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三年間の凍結
三年間の凍結
著者: 月森 さやか

第1話

三年前、私は南極調査隊の中でも一番将来有望とされるメンバーだった。

でも、南極に入ってから婚約者の橘響也である彼の初恋の相手に殺されてしまった。

彼女は私の物資を奪い、顔を切り裂き、最後には私を船から突き落としたのだ。

私はお腹に響也との二人目の子供を宿していたのに。

それでも救助隊が来た時、彼女は私が物資を盗んで逃げたと嘘をついた。

響也はその嘘を信じ、自ら報告書を書いて私の存在を調査隊から抹消してしまった。

それ以来私は調査隊の中で嫌われ者になってしまった。

そして3年後、ついに私の凍った遺体が発見された。

私は宙に浮かんだまま解剖台の上にいる人を呆然と見つめていた。

それはもう人間とは呼べない姿だった。皮膚はめくれ上がり、薄い氷に覆われている。

私ですらそれが自分だとは信じられなかった。

「橘さん、来たんですね?」隣にいる助手が響也に声をかけた。

「今回の調査隊が南極でこれを発見しました」

「顔は酷く切り裂かれ、身元を証明できるものは全て奪われていました。これは明らかに殺人です」

「南極から引き上げられた」と聞いた瞬間響也の手が一瞬止まったが、すぐに無表情で手袋を装着し始めた。

私は宙に浮かびながら、その男をじっと見つめ続けた。

3年、私はもう3年も死んでいた。

死後、私の魂は南極に囚われ、寒風に晒され続けていた。

ようやく誰かに発見され、ここに連れ戻された。

しかし自分の解剖をするのが響也だなんて思ってもみなかった。

私の顔があまりにも変わり果てていたため、ベテランの響也ですら眉をひそめた。

彼はなかなかメスを入れず、助手に向かって「芽依はこのことを知っているか?」と尋ねた。

助手は首を振りながら言った、「今回は結婚式の準備で残っているので、まだ知らないと思います」

響也はすぐに「調査隊の人には、絶対に彼女に知らせないように言っておいてくれ。

芽依は怖がりだから、ショックを与えたくないんだ」と優しい表情で言った。

私は呆然と響也を見つめた。

3年が経って、彼は木下芽依と結婚するまで進展している。

私の婚約者が私を殺した犯人と結婚しようとしているのだ。

宙に漂いながら私は自分のボロボロになった体を見下ろした。

痛みは感じないはずなのに響也の手が動くたびに胸が締め付けられる。

「顔には鋭利な刃物で45箇所もの傷がつけられている」

「首には鋭利な刃物による致命傷と絞め痕、恐らく絞殺された後に刺されたものだ」

隣の助手は驚愕しながら言った。「よほどの恨みがあったんでしょうね。こんな酷いことを……」

響也の言葉は冷たかったが、その手はすらすらと動いていた。

続いて私の腹部に目をやる。そこには無数の傷跡が刻まれていた。

「腹部には13箇所の刺し傷がある」

彼もさすがにためらったのか、小さなため息をついて言った。「初見では、全ての傷は生前にできたものと判断される。そして、腹部が微かに膨らんでおり、内部にはおよそ3ヶ月の胎児が確認された」

それは、私たちの子供だったのだ。

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