Semua Bab 情熱的なあなたに抱かれ私は甘い夢を見る~新人看護師は無敵な外科医にしつけられてます~: Bab 91 - Bab 100

116 Bab

2 君の切ない告白と、とても悲しい言葉

「手の届かない人なんて、そんなことはないよ」私は大きく首を横に振った。「藍花さんは高嶺の花ですよ。みんなの憧れだし。あなたは男女問わず、誰からも好かれてます」「や、やめて。そんなんじゃないよ」あまりにも大げさな言葉に、ものすごく恥ずかしくて顔から火が出そうだった。「藍花さんは本当に素敵な人です。側にいるだけで幸せになれる。その笑顔を見ると元気にもなれます。藍花さんは自分がどれだけ美人なのか、わかってないんです。ほんと、もったいないですよ」「そんなこと……」「人気者の藍花さんを独り占めしちゃいけないし、できるなんて思ってません。だから……このままで充分です。ただこのまま……あなたを好きでいさせてください。お願いします」直立不動で顔も強ばって、それでも、瞳を潤ませながら一生懸命想いを言葉にしてくれた。こんな私に「ただこのまま好きでいさせて」なんて……何だか胸がキュッとなった。だけど……私の気持ちは変わることはない。私は、どんなことがあっても蒼真さんが好き。その想いは揺らぐことはないんだ。歩夢君の気持ちはすごく嬉しい。でも、今、ちゃんと言わなきゃいけない。「歩夢君……。そんなこと言わないで。歩夢君のこれからの人生だよ。1度しかない大切な人生なんだから、もっとちゃんと考えてほしい。私のことを想い続けるなんて……ダメだよ、そんなこと」私は想いを必死に伝えた。「すみません、迷惑ですよね。やっぱりそうですよね……僕なんか相手にできませんよね」うつむく歩夢君。「め、迷惑とかじゃないよ。歩夢君がもし本当に私を好きになってくれたなら……やっぱり嬉しいし、有難いって思う。だけどね……」「藍花さんには、誰か他に好きな人がいるんですよね。わかってます。藍花さんみたいな素敵な人に彼氏がいないわけ、ないですから。それくらい、わかってます」悲しい顔をする歩夢君を見てはいられない。誰かの気持ちを拒否することが、こんなにも苦しいことだなんて思いもしなかった。「ごめんね。でも、ちゃんと言わなきゃダメって思うから言うね。私……私ね、好きな人がいるよ。だから……」「だ、大丈夫です!わかってます、わかってますから。もう、本当に大丈夫です」歩夢君は私の言葉を遮って、それ以上続けさせてはくれなかった。心の中が罪悪感で満たされる。歩夢君……ごめんなさい、本
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-26
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3 君の切ない告白と、とても悲しい言葉

「じゃあ、僕、帰ります。今日、藍花さんと話せて良かったです。ちゃんと自分の気持ちを伝えられたから。ずっとどうしようか悩んでたんで、本当に良かったと思ってます。明日からまた……仕事頑張りますね」歩夢君は、満面の笑みを浮かべて帰っていった。そうやって無理に笑ってくれていること、さすがの私にもわかる。上から目線かも知れないけれど、私は心の中で「好きになってあげられなくて……ごめんなさい」とつぶやいた。「ひどいですよね、そういうの」「えっ!」私の前に、突然出てきて冷たく言い放ったのは春香さんだった。心臓が止まるかと思った。「もしかして……聞いてたの?」「私も今、休憩中ですから。ここは別にあなたのためだけにあるわけじゃないですよね?」確かにそうだ。言い返す言葉がない。「全部聞いた?春香さん、私はね……」「藍花さんの好きな人は白川先生ですか?」「えっ!」「それとも七海先生?」春香さんの冷たい視線が私の胸に突き刺さる。「ごめんね。そういうの、プライベートなことだからあんまり答えたくないの」私は嫌な女だ。もし誰かに言いふらされたらどうしよう……と、春香さんを信じ切れない自分がいる。万が一、私のことで蒼真さんや七海先生に迷惑はかけられない。もちろん、歩夢君にも。「ズルいですよね。ちょっと可愛いからって手当り次第に男を惑わせて。本当に……いやらしい人」「春香さん、その言い方はさすがにひどいよ」「ひどいって……だって本当のことですよね?あなたは実際来栖さんを惑わせてる。色目を使って誘惑しておいて、平気でフッてしまうなんて」「色目なんて……使ってないよ」容赦ないトゲのある言葉に心が痛くて苦しくなる。「蓮見さん、私に来栖さんに告白しろって言いましたよね。来栖さんの気持ち知ってて、私に告白させてフラレるのを見たかったんですよね?本当に最低。信じられない性悪女」「ちょっと待って。知ってて言ったわけじゃないよ。フラレるのを見たいなんて、そんなことして楽しいわけないじゃない」私は、春香さんに、そんなことを平気でする人間だと思われているんだ。だとしたら、すごく悲しい。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-27
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4 君の切ない告白と、とても悲しい言葉

