All Chapters of 情熱的なあなたに抱かれ私は甘い夢を見る~新人看護師は無敵な外科医にしつけられてます~: Chapter 101 - Chapter 110

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7 本当のさよなら

「先生……」「ごめんね。君につらい思いをさせて。君は何も悪くないのに」「私、七海先生には本当に幸せになってほしいです。素敵なお相手と結婚して温かいご家庭を作って……だって七海先生は、こんなに立派でカッコよくて、優しくて仕事もできて、それから……」「ありがとう。もう十分だよ。恥ずかしいから、そんなに言われると」先生は、ほんの少しだけ……照れたように笑った。「嘘じゃないです。本当に、先生は素敵ですから」「……だけどね。僕は……白川先生に負けたんだ」「えっ」心臓が掴まれるくらいドキッとした。何とも言えず妖艶で……妖しげなその表情に。この人から溢れ出る男の色気は、白川先生でも敵わない。ただ、七海先生のセリフは、私の心に重くのしかかった。「……なんて、ちょっとイヤミっぽかったね。ごめんごめん」私は、首を横に振った。「僕は……やっぱりどうしようもなく藍花ちゃんが好きだよ。君と温かい家庭を築きたかった。それに……君との子どもも……欲しいと思っていたんだ」七海先生と私の子ども――嬉しい言葉ではあったけれど、今の私にはそれを想像することはできなかった。「子どもは宝物だからね。たくさんの人達がそう言ってるのを聞いてきた。産まれてくる赤ちゃんを抱きしめるお母さんの顔は、みんな幸せに満ちている。毎回、感動的で素晴らしい場面に立ち会えて僕は幸せだよ。だからね、いつしかそういうのに憧れて、藍花ちゃんと家族になれたらいいなって……思ってしまったんだ」新しい命の誕生に立ち会うことは、本当に尊い。それは私にも想像ができる。「七海先生の気持ちはとても嬉しいです。私との未来を描いて下さって……。でも、本当にすみません」私は先生の憧れを壊してしまった……その思いに対しての申し訳なさが心を濁す。「いいんだ。白川先生は無敵なんだから、僕は彼には敵わない。昔からずっとそうだった、今に始まったことじゃないよ。誰も白川先生には勝てないんだ。僕にも、あの人みたいな魅力がほんの少しでもあれば……」「何を言うんですか!七海先生も素敵じゃないですか!魅力的ですよ、すごく。白川先生とは違う魅力ですけど、でも、どっちも素敵だし、どっちが上とか、どっちが勝ちとか、そんなのはないんです」先生も首を横に振った。
last updateLast Updated : 2025-04-02
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8 本当のさよなら

「ありがとう。藍花ちゃんに慰めてもらえて嬉しいけど、僕にはやっぱり……男性としての魅力が足りないんだよ。それは充分わかってるんだ」「七海先生。私は……確かに白川先生を好きになってしまいましたけど、七海先生にだって恐ろしい程の魅力があります!それは私が500%保証します!いえ、1000%です」私はどうしてこんなにも力説してるのだろうか?熱くなっている自分が恥ずかしい。「……1000%?そんなに」「はい!」「藍花ちゃんに言われたら自信になるよ」七海先生は笑っている。私に呆れているのかも知れないけれど、その顔を見たら少しだけホッとした。「本当に自信持って下さいね。先生みたいなスーパーイケメンはなかなかいないんですから」そう、それは本当のこと。「ありがとう、藍花ちゃんは優しいね。やっぱり君はすごく素敵な女性だよ。僕は、君を好きになって本当に良かったと思ってる。とにかく……白川先生と幸せになって。彼なら大丈夫だよ、必ず君を幸せにしてくれる。まあ、そんなこと、僕が心配しなくても大丈夫か」七海先生は冷めたコーヒーに口をつけた。「……いえ、心配して下さってありがとうございます。いろいろあって、今は私も心から幸せになりたいって思ってます。だから先生も……必ず幸せになって下さい。それが私の心からの願いです」「うん、そうだね。ありがとう、藍花ちゃん」先生はほほ笑みを浮かべながら、小さくうなづいた。「今日は本当にありがとうございました。お会いできて、いろいろ話せて良かったです。お忙しいのにお時間を作っていただいてすみませんでした」「とんでもないよ。また……会えるといいね。藍花ちゃん、体に気をつけて、あまり無理をしないようにね。藍花ちゃんは頑張り屋さんだから」「七海先生こそ無理なさらないでくださいね。産婦人科の先生は、いつ出産になるかわからないから本当に大変ですもんね。1日中気が張ってると思いますから、ちゃんとリラックスもして下さいね」「気遣いありがとう。まあ、確かに大変だけどね、うん、大丈夫。僕はいつでもこんなに元気だから」七海先生は、きっと私を安心させようとしてくれている。本当に、どこまで優しいのだろう。「本当に……すごく感謝しています。どうか、いつまでもお元気でいて下さい」私は、敬意を込めて深く頭を下げた。
last updateLast Updated : 2025-04-03
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9 本当のさよなら

