共有

第8話

高橋綾子は呆然としていた。まさか私が本当に動画を送るとは思っていなかったのだろう。

「私はただの老婦人だもの。ネットに動画を上げても、誰も気にしないわよ」

しかし、彼女にはわからない。私と奈緒の物語が若者たちによって動画にしてアップロードされたんだ。

68歳で離婚したおばあさんと、がんになったおばあさんが、オープンカーで二日二晩かけて海まで行き、最後は遺灰を海にまいた。

これはどれだけ感動的な話だろうか。

その動画がアップされると、一夜にして大きな話題となった。

私のSNSアカウントにはすでに100万人以上のフォロワーがいる。

みんな親しげに「高橋ばあちゃん」と呼び、私を新しい時代の女性、そして「強く美しい女性」と賞賛してくれる。

そして今、その「強く美しい女性」である私が、夫の不倫を暴露する動画をアップした。

コメント欄にはすぐに99以上の反応が現れた。

見るまでもなく、全てが批判の声だった。

「叩かれたら、立って受け止めなさい」

私はそのコメントを陽太と綾子に読み聞かせた。

「品性下劣なお年寄りが死んで火葬されれば空気を汚すだけだ!」

「春奈、すぐに削除しなさい!」と綾子は怒りに震えながら、私を殴ろうとした。

しかし私は彼女の手を押さえ、逆に平手打ちを返した。

「私のアカウントを君の命令で消すわけないわ!叩くなら、この顔面盗み見の女を叩きなさい!」

陽太の叫び声を無視して、私は立ち去った。

車に乗り込むと、弁護士から電話がかかってきた。

「ご主人の不倫の証拠があれば、裁判所での離婚認定は確実だ」

少し安心した矢先、孫の学校の先生から連絡があった。

「お孫さんの迎えが来ていないんですが」

電話越しに、孫の泣き声が聞こえた。

「悪いばあちゃんには行かない!綾子ばあちゃんに迎えに来てほしい!」

そんなに望むなら、私は行かない。

私は先生に綾子の電話番号を渡した。

その晩、私が新しい家に移ったことを察知した息子と嫁が訪ねてきた。

彼らは私に向かって大声で怒鳴った。

「どうして綾子が邦彦を迎えに行くことを許すの!あの人が邦彦を階段から転落させたんだぞ!全身に複数の骨折を負わせ、瀕死の状態だった!」

息子は泣いていた。

父親に追い出されたときも泣かなかったのに、自分の息子が他の女に傷つけられたとあっては、彼は私のも
ロックされたチャプター
この本をアプリで読み続ける

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status