「どうだか。私は来栖さんには告白しません。フラレるの嫌ですから。あやうくあなたの罠にはまるところでした」「罠にはめるなんて、私、絶対にそんなことしないから」「あなたみたいな男たらしを好きになるなんて、来栖さんが可哀想です。その正体をバラしてやりたいです。早く誰かと結婚してさっさと看護師辞めて下さい。その方が来栖さんは幸せになれます」「春香さん……」「私、あなたの顔を見たくないので仕事に戻ります」言いたいことだけを言って、春香さんはその場を去った。靴音が消え、誰もいなくなり、全ての音が無くなった。ポツンと1人。静寂の中で、どうしようもない深い悲しみに襲われる。どうしてそんなひどいことが言えるのか……?看護師を辞めろなどと、なぜ春香さんに言われなければならないのか?私は、悔しくてつらくて、両手のこぶしを握りしめながら泣いた。冷たい雫がどんどん頬をつたって落ちていく。ほんのしばらく、私は人を責める気持ちに支配された。「……ダメ。こんなことで泣いてちゃ……ダメだよ」私は、自分の心に言い聞かせ、冷静になれるよう数回深呼吸した。無理をして口角を上げ笑顔を作る。脳に、「私は大丈夫、元気だから」と錯覚させるために。今、春香さんに腹を立てても仕方がない。私にはまだ大切な仕事が待っているんだから。患者さんのために、私ができることは「笑顔」で励ますこと。私にはそれしかできないから――その時、頭の中に蒼真さんが浮かんだ。私を優しく抱きしめて微笑む姿。一気に気持ちが晴れていく……そうか……春香さんは、歩夢君を好き過ぎてあんなことを言ってるだけなんだ。きっとそうだ。もし白川先生が私以外の誰かを好きだと聞いてしまったら……私も、春香さんと同じように苦しくなるに違いない。誰かにヤキモチを妬いて、憎んでしまうかも知れない。いや、それだけでは済まない、私はきっと……闇の中に閉じ込められてしまう。気持ちが自分で上手くコントロールできなくて、時々おかしくなることだって……好きな人を想うとは、そのくらい大変なことだ。今、私が蒼真さんを好きな気持ちを考えれば、春香さんの心情もわかるはずなのに、ついカーッとなってしまった自分が恥ずかしい。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-27
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5 君の切ない告白と、とても悲しい言葉

確かに私に対する発言はキツ過ぎる。今の春香さんには言葉を選ぶ余裕がなかったのだから仕方がない……とはいえ、やはりまだ胸が痛む。この感覚を表現するのはとても難しいし、今まで味わったことがない。私も、本当なら春香さんの気持ちを理解してあげたいけれど、まだ自分がそれほど強くないことも、残念ながら同時に実感していた。今夜の告白……歩夢君の気持ちを受け入れられないことはとても申し訳ないと思う。歩夢君に対して私はどうすればいいのだろうか?わからない……私にはわかるはずがない。今はただ、与えられた目の前の仕事をしっかり頑張るしかない。きっと、それしか……ないと思う。とにかく、自分ができることを一生懸命頑張っていたら、いろいろなことが良い方向に動いていくような気がするから。大丈夫。絶対、みんな大丈夫――いつか歩夢君も素敵な人を見つけて必ず幸せになれる。七海先生にも、私の気持ち、ちゃんと言わなければいけない。先生にも、幸せになってもらわないと困るから。2人とも、私にはとても大切で、特別な人達。だから、ずっとずっと笑顔でいてほしい。いつだって笑っててほしいんだ。勝手だけれど、そう願わずにはいられなかった。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-28
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1 本当のさよなら

