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第25話

この10%も決して小さな額ではない。彼女は祖父がその株を渡さないのではないかと心配していた。

今、彼女ができることは、ただ待つだけだ。

すぐに、唐沢翔が再び人間診療所にやってきた。

今回は彼一人で、グループの株式譲渡契約書を持参していた。

「桜子、これは父さんが直接サインした株式譲渡書だ。唐沢武がサインすれば、家族企業の10%の株を手に入れることができる。譲渡書はもう君のものだから、川島隆に電話して、永光との契約を取り消さないようにお願いしてくれるか?」と唐沢翔は言った。

唐沢桜子は唐沢翔が渡してくれた契約書を受け取り、慎重にページをめくって確認した。株式譲渡書が本物であることを確認すると、顔に喜びの表情が浮かび、歓声を上げた。「辰也、本当にくれたのよ!お父さんもやっと胸を張っていられるわ!」

「桜子、早く電話してくれ。今、数十台のトラックが永光に材料を運んでいるんだ。これが解決したら、帰ってからお祝いしよう」と唐沢翔がタイミングよく言った。

唐沢桜子は江本辰也を見つめた。

江本辰也は頷いて、「うん、電話してくれ」と言った。

「私、うまくできるかな?」と唐沢桜子は不安そうに言った。だって、川島隆が恩を返すのは江本辰也に対してだったから。

江本辰也は笑って「大丈夫だよ、きっとうまくいくさ。さあ、電話して」と言った。

唐沢桜子はようやく携帯を取り出し、川島隆に状況を説明した。川島隆は何のためらいもなく、唐沢桜子に応じて、永光との契約を続けることを約束した。

唐沢翔はその会話を聞き、電話の内容を確認すると、ようやく安心した。10%の株を手放すことになったが、明和との協力が続けば、唐沢家の事業はますます発展し、資金も増えるだろう。

「桜子、10日後はお父さんの80歳の誕生日だ。その時は忘れずに来るんだぞ。では、おじさんはこれで失礼する」と言い残し、唐沢翔は車に乗り込んで去っていった。

「辰也、早く帰ろう。この良い知らせをお父さんに伝えよう!」と唐沢桜子は江本辰也の手を引いて急いで帰ろうとした。

唐沢桜子がこんなに喜んでいる姿を見ると、江本辰也も本当に満足だった。

二人は一緒に家へ帰った。

唐沢家の玄関は固く閉ざされていた。

唐沢桜子は手に契約書を握りしめ、緊張した気持ちでそっとノックした。

すぐに、ドアが開かれた。現れたのは二十代半ばの
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