もう一度あなたに逢えたら

もう一度あなたに逢えたら

last updateLast Updated : 2025-04-29
By:  桃口 優Updated just now
Language: Japanese
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 主人公は、忘れることができない後悔があった。  そのことを思い出していると、突然どこかわからない世界に飛ばさせた。  そこは過去の世界で、前にうまくできなかったプロポーズのやり直しを主人公はしようとする。  でも、それはうまくいかなくて⋯⋯。

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Chapter 1

一章

 忘れることができない後悔がある。

 何をしても変わらないのに、心にしこりのようにずっと残っている。

 基本何事も夢見がちな僕が一つだけ現実的に考えるようになったのは、あることが関係している。  

 そんな事を思い出していると、どこからかオルゴールのネジをゆっくり回しているような機械音が聞こえてきた。

 そこから聞こえる音楽を聞いているうちに、僕の意識は落ちていった。

 目を開けると、僕はさっきまでいたところと違うところに立っていた。

 慌てて周りを見渡した。街路樹がたくさん植えられていて、おしゃれでありながら落ち着いた雰囲気があるところだ。

 やや遠くには、美容室が何店も並んでいた。

 人は多いけど若い人はあまりおらず、まるでこの街の雰囲気に人が合わせているかのように感じた。

 僕はさらに前を見つめると、電飾がきれいに飾りつけられたオブジェがいくつかあった。

 その時、僕はデジャブを感じた。

 前方から真上に視界を移すと、太陽がまだ浮かんでいた。時間帯的に夕方になる少し前ぐらいだろう。

 だから、電飾もまだ鮮やかな光りを放っていないのかと納得がいった。

 隣を見ると、妻の紗奈(さな)がいた。

 それらの情報から、僕は今どこにいるのかなんとかわかった。

 まずここはワンランク上のデートスポットとして雑誌に載っていたところの『代官山』だ。

 そして、この風景だけでなく僕がここに彼女と一緒にいることから、ここは二〇一四年のクリスマスだとはっきりとわかった。

 そうわかったのは、僕が彼女とこれまで代官山を訪れたのは、この時の一回っきりだからだ。

 「代官山にデートに行こう」と僕が伝えると、僕よりも少し年下の彼女は「ドレスコードがあるお店に行く予定かな?」と事前に聞いてきた。

 僕は知的な女性に魅力を感じる。

 だから、そういうところまで瞬時にしっかり考えられる彼女を誇らしく思っている。

 彼女の好きなところをあげると、いくら時間があっても足りない。それほど僕は今も彼女に心を奪われてる。

 彼女は淡いピンク色のパーティードレスを着て、化粧もいつもよりきっちりとしている。

 見るのは今回で二回目なのに、彼女のドレス姿に見とれてしまった。

 彼女は普段かわいらしい服を着ていることが多く、化粧もそんなに濃くないことが多い。

 きっと普段と違うからだと、僕は胸のドキドキに理由をつけた。

 僕はここに急に来たのに、いつの間にか僕の服はスーツに変わっていた。

  僕は基本的に楽観的に物事を考えるので、そのことにたいしてもそんなこともあるかなぐらいにしか思わなかった。

 そして、僕は少しずつ今の状況がわかってきて、ホッとしてきていた。

「葵央(あおい)?」

 彼女の柔らかな声がすっと僕の耳に入ってきた。

 彼女の声は、声量としては大きくはないのに、なぜかよく届く。

 彼女とは、大学生の時に出会った。

 同じサークルの先輩と後輩だった。彼女がサークルの見学に来た時に、周りの男子は皆「かわいい子が来た」と騒いでいたのを今でも覚えている。

 でも、僕が彼女を好きになったのは、彼女がかわいいからではなかった。

「あっ、うん」

 そんなことを思い出していると、返事することを忘れていて僕は慌ててした。

「葵央、大丈夫?」

 彼女は心配そうに僕の顔を見上げた。

「ごめんごめん。何の話をしていたのだったかな?」

 僕は今度はすんなりと返事を返せた。

「本当に大丈夫? 今日の夕食はどこで食べる? って聞いていたのよ」

「あっ、そうだったね。どうしようかな」

 二〇一四年のクリスマスといえば、僕が彼女にプロポーズをした日だ。

 彼女が大学を卒業してすぐに、僕はプロポーズをした。

 お互いに結婚願望が強かった。二人ともかなりの寂しがり屋だから毎日顔を合わせられないのが寂しかった。結婚すればずっと顔を合わせられる。

 しかも、僕の方が年上だから僕はその時もう働いているし、金銭的にも二人で生活することもできた。

 でも今思えば、あの日のプロポーズはかなりテンパっていた。

 その日、彼女にプロポーズしようと僕は普段は行かない高級なお店をあらかじめ調べていた。素敵な場所でロマンチックにプロポースしようと思っていた。

 でも、そこについてみると周りの雰囲気に圧倒されて、僕は緊張でガチガチになってしまった。

 せっかくの素敵な料理の味もほとんどわからなかった。

 婚約指輪も用意しているのに、プロポーズをタイミングよくすることもできなかった。

 それだけでなく、僕がいつもと様子が違いすぎるから食事中終始彼女に心配をかけてしまった。

 僕はそのお店を出てすぐ、婚約指輪をだしてプロポーズをした。

 「あの、これ、指輪。だから⋯⋯」

 ちゃんと考えていたプロポーズの言葉は、でてくる余裕はなかった。

 彼女は一瞬言葉が出なかったようだけど、これはプロポーズなのだと察してくれたようで「うん。ありがとう」と言っくれた。

 こんなの『プロポーズ』とは呼んでいいかわからなくなってきた。正直テンパることはよくあるけど、あの時のテンパりようはいつもよりひどかった。

 こんなプロポーズをすると彼女は喜ぶかなという視点を当時の僕はもっていなかったと、今思い出すことで気づけた。

 彼女にもこんな風にプロポーズしてほしいという願望は必ずあったはずだ。彼女とは大学の頃からずっと付き合っていて付き合いも長いし、少し考えれば彼女がどんな風な感じが好きかわかったと思う。

