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第10話

響也は家の物置部屋に一人閉じこもり、誰も中に入れなかった。

薄暗くほこりが舞うその部屋で、彼は奥から古びた箱を取り出した。

中には多くの物は入っていなかったが、ほとんどがかつて私が彼に贈った物ばかりだった。

一番上にあったのは翡翠の腕輪。

それは響也の母親が亡くなる前に、私に手渡してくれたものだ。

「紫音ちゃん、もう私はいなくなるけど、これからは響也と仲良くね」と。

あの時、私は何て答えたっけ?

「お義母さん、心配しないでください。私、響也とずっと一緒にいますから」って約束し

た。

でも、結局その約束は守れなかった。

響也は腕輪をじっと見つめ、顔に苦しそうな表情が浮かんだ。

震える手でそれを取ろうとしたが、腕輪は彼の手から滑り落ち、床で粉々に砕け散った。

その破片は、まるで私の心に刻まれた傷のようだった。

「紫音……」彼はついに堪えきれず、膝をついて泣き始めた。

私はただ冷静に彼の隣に座り、その涙を見つめていた。

でも響也、結局私をここまで追い詰めたのはあなたじゃない。

もしあなたが木下芽依をあの調査隊に送り込まなければ。

もし私たちの関係をもっと大切にしてくれていたなら。

もしかしたら、こんな結末にはならなかったかもしれない。

箱の中にはもう一つ、私たちが一緒に写った写真があった。

数少ない二人の写真だ。

彼はその写真を拾い上げ、胸に抱きしめていた。

「紫音、俺が間違ってた……ごめん、紫音……」

響也、どんなに泣いても私はもう戻れない。

あの冷たい世界で、私はもう二度と帰ってこられないんだ。

その姿を誰に見せようとしているの?

響也は物置部屋に閉じこもり、食事も取らず、私との思い出に浸り続けた。

木下芽依が何度も訪ねてきたが、彼はすべて断った。

彼女の持ち物もすべて家から放り出し、代わりに私にまつわる物を引っ張り出し、まるで3年前に戻るかのように一つ一つ部屋を整えていった。

響也は、まるで狂ったように独り言を言いながら過去にしがみついていた。

「紫音、感じるよ。君はここにいるんだよね?」

「帰ってきたんだろう?見て、この家、昔と同じだよ」

でもどれだけ整えてもそれが嘘だと分かっている。響也は私の物をほとんど捨ててしまったんだから。

どれだけ昔のように戻そうとしてもこの家はもう空っぽなんだ。

「違う、
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