11 「島本さんに聞いたよ。 匠吾の裏切り者、約束してたのに。 許さないから」 許さないからの言葉を残して、足早に花は自分の家へ入って行った。 はっとした。 俺が先ほど『彼女に訊いてくれていいから』と言ったので花は 島本を追いかけて行き、ふたりのことを訊いたのだろう。 あの島本のことだ。 何を花に話したのやら。 どこまでも迂闊な自分に腹がたつ。 俺が花を連れて島本に説明させればよかったものを。 何かこうなったら全て島本玲子のペースに乗せられて 俺は深い穴に落ちていくような気分だった。 『花、島本に何言われたか知らないけど俺の言うことを信じてほしい。 店に行ったことはごめん。謝るから、連絡ください』 『花、連絡ください。 俺と彼女の間に疚しいことは何もない、ほんとだから信じて』 『ツーショットの画像なんて撮らせてごめん。 言い訳に聞こえるかもしれないけどあれもハプニングで 隣に座ってた男と島本が勝手に撮ったものなんだ』 寝るまでにメールを何度も送り続けたが花からの返信はなかった。 胸が痛い。 どうか……花が明日は話を聞いてくれますように! ◇ ◇ ◇ ◇ちょうど花壇の手入れをしようと母親の花乃子が玄関口に 出ようとしていたところ、娘の花が血相を変えて家の中に入ってきて そのまま自分の部屋に向かったので、花乃子は気になり 花の部屋のドアをノックした。
Last Updated : 2025-03-10 Read more