「手の届かない人なんて、そんなことはないよ」私は大きく首を横に振った。「藍花さんは高嶺の花ですよ。みんなの憧れだし。あなたは男女問わず、誰からも好かれてます」「や、やめて。そんなんじゃないよ」あまりにも大げさな言葉に、ものすごく恥ずかしくて顔から火が出そうだった。「藍花さんは本当に素敵な人です。側にいるだけで幸せになれる。その笑顔を見ると元気にもなれます。藍花さんは自分がどれだけ美人なのか、わかってないんです。ほんと、もったいないですよ」「そんなこと……」「人気者の藍花さんを独り占めしちゃいけないし、できるなんて思ってません。だから……このままで充分です。ただこのまま……あなたを好きでいさせてください。お願いします」直立不動で顔も強ばって、それでも、瞳を潤ませながら一生懸命想いを言葉にしてくれた。こんな私に「ただこのまま好きでいさせて」なんて……何だか胸がキュッとなった。だけど……私の気持ちは変わることはない。私は、どんなことがあっても蒼真さんが好き。その想いは揺らぐことはないんだ。歩夢君の気持ちはすごく嬉しい。でも、今、ちゃんと言わなきゃいけない。「歩夢君……。そんなこと言わないで。歩夢君のこれからの人生だよ。1度しかない大切な人生なんだから、もっとちゃんと考えてほしい。私のことを想い続けるなんて……ダメだよ、そんなこと」私は想いを必死に伝えた。「すみません、迷惑ですよね。やっぱりそうですよね……僕なんか相手にできませんよね」うつむく歩夢君。「め、迷惑とかじゃないよ。歩夢君がもし本当に私を好きになってくれたなら……やっぱり嬉しいし、有難いって思う。だけどね……」「藍花さんには、誰か他に好きな人がいるんですよね。わかってます。藍花さんみたいな素敵な人に彼氏がいないわけ、ないですから。それくらい、わかってます」悲しい顔をする歩夢君を見てはいられない。誰かの気持ちを拒否することが、こんなにも苦しいことだなんて思いもしなかった。「ごめんね。でも、ちゃんと言わなきゃダメって思うから言うね。私……私ね、好きな人がいるよ。だから……」「だ、大丈夫です!わかってます、わかってますから。もう、本当に大丈夫です」歩夢君は私の言葉を遮って、それ以上続けさせてはくれなかった。心の中が罪悪感で満たされる。歩夢君……ごめんなさい、本
Terakhir Diperbarui : 2025-03-26 Baca selengkapnya