Lahat ng Kabanata ng 『特別なひと』― ダーリン❦ダーリン ―❦: Kabanata 31 - Kabanata 40

79 Kabanata

◇圧力 31

31   「仕事も意欲的に取り組んでもらっていて言いにくいんだけど 辞めてもらうことになりました。できれば今すぐにでも」「どうしてですか?」 「圧力がかかりました。  あなた、誰かに恨みをかっていませんか?  普通は恨みをかっていたとしても、新しい就職先を解雇されるって ことまではないでしょうけどね。 あなたが恨みをかった相手はおそらく大物なのでしょう。 私が言えるのはこの辺《あたり》までです」  恨み、恨みといえば掛居花と向阪匠吾の仲を引き裂いたことくらいしか 思いつかない。  でも結局匠吾は私と結婚したんだよ……結局自分の不貞のせいで 離縁されてしまったけれども。 犯人は掛居花なのか?   だけど会社を辞めさせられるほどの大物だというのなら、 私が匠吾と結婚した時に邪魔するのじゃない?  結婚は阻止しなかったのに会社へは行けなくするって……なんか 変じゃない?  いくら考えても玲子には恨みをかってるという人物を特定することが できなかった。          ◇ ◇ ◇ ◇   次はバイトもせずに就職を探すだけに時間を使って過ごし、早々に 前回に負けず劣らず働き甲斐のある事務仕事を見付けた。  しかしこの時もやはり仕事についてすぐに圧力がかかり、仕事を 継続することは叶わなかった。  もう誰かの見えない力のせいでちゃんとした会社には就職できないと 落胆したものの、よくよく考えてみればコンビニでバイトしていた時には 横槍はなかったはず。  そこでしばらく就職活動を断念してバイトで食いつなごうと 玲子は自分の生活の有り方を切り替えることにした。 前回1か月余り働かせてもらったコンビニに連絡を入れると ぜひにと請われ、少し気恥ずかしくもあったが、そこは割り切って 働くことにした。  他のバイトの人とも上手く連携が取れて仕事は順調にいった。           ◇ ◇ ◇ ◇  そして半月ほどした頃、週に何度かコンビニ弁当を買って帰る男性《ひと》から玲子はメモ付きの名刺を貰う。
last updateHuling Na-update : 2025-03-19
Magbasa pa

◇風と共に去りぬ 32

32  『4月になってあなたの顔を見なくなり、寂しく思っていました。 今回職場復帰したのを知りうれしく思います。 よろしければ一度食事をご一緒していただけませんか。 連絡をいただければうれしいです』と記されていた。 どうしようか、と玲子は考えた。 これといった特徴のない男だったからだ。 就職活動はしばらく中止していたのでバイトのない時間は暇ではある。 たぶん1、2度デートしたら『さよなら』だと思うけど、ちょっと美味しいものをご馳走してもらおうという軽いノリでその田野浩司《たのこうじ》という男との食事を楽しむことにした玲子だった。 夜ごはんに行ったりドライブをしたりと思ってたよりも楽しい時間を過ごせたことでデートは2度までで終わらなかった。 何と言ってもリッチな食事が無料で食べられるのは正規雇用で就職できない玲子にとって大きな魅力だった。 そして数回デートする中で大きな収穫があった。 田野もその父親もサラリーマンだが父方の祖父が今だ健在で資産家らしいということが分かってきて、祖父亡きあと父親にその遺産がいくがもう少しすると生前贈与で孫の田野に幾ばくかのまとまったお金が贈与されることになっていると聞く。 人の良さそうな田野を見ていると結婚後も大事にしてくれそうに見える。 彼ならお給料も全部妻になった自分に管理させてくれそうな気がする。 恋人には物足りないが夫として考えると申し分のない人じゃないか。 相手は元々玲子を気に入っているのだから玲子さえその気になれば……なんのことはない、事は順調にそして素早く進んだ。 交際2か月で婚約をし、それからしばらくして入籍をと考えていた矢先に玲子にまたもや暗雲が立ち込めた。 例の圧力という名の横やりが入ったのだ。
last updateHuling Na-update : 2025-03-20
Magbasa pa