あれからしばらくして七海先生は病院を去った。そのせいで産婦人科の看護師達は少しモチベーションが下がってしまった気がする。それだけ先生は素晴らしい人格者だったから。でも、新しく配属になった先生も腕の良い女医さんで、みんなで新しい命のため、患者さんのために一致団結してスタートしていた。私も、気持ちを新たにして頑張る決意をした。仕事に関してはそう思えていたけれど、プライベートのことはまだ解決できていなかった。早く七海先生に返事をしないと――結局、お互い忙しく、約束の1週間はとっくに過ぎてしまっていた。明日は私が休みで時間が取れることもあり、勇気を出して自分から七海先生に連絡してみた。先生はこの前の返事をしたいという言葉を受け入れて、快く会うことを承諾してくれた。何だか、今からとても緊張する。あの時、七海先生は精一杯告白してくれた。だからこそ、私も誠意を持って本当の気持ちを伝えたい。七海先生に会うことは、もちろん蒼真さんにも了解を得た。『2人きりで会うことには抵抗があるけれど、藍花の気持ちをちゃんと七海先生に伝えてほしい』と言われた。そして……次の日の夜、私は七海先生に久しぶりに会った。「こんばんは」先生は、今日はグレーのスーツ姿だった。とてもスタイルが良くて、タイトめのスーツが良く似合っていて素敵だ。そんな眼鏡の超イケメンを、周りの女性達が気にしていないわけがなかった。「あの人、めちゃくちゃカッコ良いんだけど」「うわぁ、色気あり過ぎ、ヤバい」聞こえるように言う女性達は、みんな美人揃いだ。どこにいても目を引くその容姿は、蒼真さんもだけれど、華があり過ぎる。本人は言われ慣れているのだろうか、まるで眼中に無いみたいに振舞っていた。「こんばんは。藍花ちゃん、来てくれてありがとう。会えて嬉しいよ」「こんな素敵なところに誘っていただいて嬉しいです」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-29
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2 本当のさよなら

グレースホテル東京――要人も利用する世界的に有名な最高級ホテル。待ち合わせの場所を聞いて少しはオシャレをしてきたつもりだけれど、これでは七海先生と全然釣り合わない。見た目の違いに恥ずかしさを感じながらも、このホテルには1度来てみたかったから、宿泊は無理でも、ラウンジでお茶を飲めるだけで満足だった。「藍花ちゃんにそう言ってもらえて良かった。僕はここのホテルがとても好きでね。子どもの頃からよく利用してるんだ」子どもの頃からよく……やはり七海先生もとんでもないお金持ちだ。こんな一流ホテルを何度も利用できるなど、生活レベルがあまりにも違い過ぎて驚く。本当にうらやましい限りだ。「私は七海先生とは違って初めてで……。だから、先生からここで待ち合わせと聞いて、かなりテンションが上がってしまいました」幼稚なカミングアウトをしている自分が恥ずかしい。「そうだったんだね。それを聞いて安心したよ。待ち合わせ場所、どこが良いのかずいぶん悩んだんだ。僕はここのホテルに来るとホッとするから……だから、ぜひ藍花ちゃんにも良さを知ってもらえたと思って。格式高いホテルだけど、飾らずにとても温かく迎えてくれるんだよ」「そうなんですね。本当に、先生のおかげでこんな素敵なホテルに来ることができて嬉しいです。ありがとうございます」「いらっしゃいませ、七海様」えっ、だ、誰?!私は、突然現れた謎の超イケメンに目を疑った。「こんばんは。深月(みつき)総支配人」総支配人さん……?こんなにカッコ良いホテルマンは今まで見たことがない。「蓮見様も、よくいらして下さいました。七海様から伺っております」「えっ、あっ、はじめまして。とても素敵なホテルですね。さっきからずっと感動しています」「お褒めいただきありがとうございます。どうぞごゆっくりお過ごし下さい」「あっ、はい。ありがとうございます」「七海様。最近は少しご多忙なようですね」総支配人さんは、七海先生に話しかけた。この2人のツーショットはかなり目を引く。「はい。最近、父の病院で働くことになって、まだまだ全然慣れなくて……今は毎日必死です」七海先生は苦笑いした。「お父様も先日いらして下さりお聞きしました。七海様と一緒に仕事ができると大変喜んでおられましたよ。私もいつかは父と……とは思っていますが」スラッと背が高く、
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-29
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3 本当のさよなら

