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第21話

数日前、白石哲也の死が大きな話題となり、仮面をつけた男の正体は誰も知らなかったが、川島隆だけは知っていた。その男こそが江本辰也、南荒原の大将である黒竜だった。

江本辰也は尋ねた。「明和と唐沢家永光の提携はどうなっている?」

「江本さん、順調に進んでおります」

「提携を打ち切れ。唐沢家には、明和は唐沢桜子とのみ提携すると伝えろ。今、桜子は唐沢家から追放されたのだから、唐沢家とのすべての提携を打ち切る。外部であなたと桜子の関係について噂が広まっているが、それは自分で対処しろ。桜子に迷惑をかけたくない」

「はい、すぐに手配いたします」

川島隆は深く息を吸い込んだ。

電話を切ると、彼はすぐに指示を出し、唐沢家との接触を担当する者に提携の打ち切りを命じた。

同時に、唐沢家では――。

唐沢永光の社長である唐沢翔が、慌てて駆け込んできて、大声で叫んだ。「父さん、大変だ!」

唐沢健介は軽く目を開けた。「唐沢翔、もう何歳だと思っているんだ。そんなに慌ててどうするんだ。このままでは唐沢家を任せられない。唐沢家が本当に上流社会に入ることなんてできるのか?」

「父さんの言う通りです。でも、父さん、明和が永光との提携を取り消しました。しかも……」

その言葉を聞いて、唐沢健介の体が震え、勢いよく立ち上がった。「何だって?今、何て言ったんだ?」

唐沢翔は自信がなく、小声でうつむきながら言った。「明和が永光との提携を取り消しました。もう何十台もの大型車が永光の工場に現れて、原材料を引き上げようとしています」

唐沢健介は瞬時にソファに倒れ込み、老いた顔に大粒の汗が滲み出た。

明和との提携は唐沢家の台頭の最大のチャンスだった。今、明和が永光との提携を取り消したということは、唐沢家が上流社会に入るチャンスを永遠に失ったことを意味する。

「明和が他に何か言っていたのか。もたもたせずに早く言え!」彼は怒りで杖を叩きつけた。

唐沢翔は言った。「明和の会長である川島隆が言っていました。唐沢桜子としか提携しないと。桜子のいない永光とは提携しない、と」

「それなら、何をぐずぐずしているんだ。早く桜子を呼び戻せ!早く!」唐沢健介は杖を手に、唐沢翔や唐沢修司など唐沢家の者たちに打ちつけた。

唐沢家の人々はみな恐怖に顔を青ざめ、桜子を探し始め、彼女に電話をかけた。

影霧町。

人間診療所。

唐沢桜子は目を覚まし、ベッドに座って膝に頭を乗せ、小さな足を抱えて静かにぼんやりと考え事をしていた。

江本辰也は横に座り、彼女を楽しませようと冗談を言い続けたが、彼女は黙り込んで一言も口を開かなかった。

その時、彼女の電話が鳴った。

彼女は電話に出ることもなく、ただ見つめていた。

江本辰也は電話の発信者が唐沢翔であることを確認し、すぐに電話を切った。

今、焦っているのは唐沢桜子ではなく、唐沢家の方だった。

「誰、誰からの電話?」

唐沢桜子は電話を切った江本辰也を見て、目が腫れて涙が溜まったままで、以前のような生気は完全に消えていた。

「唐沢翔からの電話だった」

「そう」

唐沢桜子は淡々と答えた。

彼女は心が死んだかのようで、何事にも無関心になっていた。

「桜子、本当に唐沢家に戻りたいのか?唐沢家はこんなにあなたを扱っているんだ。戻らなくてもいいんじゃないか?」江本辰也は問いかけた。正直なところ、彼は桜子が唐沢家に戻ることを望んでいなかった。

「戻れるはずがないじゃない」唐沢桜子は静かに呟き、頭を振りながら無力に言った。「戻れないわ。私は厄介者で、唐沢家に多くの災難をもたらしてしまった。おじいちゃんに家から追い出され、お母さんさえも私を必要としていない」

その時、唐沢桜子の電話が再び鳴った。江本辰也は電話を取り、彼女に渡しながら尋ねた。「出る?」

唐沢桜子は電話を受け取り、出た。

電話の向こうから唐沢翔の焦った声が聞こえた。「桜子、どこにいるんだ?早くおじさんに教えてくれ。おじさんが直接迎えに行くから」

唐沢桜子は体を震わせ、絶望的な目の中に一瞬の光を見せ、急いで言った。「私は……私は影霧町の人間診療所にいるわ」

彼女は興奮し、江本辰也の胸に飛び込み、喜びの涙を流しながら泣き叫んだ。「辰也、おじさんが迎えに来てくれるのね。帰れるのよ、帰れるわ!」

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