第29話

しかし、江本辰也は唐沢桜子を無理やり引き起こし、淡々とこう言った。「桜子、これは君の問題じゃない。殴ったのは俺だ。何かあるなら、俺に言えばいい。絶対に唐沢家を巻き込むつもりはない」

「いいわよ、あなたに責任を取らせるってことよ？」椅子に座っていた黒木静が突然怒りだし、電話を取り出して吉兆料亭の店長にかけた。「中村店長、私は黒木家の黒木静、吉兆料亭のゴールド会員よ。今、店の外で殴られたの。すぐに警備員を二人出して」

電話を切った後、黒木静は江本辰也を鋭い目で睨みつけ、「あなたは終わりよ。今ここで土下座して謝罪したとしても絶対に許さない。足を折らない限り、私の名前を名乗る資格なんてないわ！」

唐沢梅は黒木静の前に来て、必死に謝罪した。

「黒木さん、本当に申し訳ありません。すべては我が家のこの無能な婿のせいです。どうかお許しください。黒木さんの寛大なお心で、私たちをお見逃しください」

唐沢梅は本当に怖がっていた。

やっと手に入れた家族の株を、黒木家を怒らせて失いたくなかった。怒った当主が株を取り戻すことを恐れていた。

黒木静は唐沢梅の鼻先を指差し、侮蔑的に言った。「あんたは何の価値もないわ。さっさと跪いて、私のハイヒールを舐めて綺麗にしなさい。いや、あんたなんかにはその資格もない。唐沢桜子にやらせなさい」

黒木静は唐沢桜子を指差し、彼女に命じた。

その時、中年の男が警備員を連れて現れた。

これを見た吉兆料亭の外の人々は、唐沢一家が終わったと悟った。

唐沢悠真は警備員がスタンガンを手にして威圧的に近づいてくるのを見て、恐怖で魂が飛びそうになり、すぐに唐沢美羽を引き連れ、人々の中に逃げ込んだ。巻き込まれたくなかったのだ。

中村店長が警備員を連れてきたのを見て、黒木静はさらに傲慢になり、唐沢桜子を冷たく一瞥した。

「ふん」

彼女はたんつばを地面に吐き、地面を指差して言った。「唐沢桜子、跪いてここまで来て舐めなさい。そうすれば、この無能な夫の手を折るだけで済むわ。足は残してあげる」

唐沢梅は吉兆料亭の店長が警備員を連れてきたのを見て、恐怖で身体が震え、即座に地面に跪いて懇願した。「黒木さん、私たちが悪かったんです。本当に悪かったんです」

唐沢梅が跪いているのを見ても、江本辰也は無視した。

彼は心の底から唐沢梅を軽蔑していた。弱者をいじめ、強者に媚