「私はまだまだこれからですよ。深月総支配人はもうご立派です。いつもアドバイスをいただいて感謝しています」「こちらこそ七海様には感謝しております」そう言ってから、総支配人さんは私を見た。その美しい顔立ちには女性である私でさえドキッとする。「では、蓮見様。これで失礼致します」「あっ、はい。お声がけをいただいてありがとうございました」「七海様から『明日は大切な人と伺います』とお聞きしておりましたから。本日はお会いできて光栄でした」「た、大切な人……?」七海先生はそんな紹介の仕方をしたのか?まさかこんな私を彼女や結婚相手と間違えることはないと思うけれど……「七海様の大切な方なら私どもにとっても大切なお客様です。またいつでもグレースホテル東京にお越し下さい。お待ちしております」総支配人さんの笑顔が眩し過ぎて照れてしまう。すぐ近くに超ド級のイケメンが2人もいて、その間に挟まれている私はいったい何者なのかわからなくなる。どちらからも良い匂いがするうえに、モデルみたいにキラキラ輝いてる人達と一緒にいるこの状況には全く現実味を感じられない。「あっ、はい、すみません。お気遣いありがとうございます」確かに、昔から憧れていたこのホテルにはまた来たいと思う。だけど……これから先、七海先生と一緒に来ることは二度とないんだ。大切な人だと紹介してくれた先生の想いを考えると、急に胸が苦しくなった。私達は総支配人と別れ、ラウンジに向かった。静かな時間が流れる素敵な空間の奥の席に座り、飲み物を注文する。数分して、七海先生の前にはブラックのコーヒーが運ばれ、私は気持ちを落ち着かせるために温かい紅茶を選んだ。上品で可愛いカップに口をつけ、ゆっくりと1口。とても美味しくて癒された……のもつかの間、なぜか少しの沈黙に気まずい空気が流れた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-29
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4 本当のさよなら

私達は嫌な静けさをかき消そうと、全く同じタイミングで声を発した。思わず見つめ合い、苦笑いする。「すみません、先生からどうぞ」「あ、ああ。ごめん、じゃあ……藍花ちゃん、体調は大丈夫?元気かな?」まずは私の体を心配してくれる七海先生。こういうところは相変わらず優しくて紳士的だ。「ありがとうございます。いつもと変わらず元気にしてます」「そっか、それなら良かった。安心したよ」七海先生は、ホッとしたように一息吐いてから微笑んだ。その顔を見たら、本当に心配してくれていたんだとわかった。「七海先生がいなくなって、病院のみんな寂しがってますよ。患者さん達も『七海先生はいないのか?』って。みんなで先生の存在の大きさを改めて感じてます。それでも産婦人科の看護師さん達は、新しい先生と一緒に毎日頑張ってますよ」「有難いね、僕のことを覚えていてくれて。でも、あの先生は素晴らしい人だから。僕も父も以前から良く知っててね。今回は彼女を是非にと松下院長に紹介させてもらったんだ。腕は確かだし、志も熱いしね」「そうだったんですね。本当にすごく前向きで良い先生だってお聞きしました。またいろいろお話ししてみたいです」「彼女、喜ぶよ。藍花ちゃんみたいな可愛い人が話しかけてくれたら。きっと勉強になると思うし、機会があれば本当に話しかけてあげて」七海先生は、さっきからずっと私だけを見つめて微笑んでくれている。少し離れたテーブルに座っている若い綺麗な女性達がずっと先生のことを見ているのに、熱い視線は気にならないのだろうか?他のテーブルにいる女性だって、チラチラこちらを見ているのに、視線を向けようともしない。きっと、気配は感じているはずなのに。普通の男性なら女性に見つめられたら嫌な気はしないと思う。でも、七海先生はずっと私だけを見てくれている。全く目を逸らさずに、にこやかに。「あの……七海先生」優しい眼差しの先生に、今から言うことはとても残酷なことかも知れない。それでも私は、今、このタイミングで切り出さなければならないと思った。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-30
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5 本当のさよなら