「元気でいないとね。でも、君と次に会えた時にはもっともっと腕の良い産婦人科医になっていたいから、つい頑張ってしまうかも知れないな」七海先生はまた、ニコッと微笑んだ。その笑顔があまりにも眩し過ぎて、私は、七海先生のことを絶対に忘れたくないと思った。「ダメですよ。無理は禁物です」「はいはい、わかったよ。君は本当にいい奥さんになるね。僕は、君を忘れない。ずっとずっと一生忘れないよ。藍花ちゃんは、僕の全てをかけて愛した女性だからね。たとえ、僕が誰かと結婚したとしても、君との思い出は決して消えることはないから。じゃあ、ここで……」先生はそう言って椅子から立ち上がった。胸が熱くなるセリフに心から感謝が溢れた。誰か素敵な女性と結婚して幸せになってもらえたら……私はそれが一番嬉しい。「先生、お元気で」「藍花ちゃんも元気でね。またね」「はい、また……。本当にありがとうございます」「ありがとう」私達は笑顔で手を振って別れた。これで、本当に最後かも知れない……七海先生、素敵な思い出をありがとうございました。私は、心の中でもう一度お礼を言って、先生と本当のさよならをした。グレースホテル東京を出た瞬間、ふと見上げた空は、まるで七海先生の新しい人生の出発を見守るかのように、とても爽やかに晴れ渡ったっていた。
last updateLast Updated : 2025-04-04
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1 もうひとつの別れ

「ありがとうございました」その言葉だけを置いて、春香さんはナースステーションを去った。七海先生に続いて春香さんまで……しかもあまりに突然で驚いた。私は、帰ろうとしていた春香さんを追いかけた。少し話したいと言うと嫌な顔をされたけれど、結局、中庭で話すことになった。「ごめんなさい。無理やり引き止めて」今日で最後だと思うとどうしても聞いておきたかった。春香さんが辞める理由を――「いったい何ですか?あなたと話すことなんて何もないです」冷たい表情に一瞬心が揺らぐ。「は、春香さん、看護師辞めてこれからどうするの?この仕事、好きな仕事だったんじゃ……」「あなたには関係ないです。もう、はっきり言います。私はこの病院にいたくないんです。あなたのいるこの病院に」胸に何かがグサッと刺さったような気がした。「春香さん……私のせいで辞めちゃうの?」そうなら、本当に悲しすぎる。「はい。これ以上、あなたの顔を見たくないですから。それに……来栖さんの顔も……」「歩夢君のことも?」「すごくつらいです。あなたを好きな来栖さんを見てるのが」「……」「来栖さんはあなたのことを好きなのに、あなたは違う人が好きで。それなのに、あなたに微笑みかけてる来栖さんを見たら……私はとても苦しくなります。これ以上ここにいて、仕事に支障が出て迷惑かけるのも嫌なんです」「春香さん……ごめん……なさい」つらそうな春香さんの顔を見ていたら、なぜだか涙が出てきた。「えっ……。どうして泣くんですか?」春香さんは、私の突然の涙にびっくりしたようだった。「ごめん。私、春香さんの気持ち、今なら少しわかるよ。つらいと思う……好きな人が別の人を見てるのって。私もやっと本当に好きな人ができて、その人がもし……って考えたらやっぱり悲しいから」「……」「春香さんが歩夢君を想う気持ちが深いのはわかる。だからこそ私が許せないんだよね。でもね、私にはこの状況をどうすることもできない。私には好きな人がいて、歩夢君のことは仲間だと思ってる。ただそれだけなの。私はこの仕事が好き。だから春香さんが辞めてしまうのは……すごく残念だよ」
last updateLast Updated : 2025-04-05
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2 もうひとつの別れ

