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第31話

唐沢武が口を開くと、唐沢梅はさらに怒鳴りつけた。「今になって口を開くなんて、さっきは何をしていたの?ビクビクして一言も言えなかったくせに!唐沢武、私があなたと結婚したことが本当に恥ずかしいわ。離婚してやる!」

吉兆料亭の入口には多くの人が集まっていたが、彼らは唐沢家の口論には一切関心を持たず、明王について議論していた。

「五日後は、明王の就任式が行われる」

「そうだな、星野市の軍区で行われるらしい。今回は明王の就任式が一部公開されるみたいだが、星野市で顔が利いて、影響力のある人だけが招待を受けられるらしいぞ」

「そう、俺も聞いたことがある。真の名門や権力者だけが明王の就任式を見に行く資格があるんだ」

「行けるのは、本当に星野市の名士だけだな」

人々は集まり、明王について話し合っていた。

その一方で、江本辰也は吉兆料亭の外にある椅子に座り、静かにタバコを吸っていた。

唐沢梅は家族のために顔を潰し、黒木静にまで頭を下げたが、家族に八つ当たりした後、少しは気が晴れたようだった。

「まあ、梅じゃない!あなたも吉兆料亭に食事に来たの?」

唐沢家が食事を待って列に並んでいると、ある声が響いた。

唐沢梅が顔を上げると、よく手入れされた美しい女性が、一人のスーツ姿でネクタイを締めた、成功した男のような風格を持つ男性の腕を取って歩いてきた。彼らの後ろには、若い男女のカップルが続いていた。

「千代子?」

唐沢梅は立ち上がり、二十代のように若々しいその女性を見て驚きの表情を浮かべた。「あなたは、かつて私の後ろの席に座っていた田村千代子?」

「そうよ、梅、まさか本当にあなたね。こんなに何年も会ってなかったけど、どうしてあなたはこんなに落ちぶれちゃったの?かつては美人だったのに、どうして名門に嫁がなかったの?吉兆料亭で食事するのに、まだ列に並んでるなんて」

田村千代子は唐沢梅を見ながら、男の腕を取って、鼻高々に言った。「こちらは私の夫で、吉星商事の社長よ。資産は数千万。ところで、あなたのご主人はどこで働いているの?」

唐沢梅は、田村千代子が自慢していることを見抜いていた。

彼女は唐沢武を引き寄せ、鼻を高くして言った。「私の夫は唐沢武、唐沢家の人よ。永光の10%の株を持っていて、唐沢家の様々な事業を合わせると価値は百億円、私の夫の資産も億単位なの」

唐沢武が
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