◇あっけなく振られる 33

33  田野はこう言った。「玲子ちゃんを守れなくてごめん。 両親は元より祖父から結婚するなら絶縁すると言われた。 生前贈与の話もなくなるだろう。 それでもいいっていうことなら、絶縁して俺は玲子ちゃんと結婚してもいいかなって思ってる……けど、一文無しの俺なんて玲子ちゃんヤだろ?」 田野は最初のデートではその気のなさそうな素振りだった玲子が祖父からの生前贈与の話、遺産の話など口にしてからコロリと態度を変えたことをちゃんと見抜いていた。「私たちの結婚に賛同してくださってたのに今になって反対と言うようになったのは何が原因なのかなぁ?」「玲子ちゃんが婚約者のいる男を好きになり、ないことないことを婚約者女性に嘘を吹き込んでふたりの仲を裂いたってことらしいよ」「私は嘘なんてついてない。 相手の女性のメンタルが弱すぎて婚約者と上手くいかなくなっただけのことなのに、酷いわ。 私だけを悪者にして。 今までも就職を2度も邪魔されてるの。 ね、その横槍を入れてきてるのは誰なのか分かる?  知ってるなら教えて」「今玲子ちゃんが話したメンタルの弱い女性の婚約者って向阪っていう性の人では?」「えっ、何で知ってるの?」「俺も知らずにいて、祖父と父親の話を小耳に挟んで知ったんだけど、ごめん、肝心のところは話が聞けてなくて……」「分かった、いろいろ教えてくれてありがとう。 田野さんにこれ以上迷惑かけられないから私は身をひくわ。 じゃあ、そういうことで」 玲子は田野にこれっほっちの未練も残さず、カフェから出て行った。『参ったなぁ~』   自分は絶縁してでも玲子と一緒になってもいいと清水の舞台から飛び降りる覚悟で告白したというのに、あの女はあまりにも分かりやすい態度であっさりと自分の前から去って行ったのだ。いっそ清々しいくらいの体で。 自分の後ろにあるもの(お金)で彼女の心を射止められたのかもしれないとは思っていたものの、こうもあからさまな態度を取られ未練がなくなったのはよかったかもしれない。 だが、そう思いつつもなんだかもやっと胸が痛むのを田野は止められなかった。
last updateHuling Na-update : 2025-03-21
Magbasa pa

 ◇確執のあった姉の来訪 34

34過去の確執で家を出ていた蘭子だったが、ここのところの玲子の不運続きを心配した両親から相談にのってほしいと自宅に呼び寄せられた。 二度と敷居を跨ぐまいと決めていたがふてぶてしい妹が不運と聞いて来ないわけにはいかなくなった。 妹の不幸は蜜の味……だから。 ――――花や匠吾の生きてる世界がどのようなものであるかを、    ことごとく幸せを掴もうとするたび幸せが逃げてゆく    玲子は……身近な親族で玲子の生き方を軽蔑している    姉の欄子の口からポロっと聞かされるのだった。―――――「どうして、幸せが目の前にあって掴もうとするとスルスルっと手の指の隙間からスルリと逃げていくの? 酷い、酷すぎる」 思わず結婚話が破談になり自宅に戻って来た玲子は姉の欄子がいるにも係わらず、なりふり構わず怒りに駆られて自分の感情を爆発させた。『ふふんっ』「あんたってさ、自分の損得勘定だけで生きてるピラニヤみたいな人間だから周りのことがナンも見えてないようだけど。正規雇用された会社がどれも内定を覆されて駄目になったり、プチ玉の輿に乗れそうな相手に出会って上手くいきかけてたのに途中で結婚の話がご破算になるって……どう考えても不自然よね。 どうして? とか酷すぎるっていう前に少しは頭に付いてる脳みそ使ってみればぁ~!」「何か心当たりがあるならもったいぶらないで言って。 分かるように話してよ」「あなたが最初に準社員で入社した会社は戦国時代、江戸時代から続いてる旧財閥系なのよ」「だから何? 戦後財閥なんてGHQ最高司令官マッカーサーによって解体されちゃって財産は没収され、凋落してるわよ。 旧財閥が何だっていうのよ。 ふざけんじゃないわよ」「一時的にはね。 だけど金属鉱山の創業をはじめ、金融、保険、建設業などさまざまなグループ企業を起こし、莫大な利益を上げてるのよ。 調べてみたの、掛居花という女性のことをね。 あなたはね、とんでもない相手に唾を吐いたようなものでこのままだとあなたも家族である私や両親もロクな人生が待ってないわぁ~。 憐れな末路が待つのみ」 
last updateHuling Na-update : 2025-03-24
Magbasa pa

