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第7話

最初に思ったのは、陽太に何かあったのではないかということだった。

警察が私の心配を見抜き、私に言った。

「あなたの旦那さん、陽太が警察に通報してきました。半月以上連絡が取れないそうで、何か起こったのかもしれないと心配していました」

私は大いに驚いた。

まさか陽太が私を見つけられないからと、警察に通報するとは思わなかった。公的資源の無駄遣いだ。

すぐに私は陽太との結婚式の動画を取り出し、警察に見せた。

「私たちは離婚の手続き中で、弁護士から連絡を待ってるんだ。申し訳ないけど、時間を取り止めちゃった」

警察が動画を見終わり、嫌悪の表情を浮かべた。

「まさかこんな年になって、こんなことをするとは思わなかった。春奈さん、離婚を応援するよ!でも、もう一度会って話をするべきだ。また通報されるかもしれないから」

警察が去った後、私は陽太の連絡先をブラックリストから解除した。

すぐに彼からの電話が鳴った。

電話を取ると、私は即座に言った。

「陽太、私はすでに裁判所に離婚を申請した。何かあれば弁護士に話してくれ。もう私を煩わせないで」

彼はしばらく黙っていたが、やがてかすれた声で言った。

「春奈、離婚しなくてもいいかな……」

「電話じゃ話せない。会って話せる?」

彼の声は切々としていた。

警察の言葉を思い出し、私は直接会って話を通すことに決めた。

私は陽太とショッピングモールのカフェで会う約束をした。

半月ぶりの彼は、見違えるほど瘦せ細っていた。

結婚式の時にはまだ元気だったのに、この結婚が彼を消耗させたのかもしれない。

私はすぐに切り出した。

「もう話すことはない。財産は半分ずつにして、離婚の手続きを進めよう」

しかし、陽太は私をまじまじと見つめた。今日は青いスカートを着ているが、それは彼のためにではなく、自分自身のために着ている。

彼は苦笑いを浮かべた。

「君は昔、コーヒーを飲むと吐いたものだよ。漢方薬みたいだって……」

彼が言わなければ良かった。それを聞くたび、過去50年間の抑圧と搾取が甦る。

私は薄く笑った。

「それは君がずっと『コーヒーはまずい』と洗脳していたからだ。結婚50年、君は私を鳥籠に閉じ込め、青空の美しさや海の広さを知らないようにした。知ってはいけないと考えていたんだ。でも、結婚のおかげで私はコーヒーを飲み、海を
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