共有

第12話

私はうつむいて言った。「初先輩、あなたにはもっとふさわしい人がいるはずです」

「どうしてそんなふうに思うんだ?」

指先が無意識に握りしめられた。できれば言いたくない言葉だったが、事実は事実だ。

「あなたも分かってるでしょ。私と母の立場は非常に微妙なんだ。あなたが私のせいで他人から後ろ指をさされるのも、誰かの攻撃の的になるのも嫌なの。初先輩、あなたは本当に素晴らしい人だから、もっとふさわしい相手がいるはず」

彼は身を乗り出して私に近づき、「つまり、俺のことが嫌いじゃないってことだよな?」

私の耳は一気に真っ赤になった。「嫌いだよ」

「いいよ、嫌いでも構わない。結婚すれば、感情なんて後からゆっくり育てればいい」岩崎初は風衣のポケットから指輪を取り出し、私の指にはめた。「明日、入籍しに行こう」

私は彼を呆然と見つめた。

彼の口調は軽かったが、真剣さも含まれていた。「冗談じゃないよ」

私は黙って言葉を飲み込んだ。

彼は私が何も言わないのを見て、静かに話し始めた。目は優しく輝いていた。「明、俺は君が好きだ。4年間も好きでい続けた。

最初に自分が君を好きだと気づいたとき、正直、自分でも狂ったかと思ったよ。

だから、自分に君から遠ざかるように言い聞かせていたんだ。でも、どんどん君のことが好きになってしまった。

俺は、自分が男を好きになったことを抑え続けてきた。4年間ずっとだ。でも、君が国外に行って二度と帰ってこないと聞いたとき、何か行動しなければ、本当に君を永遠に失うかもしれないと思った」

「だけど……」彼の目はさらに深くなった。「君が女の子だったなんて」

「だから分かるだろう?君が男であろうと女であろうと、君の身分が何であろうと、君は君なんだ。誰でもない、君自身なんだ」

そう言って、彼は棚から一束の書類を取り出した。

「俺と結婚してくれ。たった3年だけでいい。もし3年後に君がまだ俺を好きじゃなくて、離婚したいと思うなら、その時は財産の半分を君に分けるよ」

「いや……」彼の真剣な表情に驚き、私は即座に書類を突き返した。「先輩、そんなこと言わないで」

「俺を拒まないでくれ」彼の真剣な表情には、少しだけ悲しさが滲んでいた。

翌日。

私は婚姻届受理証を持っていて、夢の中にいるような感覚だった。

昨夜、どうやって彼の提案を受け入れたのだろう?

ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status