「あなたにそんな風に言われるなんて思ってなかった……。私は、今までずっと誰にも相手にされずに生きてきました。でも来栖さんは違って、こんな私に笑いかけてくれたんです。気づいたら、私、来栖さんのことを……。初めて人を好きになったんです。大好きなんです、歩夢君のことが。でも恋愛なんてしたことがないから、どうしたらいいのか全然わからなくて……」春香さん、今、歩夢君って……本当はそう呼びたかったんだ……「歩夢君の笑顔、素敵だもんね。あんなに優しく笑える人、他にいないよね」春香さんはうなづいた。「私は全然ダメだから、歩夢君に振り向いてもらえない。フラれるに決まってる……そう思うと何だか悲しくなって。いつしか蓮見さんに対してイライラして……あなたにあたってしまってました」言葉のトーンが明らかに今までとは違って穏やかになっている。それが何だかとても嬉しく感じた。「春香さんは全然ダメなんかじゃないよ」「えっ?」「自分に自信がないのは私だって同じなんだから」「は、蓮見さんが!?う、嘘でしょ?みんなから好かれているあなたがどうして?」春香さんはものすごく驚いた顔をしている。私が自分に自信のある人間だと本気で思っていたようだ。「本当だよ。ずっとずっと昔から自信がなくて苦しかった。どうしてって聞かれても理由とか理屈とかじゃなくて、そうだから仕方ないんだよね。でもね、やっと好きな人ができて、今はほんの少しだけ前向きになれたし、その人を信じようと思えてるの」「蓮見さんみたいに可愛い人が自信がないなんて……信じられない」「可愛いくないよ、別に。私もずっと上手く恋愛できなくて悩んでたから」「やっぱり信じられない。もし私が蓮見さんみたいに可愛いかったら、絶対に自信持つと思う。ねえ、蓮見さん。私なんかがこれから少しでも前向きに変われるのかな?」春香さんの言葉は、いつの間にか敬語ではなくなっていた。なんかいいな、こういうの……心が自然に温かくなる。「大丈夫、もちろん変われるよ」「ほんとに?」前のめりに私に訊ねる春香さんがとても可愛く思えた。「でもね、笑顔を忘れないで。春香さん、絶対ニコニコしてた方が可愛いから。誰かを好きになったら……笑ってて。そしたら自然に優しい気持ちになれるよ。きっと、春香さんらしく輝けるから。イライラなんかしてたらもったいないよ」
last updateLast Updated : 2025-04-06
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3 もうひとつの別れ

「蓮見さん……あなたって本当にお人好し」そう言って春香さんは笑った。「素敵だよ、その笑顔。春香さんには笑顔が良く似合う。本当に可愛い」目を細めて微笑む春香さんを見て心からそう思った。「蓮見さん。私、別の病院で看護師続けるから」「えっ」「本当は全て投げ出して逃げたいって思ったけど……。確かに私の輝ける場所は看護師しかないから。患者さんのために何かしたい。あなたに言われて……気持ちが変わった」「本当?だとしたらすごく嬉しいよ。絶対に看護師を続けてほしい」こんな短い時間で気持ちを変えてくれたなら、勇気を出して話しかけて良かったと思えた。すごくホッとして、安心した。「恋なんか、しばらくはしたくない。どこか自分を働かせてくれる病院を見つけて、看護師として絶対に患者さんのために頑張る」その顔は、さっきまでとは違って覇気のある表情に変わっていた。「うん、春香さんなら大丈夫。その笑顔があれば絶対大丈夫だから。新しい病院で頑張ってね。私、ずっとずっと応援してるから」それに、今の春香さんなら、きっと新しい恋だってできる。いつか必ず素敵な人と出会えるに違いない。「……ありがとう。ねえ、蓮見さん」突然、改まった顔で私を見た。「何?どうかした?」私が聞くと、春香さんは下を向いてしまった。「どうしたの?大丈夫?」「あ、あの、この前、蓮見さんが足に怪我したの……あれ、私の責任だから」春香さんから急に笑顔が消えて、真剣な表情に変わった。「……ううん、それは違うよ。あの時はね、私の不注意だったんだ。私がフワフワしてて、仕事に集中してなかったから。私が悪いの、だから気にしないで」私はニコッと微笑んだ。気にしてくれていただけで十分だ。「私……すごく意地悪だったと思う。突然声をかけてしまったから蓮見さんがびっくりして。それなのに私は……」「だから違うって。もう足も全然治ってるしね」「本当に?ちゃんと治ってるの?」「本当だよ。もう痛くないよ」「あの時は……痛かったと思う」「……白川先生にね、落としたのが患者さんの足だったらどうするんだって言われてハッとしたよ。本当に私で良かったよ。それに…他に良かったこともあったから」そう、あの怪我のおかげで私は……蒼真さんとの距離が嘘みたいに近づいたんだ。
last updateLast Updated : 2025-04-08
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4 もうひとつの別れ

