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第4話

部屋は静まり返った。

それぞれの人が私を見る表情は違っていたが、嘲りの色は同じだった。

五十年間、この家で牛馬のように働いてきた女が、どうしてこの家を捨てられるだろう?どうして目の前の男を捨てられるだろう?

私が外へ向かおうとしたとき、彼らは初めて私が本気だと気づいた。

「春奈、お前はどこまで胡乱なことを続けるつもりだ!」陽太が大声を上げた。

綾子がすぐに駆け寄ってきて、私の手をつかみ、涙を流しながら私の荷物を奪おうとした。

「春奈、お願い、私を追い出してくれ。もう二度と戻らないから。絶対に私のために陽太と離婚しないで。あなたたちは五十年も一緒だったんだから!」

そうだ、五十年。

人の一生にいくつの五十年があるだろう?

しかし、私は五十年間で陽太の心を温めることもできなかった。

私は綾子の手を払いのけ、落ち着いた声で言った。

「君のせいじゃない。ただ、もう陽太とは一緒にいたくないだけだ」

五十年間、一度も文句を言ったことはなかったか?

もちろん、あった。

重い家事に押し潰され、陽太に理解されないとき、何度も離婚したいと思った。

しかし、母親に泣きながら訴えるたびに、母親は私に言った。

「それが女の運命だ。我慢しなさい」

「もう少し我慢すれば、一生が過ぎるわ」

学生時代は希望を学び、未来に憧れた。

しかし、結婚して大人になると、学んだのは我慢だけだった。

そして、我慢する必要があるのは女性だけだった。

陽太はソファで新聞を読み、果物を食べ、私がお茶を入れて、膝を折って床を掃除していた。

彼の子供を産み、育て、義父母を介護した。

彼が働いていた頃は、仕事が終わると必ずポーカーをしていた。

退職後は釣りや碁を楽しみ、毎日出かけていた。

陽太にとって、五十年間で我慢しなければならないことは何一つなかった。

「離婚するなら、私から申し出るべきだ。お前が離婚を申し出る資格があるのか!」

陽太の怒声が私の思考を引き戻した。

彼は突然駆け寄ってきて、私の荷物を引っ張り、服が床に散らばった。

古びた下着まで、人々の前に広げられた。

まるで私を裸にし、恥ずかしげに見せるかのようだった。

綾子が下着を見て驚いた顔をしたとき、私の心は針で刺されたように痛んだ。

「よし、お前から申し出ろ」

私は床に散らばった下着を拾い上げた。

綾子
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