 それなのに僕はあんなプロポーズしかできなかった。

 婚約指輪もダイヤモンドがついたものを買ったのに、これじゃあもらった相手は何一つときめかない。

 そんな事を思い出しながら、予約しているお店を彼女に伝え、僕は再び歩き始めた。

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一章
 忘れることができない後悔がある。 何をしても変わらないのに、心にしこりのようにずっと残っている。 基本何事も夢見がちな僕が一つだけ現実的に考えるようになったのは、あることが関係している。   そんな事を思い出していると、どこからかオルゴールのネジをゆっくり回しているような機械音が聞こえてきた。 そこから聞こえる音楽を聞いているうちに、僕の意識は落ちていった。 目を開けると、僕はさっきまでいたところと違うところに立っていた。 慌てて周りを見渡した。街路樹がたくさん植えられていて、おしゃれでありながら落ち着いた雰囲気があるところだ。 やや遠くには、美容室が何店も並んでいた。 人は多いけど若い人はあまりおらず、まるでこの街の雰囲気に人が合わせているかのように感じた。 僕はさらに前を見つめると、電飾がきれいに飾りつけられたオブジェがいくつかあった。 その時、僕はデジャブを感じた。 前方から真上に視界を移すと、太陽がまだ浮かんでいた。時間帯的に夕方になる少し前ぐらいだろう。 だから、電飾もまだ鮮やかな光りを放っていないのかと納得がいった。 隣を見ると、妻の紗奈(さな)がいた。 それらの情報から、僕は今どこにいるのかなんとかわかった。 まずここはワンランク上のデートスポットとして雑誌に載っていたところの『代官山』だ。 そして、この風景だけでなく僕がここに彼女と一緒にいることから、ここは二〇一四年のクリスマスだとはっきりとわかった。 そうわかったのは、僕が彼女とこれまで代官山を訪れたのは、この時の一回っきりだからだ。 「代官山にデートに行こう」と僕が伝えると、僕よりも少し年下の彼女は「ドレスコードがあるお店に行く予定かな?」と事前に聞いてきた。 僕は知的な女性に魅力を感じる。 だから、そういうところまで瞬時にしっかり考えられる彼女を誇らしく思っている。 彼女の好きなところをあげると、いくら時間があっても足りない。それほど僕は今も彼女に心を奪われてる。 彼女は淡いピンク色のパーティードレスを着て、化粧もいつもよりきっちりとしている。 見るのは今回で二回目なのに、彼女のドレス姿に見とれてしまった。 彼女は普段かわいらしい服を着ていることが多く、化粧もそんなに濃くないことが多い。 きっと普段と違うからだと、僕は胸のドキドキに理由をつ
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二章
 僕はお店に向かいながら、彼女との出会いの続きを思い出していた。 僕が入っている大学のサークルの見学に来た次の日に、「入部したいです」と彼女は再びやってきた。 僕が所属しているのは、ダンスサークルだ。 でも、多くの人がダンス未経験ということもあり、他のサークルと比べてもかなりゆるい感じだ。 その頃僕は大学三年生だから、彼女とは二歳差がある。 先輩だからといって特別えらいわけでもないと僕は考えているから、挨拶をしに彼女のもとに行った。 彼女は、「あっ、山崎先輩ですよね?」と先に声をかけてきた。「えっ、そうだけど。もうすでに自己紹介しちゃってたかな?」 僕は、予想外の言葉に驚いた。「名前合っててよかったです。あっ、お話するのは初めてです。昨日見学に来た時に、他の先輩の方が山崎先輩の名前をよく呼んでいましたので、名前を覚えました。でももう一度来ると、名前が合っているのか急に自信がなくなってきて⋯⋯」 彼女は顔を少し赤くしていた。  僕はサークルの部長ではないけど、新入生受け入れの準備などを積極的にすることが多い。 僕は、人と話すことが好きだから。 見学にきた数人の子の中で一際元気な子が一人いて、その人がこの子だったと、僕はすぐに頭の中で情報が一致した。「そうだったのだね。