「ごめんなさい。本当に……」頭を深く下げる春香さん。「ありがとうね、そんな風に言ってくれて。でも、自分の責任だから本当に気にしないで」「……あ、ありがとう。私……今日、蓮見さんと話せて良かった。じゃあ、行くね。また……会えるかな?」「うん、必ず会おうね。寂しいけど、元気でね」「白川先生と、お幸せにね」「えっ!?」「恋愛経験が無い私でもさすがに見てればわかるから」春香さんにも、七海先生にも当てられてしまったということは、自然に顔に出てしまっているのだろうか?気づかないうちにニヤけていたのかも知れない。だとしたら、かなり恥ずかしい。「う、うん。ありがとう」春香さんは、ほんの少しだけ手を振って、そのまま去っていった。「あんなに笑顔が素敵な人だったんだ。だから、これから先は大丈夫だよね」春香さんは、これから先の人生、きっと自分らしく前向きに生きていける。背中を見送る私の心は、嬉しさと安心したせいか、ポカポカして温かくなった。ナースステーションに戻ると、歩夢君がいた。「どこに行ってたんですか?」「あ、うん。春香さんと話してた」「そうなんですか……。春香さんが辞めてしまうなんて、寂しいですよね。七海先生もいないし……」「うん。寂しいよね。でも、春香さんはきっとまたどこかで看護師を続けると思うし、元気に頑張ってほしいよね」「はい。本当にそう思います。春香さん、看護師として今まで頑張ってたから……」歩夢君のこの言葉。春香さんが聞いたら嬉しいだろう。「まだまだこれからだよね。春香さんも、そして私達も。患者さんのためにしっかり頑張らなきゃ」「頑張ります!あっ、あの、藍花さん。今日、仕事終わってから少し話せますか?」「えっ、あ、うん。大丈夫だけど……どうしたの?」「藍花さんと2人でちゃんと話すのは今日が最後です。あっ、もちろん僕まで病院を辞めるわけじゃないですよ。ただ……改まって話すのは最後……ってことです」「……うん。わかった。実は私も話したいことがあるの」「そ、そうなんですか……。わかりました。話しましょう」蒼真さんとのこと、ちゃんと言わないと……***そして、夜になり、私は歩夢君と2人、病院を出て駅に向かってゆっくりと歩いた。「ごめんね、歩きながらで……」「いえ、突然僕が声をかけてしまったので、すみません」歩夢君
last updateLast Updated : 2025-04-09
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5 もうひとつの別れ

「藍花さん」「ん?」「……やっぱり僕、あなたのこと……」「……」「ずっと考えてしまいます」歩夢君は、小さな声でそう言った。「……」そう言われて、言葉が上手く続けられない。「でも、藍花さんには好きな人がいるから……僕達は恋人にはなれないんですよね」「歩夢君、ごめん……」「いやだな~。僕は藍花さんの笑った顔が好きなんです。そんなしんみりした顔しないで下さい。好きな人にはずっと笑顔でいてほしいです。あなたが笑顔なら、僕はそれだけで嬉しい。藍花さんが幸せなんだってわかれば……それでいいんです」「そんな……。歩夢君、優し過ぎるよ」七海先生と同じだ。私は、歩夢君にももっと別の世界を見てもらいたい。いろいろな人に出会い、新しい道を進んでほしい。「僕はこれから仕事も頑張っていきます。だけど、あなたを想うことも止めませんから。あなたが誰を好きでも構いません。迷惑だとは思いますけど、もうしばらく……藍花さんを好きでいさせて下さい。今日はそれが言いたくて」「歩夢君。すごく嬉しいけど、でも、私にこだわらず、新しく好きな人ができた時には、必ずその人を大切にしてあげてほしい。私に申し訳ないなんて思わずに、ちゃんと前に進んでね」「……ですよね。ずっと想ってるなんてやっぱり迷惑ですよね」「ううん、迷惑なんかじゃないよ。だけど、あなたの大切な人生だから。歩夢君の未来はキラキラ輝いててほしい。私だって……君に笑っててもらいたいよ」「……笑って……?」「そうだよ。歩夢君の笑顔はみんなを元気にするパワーがあるの。そのパワーで患者さんが元気になるんだよ。歩夢君が悲しい顔をしてたら、みんな元気もらえなくなる……」「……パワーありますかね?」「あるよ!もちろん」「だったら、ずっと笑っていないとダメですね。僕が誰かの役に立てるなら……」「うん」「もし、僕にも誰かを想える時がもし来たら……藍花さんのいうように、その人を大切に……しますね。まあ、もしそんな人が現れたら……ですけど。あっ、駅に着きました。あっという間です、早いですね」歩夢君はつぶやくように言って、口角を上げてニコッと笑った。「ありがとう、歩夢君。君の笑顔で私も元気になれるから……感謝してる。本当に……いろいろありがとう。明日からもまたよろしくね」「はい!藍花さんと一緒に働けるだけで僕は幸せです。
last updateLast Updated : 2025-04-10
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1 ふたりの未来への1歩