◇世の中には敵にまわすといけない人間がいる 35

35   「とんでもないってどういう意味? 分かるように説明してよ……ってさっきから言ってるでしょ」「この世の中はね、政治家や法律家、国家権力を持つ警察官などで全てが回っているわけじゃないの。 もちろんある一定の効力はあるし、世の中を回している側面がないわけではないけれど。 こういうことは日本だけに限らずどこの国でもあるあるじゃないかしら。 大事なことは『フィクサー』といった存在が決めるのよ。 フィクサーっていうそんな闇の権力者がいるとして、掛居花さんはそのフィクサーにあたる人物の目に入れても痛くないようなとても大事にされている孫なのよ。 あなたは蜂がいる巣穴の中に腕や手をガードもせずに無防備に突っ込んだのよ。 ただじゃすまないわよ。 あなたはフィクサーである向阪財閥のお孫さんに無礼を働いたってわけ。 花さんは泣き寝入りしたかもしれないけど、後ろに付いてるおじいさまが私たちを許しはしないでしょうね。 あなたは最後のチャンスが与えられたにも係わらず棒にふるどころかさらに火に油を注ぐような真似をしたでしょ?  最悪の悪手だよね。 普通の人間なら空気を読んで謝罪をし『私たちの間に肉体関係はありません』とちゃんと誤解を解くべきところなのに、花さんが敢えて誤解して受け取るような物言いをしたのだものね」「じゃあ、今から私はどうすればいいの?」「そりゃあ決まってるでしょ。 謝罪よ、謝罪しかないわよ。 花さんにちゃんとお詫びすることね。 畳に額擦《こす》りつけてでもね」   「分かった」 性格も頭も悪い妹はそう言って自分の部屋に引き上げた。「やっぱりアイッは馬鹿だ」 だいたい姉の恋人を寝取っておいて大事な一生に係わる相談を姉である私にしてくるところがもう痛すぎるんだってばぁ~。
last updateHuling Na-update : 2025-03-25
Magbasa pa

◇横恋慕した顛末 36

36 ―― 聞くところによると、悪事を悪気なくなんなくできる妹は 今回の騒動に係わる全てをこと細かく最初の出来事から直近に至るまで 母親に話していた ――   妹の玲子は交際相手のいる男性に横恋慕してデートに誘い横取り《略奪》を目論むも相手の男性は乗り替えるつもりなどなかったようで、ほんとの飲みのデートだけで終わったようなんだけども、玲子は男を奪えなかったということに焦れて、こともあろうに横恋慕した男性の婚約者に、さも自分と男性の間には身体の関係があったかのような発言をしたようで、婚約者を心が病むほど苦しめたのだ。この辺のことは独自にちょろっと調べて知ったんだけど。 匠吾さんっていったかな、うちの悪たれ女の妹なんかと係わったせいで 結局花さんっていう婚約者との結婚は破談になり、しばらくして玲子との 結婚を決めたのよね。  私はてっきり花さんから許されなかったことで自暴自棄になり 妹と結婚したのだとばかり思ってたけど……ふふっ、そりゃあそうよね、 自分たちの未来をぶっ潰した相手を許すはずなんてあるわけない。 玲子は夫になった匠吾さんやその母親、そしてフィクサーでもある総帥からもきっちりと報復されたの。  ほんとに今更、玲子は花さんに謝罪に行くつもりかしら。 バカだから許される可能性なんて少しもない謝罪に行くのだろう。 まぁ人として謝罪は当然のことだから……しておいで。  総帥はきっとこの先も妹を許しはしないだろう。  ひょっとすると玲子がこの先また爆発暴走して愚かな行為に 及ばないとも限らない。 その時は連帯責任で両親や姉である私にもとばっちりがくるかもしれない。 私は玲子が離縁されてからの顛末をじっと息を殺して傍観してきた。 逃げるが勝ち。  国内で逃げても無駄だと踏んでる。 随分前から本格的に国外への逃亡を計画している。  できれば海外で結婚相手を見付けて永住するつもり。 姉の恋人を寝取った妹を許してやれだとかしか言わなかった両親も 妹同様にいらんっ。  みんな振り捨てて心機一転、生き延びてみせるわ。          ◇ ◇ ◇ ◇ それからほどなくして島本蘭子は信州方面の民宿で仕事を見つけたと 家族に言い置き、それっきり姿を消した。
last updateHuling Na-update : 2025-03-26
Magbasa pa