わざわざ覚えてくれていてありがとう」「私はダンス未経験ですから、先輩の方々の名前ぐらいは早く覚えておこうと思ったのです」 その考え方は僕にはなかったもので、珍しさを感じた。さらに、形式的ではなく素の前向きさを感じとれた。「すごいけど、そんなに気合い入れなくても大丈夫だよ。うちのサークルに入る人のほとんどがダンス未経験で、サークル内の雰囲気もわいわいとした感じだから」「未経験者の方が多いんですね。経験者の方ばかりだとどうしようと思っていました」 彼女から緊張の糸がほどける音がした。「じゃあ、これから簡単にサークルについて説明するね」「よろしくお願いします」 サークルについての説明が一通り終わった後、僕は彼女にまた話しかけた。「あっ、よかったらだけど、最後に名前をもう一度教えてもらってもいいかな?」 この時の僕にやましい気持ちは一切なかった。 僕が覚えること全般が苦手だから、初めに名前を聞いたけどちゃんと覚えられてなかっただけだ。「私のですか? いいですよ
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三章
 僕はあの日からプロポーズのことを話題に出すのを避けていたことに気づいた。 今頃になってやっとわかり、僕はかなり申し訳ない気持ちで心がいっぱいになった。 そう思いながらで、プロポーズのことについて一度もネガティブな言葉を言わない彼女の優しさを同時に思い出した。 そして、その優しさが恋に落ちた瞬間のことを僕をまた思い出させた。  その時は、彼女がサークルに入ってから初めての夏休みを迎えようとした時だった。 彼女がサークルに入って初めて会話をしてから、二人の距離がぐっと縮まったのは、好きな歌手の話をした時だった。好きな歌手が同じで、さらにどこが好きなのかも同じだったからだ。 共通点があるというより、そんな深いところまで同じことに驚いた。どこが好きかなんて人それぞれで無限に近いほど数があるから。 あの時のことは、今でもよく覚えている。 「そんなことってあるー?」って、部室で大声を出し、笑い合ったから。 他にも夢見がちか現実的かという話になった時も、夢見がちと同じだった。その時の僕は二人の間に同じことが増えることがただ嬉しかった。  それから僕たちは自分の感情も追いつかないほど、すごい速度で仲をどんどん深めていった。 僕と彼女にたいして、同級生たちは「もうサークル中にいちゃつかないでよ〜」と冗談まじりにからかってくるようになったまでだ。 でも、そんな時は僕が同級生に何かを言うより先に、彼女が「先輩、違いますよ。山崎先輩が優しいから、色々話を広げてくれるだけですから」と言い、場をいつも収めてくれていた。 僕からしたら、こんな風に僕を守る言葉を自然と言ってくれる彼女の方が何倍も優しい。 彼女は一般的に顔はかわいい上に愛嬌もある。僕が同級生たちに彼女と仲良くしていることを妬まれる可能性はゼロではない。 彼女がそこまでわかっているのかまではわからないけど、彼女の人を明るくする才能に僕が救われていることは間違いのないことだ。 一方で、そんなにはっきりと『違う』と言われるとちょっとだけショックを受けている僕もいた。 僕は最近彼女のことばかり考えるようになっていたから。 明日から大学は夏休みに入る。うちのサークルは夏休みに集まることは数回しかない。 だから、彼女とはしばらく会えないようになる。 普段はサークルがある日は毎回顔を合わせていた。でも
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四章
 どれぐらい走ったかわからない。 ここの景色は見たことがあるところだけど、どこかもどこにいけばいいかわからない。 でも、辛さは全然なかった。 彼女に会えるなら、これぐらい本当に微々たるものだから。 僕は前にいる人の間を駆け抜ける前に、ちらっとその人の後ろ姿を見ていた。 彼女の姿なら、後ろ姿を見るだけでわかるから。 彼女が特別特徴的な髪型をしているわけじゃない。僕には彼女だと一目でわかる目に見えないレーダーが頭についている気がする。「紗奈!」 何人もの人を追い抜かしていき、僕は彼女をやっと見つけた。「葵央、そんなに慌ててどうしたの?」 