

私の両親は本当に苦心を尽くしたようだ。

私は親戚や友人の前で、すでに悪評高い存在になっていた。

私が引き取られてきた翌年、叔母は息子を連れて私の家に遊びに来た。

彼が不注意でソファから落ちた時、綾子は私が押したと指摘した。

叔母はすぐに怒った。「小さい子供なのに、心がひねくれているね」

私はずっと弁解したが、誰も聞く耳を持たなかった。

私に謝らせるため、父は私を部屋に閉じ込めた。私は2日1晩食事を食べず、急性胃腸炎になってしまった。

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