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第9話

その言葉が口から出た瞬間、全員がその場に凍りついた。

しばらくの間誰も何も言えなかった。

「連れ帰った……誰を?」木下芽依が尋ねた。

私は木下芽依を見つめた。彼女は緊張で手が震えており、下唇をぎゅっと噛みしめていた。

響也の目は深く沈んでおり、繰り返すように言った。

「今回の任務で彼らは一人を連れ帰った。死人だ。その人は九条紫音だった。九条紫音が逃げたって言ったけど、どうして彼女の遺体が南極にあるんだ?」

木下芽依は焦って言葉がうまく出てこない。

「たぶん、彼女が逃げた時に……」

「逃げた時に事故死したとでも?」響也は軽く笑った。「それで?彼女が死んだ時、全身に傷があったんだよ。顔、首、腹部、全部が刀傷だ。しかも彼女の身元を証明するものは全部持ち去られていた……」

響也の声はここで詰まり、涙をこらえているようだった。

「芽依、どうやって君を信じろと言うんだ?」

「響也。本当なのか?」隅田先生は身を起こしショックを受けた様子で聞いた。

皆の視線の中で、響也は悲しそうにうなずいた。

「紫音が、今回あなたたちが連れ帰った……」

隅田先生はその場に崩れ落ちた。「まさか、まさか……こんなにも長い間、ずっと紫音を誤解していたのか?」

「当時、俺たちは全員出て行ったんだ。紫音と残っていたのは……」隅田先生の視線は木下芽依に向けた。

「芽依、何か言うことはないのか?」

だが答えはもう目の前にあった。 この手掛かりを掴めばすべての真実が明らかになるのだ。

「違う、私は殺してない!」木下芽依は叫んだ。「九条紫音が自分で逃げたんだ!」

「信じてください!」木下芽依は足を踏み鳴らし、まるで冤罪をかけられた被害者のようだ。

彼女の目には涙が溢れていて、まるでひどく不当な扱いを受けたかのように見える。 何という見事な演技だろう。もしも私が被害者でなかったら、きっと騙されていただろう。

「芽依、俺はいつお前が九条紫音を殺したなんて言った?」

全員の視線が木下芽依に注がれ彼女は焦りで取り乱していた。

「芽依、慌てるな」響也は彼女にじっと目を向けた。「俺はもう刑事課の人間を呼んでいる」

「昔、事故が起きたあの船、まだ倉庫に置かれているんだろう? そこには俺が欲しい手がかりがあると思う」

木下芽依の顔は一瞬で青ざめた。「響
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