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◇あざとい行為

Author: 設樂理沙
last update Last Updated: 2025-03-10 14:49:13

13

 今日こそはちゃんと話をして花を何とか宥めようと、そんな算段をして

匠吾は出勤したというのに花は出勤してこなかった。

 総務の課長に理由を聞いてみると……。

「ああ、掛居さんね、体調不良で2~3日休むことになったよ」

「そうなんですか」

 昨日の今日で花が休みってことは俺のせいだよなぁ……。

 行き違いだけは、俺の気持ちだけはなんとしてでも聞いてもらわないと。

 昼の休憩時になり席を立とうとした時、島本玲子が俺の側までやって来た。

「土曜は楽しかったですね。

 あ、そうそう、これ向阪さんのじゃないですか。

 お店で落としてましたよー」

と周囲に対してデートしましたよねを主張しまくりの、とどめが

俺のハンカチ登場だった。

 俺が手洗いに席を立った時にでもカバンから抜かれてたのだろう。

 この女ならあり得る。

 画像は自宅へ来るための手段、ハンカチは社内へ向けての

私たちデートした仲アナウンス。

 気持ち悪いほど一つ一つ仕掛けられていたようだ。

 俺は無言で受け取り彼女を無視して席を離れた。

 そしていつものメンツとカフェテリアへ向かった。

 好きなメニューを乗せたプレートをテーブルに置いて座った時だった。

 さっきのシーンを見ていたであろう同期の藤本が言った。

「なんか、ややこしいことになってるのか?」

「えっ?」

「いやぁ~なんかさっきの島本さんとお前の遣り取り見てたら温度差が

半端ないっていうか、お前彼女にストーカーされてない?」

「思いたくないけどそうかもしれない」

「掛居さんが出社してないのもそのせいだったりして。

 気を付けたほうがいいぞ。

 島本さんお前とのツーショット画像を土曜の夜にかなりの人数に

送ってるみたいで、送ったあとで『間違って送ってしまいました』っていう

すみませんメールまで送ってるしぃ」

 そこまでやられてるのか、俺は。

 ガックリと項垂れるしかなかった。

「掛居さんに誠心誠意謝るしかないよなぁ~」

 他人事のように……いや実際他人事だからな、他人事のように呟く

藤本の慰めの言葉を遠くで聞いた。

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    8  翌日は日曜で家《うち》で花と何か見繕ってDVD鑑賞会をする予定に なっていた。  二人で鑑賞前にコーヒーを淹れているとインターホンが鳴った。  ドアがノックされ、「匠吾、お客様よ。島本さんって方」と 母親から呼ばれる。   どうして彼女が家へ?  自分の頭が真っ白になっていくのが分かる。  昨夜の今朝で、相手は島本玲子。 繋がらないけど、繋がっているのかもしれない状況に眩暈を覚えた。  花の顔を見るとこわばっている。  何を言えばいいのか、俺は成す術もなく言葉が出ない。 とにかくと、玄関に向かう。          ◇ ◇ ◇ ◇ 「あぁ、良かった。向阪さんご在宅だったんですね。  昨日メールいただいてたので直接お願いしたほうがいいかと思って 来ちゃいました。 突然でごめんなさい。  削除依頼のメール見ました。 でも記念の画像持っていたいんですけど、駄目ですか?」  この時初めて俺は彼女の異常性に気付いた。 間の悪いことに花が部屋から出て来て俺たちの遣り取りを 聞いていたようで……震える声で島本玲子に話し掛けた。 「昨日向阪くんとどこかへ行ったんですか?」「花、悪いけど島本さんと話があるから部屋に戻ってて」 「島本さん、その消したくないという画像見せてもらえません?  私見たいです」「ええっ、いいですよ」『ちょっ、なにやってんだよ』 止めようと思って島本のスマホを奪おうとしたけど阻止できず、 島本は俺とのツーショットを花に見せてしまった。  俺は急いで島本からスマホを奪い画像を削除した。 「なんでわざわざ家なんかに……」 「あの、すみませんでした。  残念ですけど画像はあきらめますね。  じゃぁ失礼します」  そう言い残し島本玲子は帰って行った。 火種を残して。           ◇ ◇ ◇ ◇ 「匠吾、どういうことなのかな?  夜景のきれいなお店だったね。 夜デートしたんだ。  どうして?  島本さんのほうを好きになったんだね?」「ちっ、違う。  好きなのは誓って花だけだ。 彼女に明日訊いてみて、ほんとに会って問題集を渡しただけだから」「問題集?」 「正社員になるテストに備えてどんな勉強をすればいいかって訊かれてさ、 貸してあげたんだよ」 「それがどう

  • 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦   ◇ラウンジ

    7 島本玲子が指定してきた店は港の近くの『ラウンジ・スルラテ・オーシャン』というきれいな夜景の見える場所だった。  玲子は問題集を貸すと大仰に喜び隣でひとりで飲んでた男性とも仲良くなり、はしゃいで楽しい酒を飲んだ。  3人で話が盛り上がった頃「折角だから記念に海をバックに画像を撮りません?」と玲子が言い出した。  最初に玲子とその男性を俺が彼女のスマホで撮った。 「はい~次は向阪くんと私の番ね~」 と彼女が別の男にスマホを渡した。 「いや、俺はいいよ」 と言ってるうちにその男が勝手に撮ってしまった。  やばいとは思ったがこんなことで怒るのも大人げないし あとで彼女に削除するよう頼もうと思い、苦笑いでその場をやり過ごした。 「もういい時間だからぼちぼちお開きにしますか」 と声を掛けて俺はトイレへ向かった。  この時もう一人の男性は帰ったあとだった。 そして俺たちは途中で解散をし別々に帰った。           ◇ ◇ ◇ ◇  カフェバーを出て少し歩き、途中で 『飲みなおさない?』って誘ったのにあっさりと蹴って帰って行った向阪 匠吾。 『チキンめ! そんなに彼女が怖いのか!』          ◇ ◇ ◇ ◇  自宅で寝る前に気付いた。 やばい、画像の削除頼むのを忘れてた。 急いで彼女に画像を消してくれるようお願いメールを出し、その夜 俺は眠りについた。

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