肩で息をしている僕を見て、彼女は少し心配そうな顔をしていた。 そんな顔を何度もさせたくないなと、僕は心が痛くなった。「突然現れてびっくりしていると思うけど、今僕のことはいい。大丈夫だから。そんなことより紗奈に今すぐ伝えたいことがあるのだけど、ちょっといいかな?」「うん、いいよ」 僕は彼女の手をとって、走り出した。 ここは道路だから、もう少し落ち着けるところに移動したかった。 静かそうな公園を見つけたから、そこに行き公園のベンチに座ってもらった。 決して最高の場所と雰囲気でないことはわかっている。でも、僕はこの世界にどれだけの時間いられるかわからないからここに決めた。「紗奈さん。僕と結婚してくれませんか?」 僕は膝立ちになり、彼女の顔をまっすぐに見つめた。「はい」 彼女は、僕の言葉を受け取って頷いてくれた。「去年プロポーズをしてくれたところなのに、また愛を伝えてくれて本当にありがとう」 僕は彼女の言葉からここは二〇一五年の世界だとわかった。そして、奇跡的に望んでいた世界に来られて安心をした。「初めてプロポーズをした時、全然スマートにできなくてごめん。紗奈はもやもやした気持ちがずっと残っていたよね」 本当は、その日からずっとプロポーズについての話題を避けていたことも言いたかった。でも、今は二〇一五年の世界にいるからそれを言うとややこしいことになるから言わなかった。「そんなこと気にしなくていいのに」 彼女は優しく微笑んでくれた。それだけなのに僕は心が軽くなったのを感じた。 「僕は大切な人とはどんなことでも真剣に向き合うことの大事さを、紗奈に教えてもらった。紗奈には、何度でも思いを伝えた
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五章
 彼女の涙に、優しさを感じた。 どうしてこんな温かみのある涙を今流すのだろう。 考えの中に入り込みそうになったけど、なんとか我に返り涙を流した理由を聞いた。「紗奈、どうしたの?」「これは、『幸せの雫』だよ」「幸せの雫?」 僕は聞いたことのない言葉だったけど、すごく興味が湧いた。「うん。最高の幸せを感じた時にだけ流れる涙のことをそう呼ぶのだよ。子どもの頃、お母さんに絵本読んでもらった時に教えてもらった」「それならよかった」 僕は彼女の涙が悲しみからくるものでなくて安心した。それと同時に、子どもの頃に教えてもらったことを今も素直に信じている彼女がとても純粋だなと思った。「私は今、幸せをいっぱい感じているよ」「本当?」「本当だよ。私がこれまでに嘘ついたことあった?」「嘘をついたことはないね」 彼女と出会った時の頃から思い返していたけど、嘘をついている彼女はどこにもいなかった。「でしょ」 彼女は「頭をなででー」と自分の頭を僕の方へ近づけてきた。 僕たちにとってこれは結構頻繁にあることだ。日によって甘える側が変わることもある。 結婚してからも僕たちは付き合っていた頃と変わらずずっと仲がよかった。むしろ、結婚してからの方が仲がよくなった。彼女といる時間が増えて、彼女のことをより知っていったら、もっと好きになった。 僕は彼女の頭をなでながら、彼女の目を優しく見つめた。「あと、それと⋯⋯」 彼女は少し下を向いた。「それと?」「私は葵央に黙っていたことがある」「その時が話す時じゃないと紗奈が感じたなら、気にすることはないよ」「そう言ってくれてありがとう。でもずっとこれでよかったのかなと考えていた。葵央を何度も過去の世界に行かせたのは私なの」「そうだったのだね」 自分の意志ではなかったから、過去に来た経緯が少しわかった。でも、負の感情は浮かんでこなかった。「びっくりしただろうし、怖かったよね。本当にごめん」「大丈夫だよ。でも、どうして僕に過去に行ってほしかったの?」 僕にとって過去に行った意味は十分あったけど、彼女にはどんな理由があるのか知りたかった。「ただもう一度葵央に逢いたかったから」「逢いたかったから?」「そう。私があの世に行ってから星に願っていた。あの世でもこの世と同じように夜になると星がきれいに見えるのだよ。
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