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パパは僕がさくらんぼアレルギーだと知らなかった
パパは僕がさくらんぼアレルギーだと知らなかった
Author: 三浦星

第1話

ママが電話で僕の居場所を見つけてくれたとき、僕は地面に横たわり、肌が真っ赤な発疹で覆われていた。

その時も、パパは「お前の息子はお前が悪い教え方をしたせいだ!ちっとも礼儀がないし、テーブルに吐くなんて、ゴミ箱に吐けないのか?それに、人の好意を少しも受け入れないなんて。まったく、お前にそっくりだ」と繰り返していた。

ママは耐えきれずにパパに平手打ちをし、僕を抱き上げて病院に向かって走り出した。

僕は空中に浮かんで、静かにすべてを見守っていた。

パパが大嫌いだ。

いつだって、ママと僕のことを気にかけてくれない。

そう、僕は死んでしまったんだ。

これが死というものなのか。昨年、隣に住んでいた阿部おじいさんが亡くなったとき、彼もこんな風に空を漂っていたのかな?

その時、僕は彼を見ていなかったけど、パパとママも僕が見えないのかな?

でも、僕は彼らが見える。

ママが僕を抱いて号泣しながら、路肩で救急車を待っている姿も。

そして、ママが医者に僕を助けてくださいと必死に祈る姿も。

医者は画面をじっと見つめ、ため息をついた。その画面には、三本の平行な線が映っていて、全く動きがなかった。

ママは一人であちこち忙しく動き回り、僕は「僕」が小さな穴の中に運ばれていくのを見ていた。

その後、ある男性がママに小さな箱を手渡した。

ママはその箱を抱いて、ぼんやりと道路の車の流れを見つめていた。夜になるまで、家には戻らなかった。

ママはベッドに横たわり、時折布団を抱きしめて泣きじゃくったり、天井をぼんやりと見つめたりしていた。

僕は静かにママの隣に横たわった。いつもママが僕を寝かしつける時みたいに、ママを軽くトントンとしたかった。

でも、僕の手がママの体をすり抜けてしまうのを、ただ見ているしかなかった。

びっくりして叫んでしまったけど、ママは全然気づかない。

ママは動かずに横たわっていて、僕は退屈だったので、昨日ママと組み立て終わらなかった積み木の方に歩いていった。

続けて組み立てようとしたけど、手が積み木をすり抜けてしまって、持ち上げることができなかった。

アニメを見るためにテレビをつけようとしたけど、それもできなかった。

仕方なく、僕は再びベッドに横たわり、ただ静かにママと一緒にいるのも悪くないと思った。

でも、ママはお腹が空いていないのかな?

全然、起きてご飯を食べていない。

僕は、ママの作るコーラ煮のチキンが食べたい。

でも、僕は死んでしまったから、もう二度と食べられないんだろうな。

三日目を指折り数えた時、ママは起き上がった。

彼女は携帯をちらっと見たが、そこには何も表示されていなかった。

僕が死んで、ママがこんなにも悲しんでいるのに、パパは一度も電話してこなかった。

他の家のパパもこんなものなのかな?

僕はママがベッドサイドテーブルから何枚もの紙を取り出すのを見た。

その一番上の大きな字が読めた。「離婚届」だ。

これが、ママのベッドサイドテーブルに何日も何日も置かれていたあの紙だ。ママはいつもそれを見ては、僕を見て、最後にまたテーブルに戻していた。

ついに、パパが帰ってきた。

彼は怒ってソファに座り、声を荒げて責め始めた。「お前の息子は全然マナーがなってない!静が用意したパーティーの彩りを、彼は台無しにしたんだ!罰として立たせたら、今度はお前に告げ口するとは!」

「お前だって同じだ!あそこは静の家だぞ!彼女が何しに来たのって聞いたのに、返事もせず、押しのけて無理やり入ってきて!」

「お前はちゃんと話せないのか?静を押して転ばせたんだぞ!手を切ったんだよ!」

ママは無表情でパパの話を聞いていた。もうパパの言葉は、彼女に何の傷も与えられないのだろう。

高橋静という名前のおばさんが僕たちの生活に現れてから、パパはママに対してますます不機嫌になり、いつもママを傷つけるようなことを言うようになった。

僕はパパに伝えたかった。「もう僕は死んでしまった。高橋おばさんに謝罪の気持ちは伝わったのかな?もうママを責めないでくれないかな?」

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