「うん」何かを覚悟したような返事、少し顔が強ばったような気がした。私の中に緊張が走る。「七海先生に、この前のお返事をさせていただきたいと思っています」「……だよね。でも不思議だね、藍花ちゃんの返事を待っていたはずなのに、今はあまり聞きたくないと思ってる。そう思うのは何故かな……」「先生……」「ごめん。大丈夫。聞かせてくれるかな?」自分に言い聞かせるような言葉に、申し訳ない気持ちが溢れる。「あの、私……。七海先生から告白してもらった時は、本当に自分の気持ちがわからなくて迷っていました。でも、それから、すぐに自分の気持ちがわかった……というか、素直になれたというか……」何を言ってるのか、ドキドキし過ぎてよくわからない。でも、大丈夫、キチンと伝えなければ……私自身も自分に言い聞かせ、話を続けた。「あの、私……」上手く言おうとして言葉がもつれる。私は急いで呼吸を整えようとした。「藍花ちゃん、大丈夫だよ。ゆっくりでいいから。落ち着いて」きっと顔が引きつっているだろう。こんな素敵な場所で、みっともない姿を晒しているかも知れないと思うと情けない。私は、意を決して、七海先生を見つめた。「すみません。私……他に好きな人がいます」それだけ言って目をギュッと閉じる。七海先生の顔が……見れない。膝の上でギュッと手を握りしめ、体中に力が入った時、私の頭の上に大きな手のひらが触れた。「えっ……」ハッとして目を開ける。すぐ近くに先生の顔がある。すごく穏やかで優しくて、魅力的な笑顔が。その瞬間、胸がキュンとして泣きたくなった。「それは白川先生だね」七海先生に名前を先に出されて、言葉が出てこなくなる。「今、藍花ちゃんの顔を見て確信したよ。君は、本当に……白川先生が好きなんだって」「先生……」「彼はやっぱりモテるね。大学時代と変わらない。うらやましいよ」「……」「2人はもう付き合ってるのかな?」「……はい」そう言った瞬間、先生は眼鏡の奥の瞳をゆっくりと閉じた。「……そっか、わかった。なら、僕は藍花ちゃんにフラれたってことだね」「……」いったいどういう風に答えればいいのだろうか?「覚悟してたよ。ちゃんと覚悟は決めてたんだ。でもやっぱり……つらいんだね、大好きな人にフラれるのって。初めてだよ、こんなに胸が苦しいのは。君には他
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-03-31
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6 本当のさよなら

七海先生の優しい笑みが少しずつ消えていく。こんな悲しい表情にさせている自分に罪悪感が生まれた。「先生……すみません、本当に。七海先生のこと、私は心から尊敬しています。先生に優しくしてもらったことは、ずっと忘れません」七海先生は、私の人生の中でとても大切で貴重な時間を一緒に過ごした人。たとえそれがどんなに短い間だったとしても、絶対に忘れたくなかった。「ありがとう……。人として医師として尊敬してもらえるなら……それもまた嬉しいね。今まで頑張ってきてよかったよ」「先生はとても素敵な人です。私なんかよりもっと良い女性が必ず見つかります。それに……お見合い相手の方は……」聞いていいのか迷ったけれど、私は口にしてしまった。「彼女はもちろんお断りしたよ。好きな人がいるからって。それでもまだ会いたいって言ってくれてるんだけどね……」「もう会わないつもりなんですか?」「そうだね。会うつもりはないよ。君を想ってるのに他の女性に会うのは失礼だと思うから」そんな……その人は七海先生が好きで好きでたまらないのに……「私のことがあってストップがかかってるとしたら、とても悲しいです。ご両親も認めておられるような女性なら、きっと素晴らしい人なんですよね。七海先生もその人のこと……嫌いじゃないんですよね?」あまりにもプライベートにズケズケと踏み込んでいる自分。止めるべきなのかも知れないけれど、七海先生を思うと聞かずにはいられなかった。「彼女は確かに素晴らしい女性だと思うよ。僕にはもったいないくらいにね。でも、それでも……僕の心の中には藍花ちゃんがいるから。その状態で彼女には会えない」「じゃ、じゃあ、ハッキリ言います。私のことは、わ、忘れて下さい。私には……心から大切な人がいますから。私が七海先生を好きになることは……あ、ありません。だから……」胸が潰れそうに痛い。涙が溢れそうになるのを必死でこらえた。「……藍花ちゃん」「お願いします。その人の気持ちをちゃんと受け止めて、考えてあげてもらえませんか?必死で七海先生を想っている気持ち、私にはよくわかります。七海先生がその人を嫌いでないのなら……。すごく、すごく偉そうですけど……でも、私は……」「ごめん」「えっ……」「それ以上は言わないでくれないか」七海先生のこんな暗い表情と声のトーン、いつもの先生ではない。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-04-01
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