「藍花、好きだよ……」「私もです。蒼真さんとの時間がすごく大切です」部屋の明かりはついたまま。私達はベッド入り、隣り同士並んでる。布団の中ではお互い何もつけていない。肌と肌が触れ合う感覚に、さっきからずっとドキドキしている。「僕もだ。今までは医学のこと以外に費やす時間なんてほとんど無かった。ジムに行ったりするくらいで、食事も簡単に済ませてた」「蒼真さんは勉強熱心ですから、みんな言ってます」だからこそ無敵なんだ。どこまでも外科医として努力する姿がカッコよくて、私は心底尊敬している。「それももちろん大事だ。勉強することは止めない。でも今は……藍花との時間が1番大切なんだ。この時間があるからまた頑張れる。今となっては、もうお前がいないと頑張れない」「そんな、そんなことないですよ。蒼真さんはいつだって……」言葉を続けようとした瞬間、そっと唇を塞がれた。「こんなこと言われたら失望する?」私は首を横に振った。「もし藍花がいなくなったら……俺、そう思うと本気で怖くなるんだ。情けないよな」「蒼真さん……。情けないなんて思いません。失望なんてするわけないです。蒼真さんは頑張り過ぎるくらい頑張ってます。そんなすごい人にそんな風に言ってもらえることは……やっぱり素直に嬉しいです」今度は私のおでこに優しくキスをした。「藍花。お前がもし患者さんのことを思うなら、絶対に一生俺から離れるな。藍花が側にいてくれたら俺はもう何も怖くない」そう言って私を抱き締める腕の強さに、何とも言えない安心感と男らしさを感じた。守られるって……こういうことなんだと。「いいな?絶対に俺から離れるな」私を間近で見つめながら甘く囁くその顔が、あまりにも美し過ぎる。この世にこんな美しいものが存在するなど、理解に苦しむほどだ。「私、離れません。ずっとあなたの側にいさせて下さい」「その言葉を待ってた。藍花……お前の全部を俺の物にしたい。俺だけのものに……」何度も何度も繰り返して押し寄せる甘いセリフの波。その波に飲み込まれて溺れてしまいそうになる。
last updateLast Updated : 2025-04-11
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2 ふたりの未来への1歩

そして、とろけるような刺激が私を包む。私の全てが蒼真さんに支配されていく……充分に敏感になった場所を、胸から順番に下に向かって何度も触れられ、私は更に深く高揚する。「あぁっ……ダメっ。蒼真さん……」「まだだよ。まだ……我慢だ」「意地……悪」繰り返される執拗な指の動きに、私はどうしようもなく淫らになる。蒼真さんの前では一切理性が効かない。制御不能になり、2人ともブレーキをかけることができず、ますます激しく震えるほどに乱れていく。私のこんな姿は誰にも想像できないだろう。普段の見た目との違いに、きっと引かれてしまうに違いない。自分でさえも、快楽に溺れる自分を受け入れられずにいるのだから――蒼真さんはお構い無しに私を愛撫する。体の全部の気持ち良いところを1つ1つ丁寧に。そんなところをそんな風にされたら……もうどうしようもなく気持ち良くて、我慢などできない。「もっと声出していいよ。藍花の思い通りにしてやるから」「思い通り……?」「ああ。どうしてほしい?」「……あ、あの……」私の望んでいることは何?こんなに体が熱いのに、まだまだ求められておかしくなりそうだ。だったら止めてほしい?私の本当の望みはいったい何なの?きっと私は……最高に気持ちいい瞬間がほしい――私は、「もっともっとしてほしいんでしょ?」と、悩める自分の心に問いかけた。「もっと……して。お願い、蒼真さん……」気がつけば、そんな恥ずかしいセリフを発していた。これが私の本性なのか?だとしたら、私、確実に……あなたにしつけられてこうなったんだ。ごく控えめだった私の中から、恐ろしい程淫らな部分を蒼真さんが引き出した。1から10まで全部、あなたに調教されて、私は女としてのこの上ない喜びを知ってしまった。不思議だ。もう私は、以前のつまらない自分には二度と戻りたくない――と、心で叫んでいた。
last updateLast Updated : 2025-04-12
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