◇蘭子と玲子の確執 37

37  玲子より3才上の姉の蘭子が大学生だった頃、漠然とだが結婚も心のどこかで視野に入れていたことのある、恋人の金城信也を自宅に2度ほど招いたことがあった。 そしてそのあとのデートの帰りに「お茶でも飲んで少しゆっくりしてから帰ったら?」と誘うも、この時は「今日は止めておくよ。また今度寄せてもらうから」と彼は立ち寄らずに帰って行くというようなことがあった。『どうしたんだろう?』って少し気にはなったものの、今日はなんとなく早く帰りたい気分だったのかな、とこの時はそれがどういうことなのかよく分かっていなかった。このデート以降、彼が余所余所しくなったように感じることが多くなった。 次のデートをいつにするか決めるために今までのように「次はいつ時間空いてる?」と訊いても返事を濁すようになり『もしかして避けられてたりして』と不安に思っていたところ、ある日のこと。 * 大学の授業を終えて家に帰るとリビングダイニングに両親がいた。「あれっ? お父さん、会社は? 有給取るなんて珍しいね。お母さんとデートでもしてきた?」 両親に声を掛けたあと私が自分の部屋へ行こうとすると、父親から声を掛けられた。「蘭子、話がある……」「今すぐがいいの? ちょっと着替えてきてからでもいーい?」 2階に上がろうと部屋から出ると、玲子が私と入れ替わりにリビングダイニングに入ろうとするところで、私たちはすれ違った。『お帰りなさい』の一言もなく、どうしちゃったんだろう変な子。 そう思いながら父親から話があると言われていたので急いで着替え、リビングダイニングへと向かった。 4人掛けのテーブルセットに3人が座り、私を待っていた。 この時何か空気がおかしいって思い、私から両親に「何か改まった話なの?」と口火を切り尋ねた。 それなのに私の問い掛けに反応したのは妹の玲子だった。-「私、妊娠したかもしんない」「え~、お父さん、話って玲子の妊娠の話のことだったの?」 訊いても父親はうんともすんとも言わず、言葉を選んでいるようでなかなか言い出さない。「玲子、付き合ってた人いたんだ。 その子の父親って誰なの? 結婚するの?」
last updateHuling Na-update : 2025-03-27
Magbasa pa

◇腑に落ちた瞬間 38

38「お姉ちゃんの知ってる人だよ」「そんな人いる?」 私は誰よぉ~と頭の中で年頃の男子を思い浮かべたけれど 自分の恋人しか出てこなかった。  従兄たちを思い浮かべてもそもそも皆遠方だし、ご近所さんを探しても 付き合うような人は見当たらない。「高校か大学の友だち?」とは口にしたものの、私は妹の女友だちの 2人くらいなら見知ってるけど、男友だちがいるのかどうかも 知らないのだから……違うでしょ。  いろいろ考えて一周して私は恐ろしいことに気が付いてしまった。 両親が纏うドヨンとした空気、結婚もしていないのにあっけらかんとして 妊娠しているかもしれないと話す妹の空気感。 「お姉ちゃん、信也さんは私のだからね。 このお腹の中の子の父親は彼だから。 お姉ちゃんがどんなに頑張っても信也さんはお姉ちゃんのものには ならないの。分かった?」  自分の言いたいことだけを話すと、妹は部屋を出て行った。 あまりのことに私は頭の中が真っ白でしばらく思考停止してしまった。 何がなにやら訳が分からない。 だって信也を自宅に招いたのは2回しかなくて、どこでどうやったらあの子が妊娠するっていうの!  「まだ蘭子も若いし、それからいくらでも出会いあるわよ。  ねぇ、あなた」「そうだな、子供ができちゃったならどうにもならんしな」  ねぇ、私の親たちは何を言ってるの?  玲子を叱ることもせず私の恋人を妹に譲るのが当たり前のように 言ったりしておかしくない? しようがない?   しようがないで済ますつもりなんだ。 最近あまりデートに誘われなくなって距離が……距離感が遠くなったように感じてたんだけども、こういうことだったのね。腑に落ちた瞬間だった。「お父さん、お母さん、今の私の気持ちが分かる?  って訊いても無駄だよね。 分かってるなら絶対私にそんな発言できないよね。 一言では語りつくせない言いたいことはたくさんあるけどひと言だけ……。 玲子は勿論だけど、あなたたちには失望した。 同じ血を分けた娘なのに妹には寛容で私には随分と無慈悲なことを 言うんだね。 もしかして私って橋の下で拾われた子だったりして」
last updateHuling Na-update : 2025-03-28
Magbasa pa

