第23話

江本辰也は知っていた。唐沢桜子が最も気にしているのは、家族の評価だ。

この十年間、彼女はずっと軽蔑されてきたので、家族の承認を得ることを夢見て望んでいた。

「桜子、帰りたい？」江本辰也は優しく問いかけた。

唐沢桜子は小さくうなずいた。「うん」

江本辰也は唐沢家の人々を見ながら、淡々と告げた。「桜子は帰ることができるが、君たちは跪いて桜子に帰ってくるよう頼まなければならない」

「江本辰也……」唐沢修司は瞬く間に怒り、顔に青筋を立てて叫んだ。「君はただの唐沢家の犬だ。桜子が何も言っていないのに、君が騒ぐことはない」

江本辰也は淡々と答えた。「跪かないのであれば、唐沢健介が直接桜子を迎えに来るべきだ。そうでなければ、桜子は帰らない」

唐沢桜子は江本辰也の服を軽く引っ張り、少し静かにしてほしいと示した。家族だから関係を悪化させたくないのだ。

「桜子、君は優しすぎる。今は彼らが君に帰ってくるよう頼んでいるのだ。君が帰りたいなら、何でも要求すればいい。彼らは必ず応じるだろう」

「本当に？」唐沢桜子は驚いた。

「もちろんだよ。最近の君の賢さはどこへ行ったの？明和が永楽との協力をキャンセルしたことは唐沢家の損失だ。唐沢家は君を失うわけにはいかない。何か要求があるなら、今すぐ考えてみて」

唐沢桜子は思い返してみた。ここ数日、彼女はぼんやりしていたが、江本辰也の言葉で気づいた。

これまで、彼女の父は家族から軽んじられ、家の中で地位が全くなかった。

会社の部長であっても、株を持っていないため、両親は何度も争っていた。

「帰るのもいいけど、戻る前に祖父に伝えてほしい。父に永楽の10％の株を渡すように。それを約束してくれたら帰るけど、約束しなければ帰らない。それと、彼も跪かせてほしい」

唐沢桜子は唐沢修司を指さした。

彼女は長年、唐沢修司に嫌がらせを受けてきた。家族の宴会でも、彼はしばしば父親を非難していた。

「何だと？」唐沢修司は目を大きく見開いた。

パシン

唐沢翔は唐沢修司の額を叩きつけ、怒鳴った。「早く跪いて桜子に謝れ！」

「お父さん、何を言ってるの？どうして僕が彼女に跪かなければならないんだ？」唐沢修司は叫び声を上げた。

唐沢翔は再び唐沢修司の頬を叩きながら、目で合図し、小さい声で言った。「跪け。一族が唐沢武に10％の株を与えたくないなら