◇許さない 39

39「なにバカなこと言ってるの。  ちゃんと私がお腹を痛めて産んだ子よ」 『お腹を痛めて産んだ割に私に対して母性のカケラもないような仕打ち。 一生許さないから。 いつか二人とも捨ててやる』 私は埒もないことしか話さない両親に背を向け、自室に向かった。 こんな大事なことを信也に直接問い詰めることもせず、はいそうですかと 言えるはずもない。 勿論妹からも事情聴取しないわけにはいかない。 私は2階の踊り場に佇み一呼吸置いてから玲子に声を掛け部屋に入った。 「いつそういう関係になったの?  この家で2回会っただけなのにどこをどうすれば そんな展開になるっていうの。 分かるように説明して」 「2度目に信也さんが来た日にさ、お姉ちゃんがトイレに行った時に お母さんから頼まれて2人分のコーヒーを淹れて出したことがあったの 覚えてる? その時に信也さんに『姉のことでお話したいことがあるので』って メルアドと電話番号書いたメモを渡したのよ。 それが切っ掛けだよ」 「あなたから誘惑したんだ?」「う~ん、どうだろうねー。 否定はしないけど信也さんの感触見てたら、私とお姉ちゃんと どちらでも好きな方を選べるなら断然私っていう感じはあったよ。 メールで会う約束してすぐに日を置かず会ったんたけど 信也さん私にメロメロだったもん。 やだぁ~私ね、お姉ちゃんとのこと真剣なんですか? って確認したかっただけなのにね。 なんでこうなっちゃったんだろうー。 お姉ちゃん、ごめんね。  魅力的な私のせいだよね。 平凡なお姉ちゃんにやっとできた彼氏だったのにぃ~。 彼ね、私のこと好き過ぎて会うたびにエッチしてたから そりゃあ~妊娠するよね。 信也さんったらすごいんだぁ~。  精力旺盛でぇ~」
last updateHuling Na-update : 2025-03-29
Magbasa pa

◇捨ててやる 40

40      私は妹の言い訳という名の説明を聞きながら思った。 今まで特に仲の良い姉妹でもなかったけれど、妹の口から 罪悪感など微塵もなさげに吐き出される言葉に衝撃が走り、 薄気味悪さを感じた。 メンタルが普通じゃない。 両親も妹も、皆頭おかしい。 3人とはとてもじゃないけれど建設的な話し合いなんて望めそうもないし、したとしても徒労に終わるのが目に見えてる。 この時私の胸の中に沸き上がった感情、それは『許さない』という 強い思い。 だが『許さない』という負の感情に気持ちを持っていかれるのも癪に障る ほど取るに足らないつまらないもののように思えてきて 最後に行きついた感情は『あきれた』の4文字だった。  枯れ果てるほどの涙を流したわけでもないのに心情としては すでにその境地に入っていた。  涙も枯れ果てるほど泣いたあとの呆然自失というヤツだ。「精力旺盛ってよくも平気で人の恋人寝取っておいて下品なことが 言えるものね。 お父さんたちもあんたも考えてることがちゃんちゃらおかしいわよ」 「なんとでも……負け犬の遠吠えじゃん。ご愁傷様ぁ~」  妹の吐き出した言葉のなんと酷いこと。 私はこの今回の妹の妊娠騒動まで自分の家族は普通の家族だと思って 暮らしてきたわけだけど、異常性に気付いたのが今で良かったと思った。  あと4か月と少しで、来春には大学を卒業し、内定をもらってる企業に 就職も決まっている。 自宅から通うのか独り暮らしをするのか決めかねていたけれど、今や選択肢は1つしかない。 この時蘭子は家も家族も捨てるつもりでこの家を出て行こうと腹を括った。  そしてまた信也に最後の裏付け、すなわち玲子と本当にそんなことがあったのか確認せねばならないと思うのだった。
last updateHuling Na-update : 2025-03-30
Magbasa pa
PREV
1234568
I-scan ang code para mabasa sa App
DMCA.com Protection Status