化石燃料の枯渇、森林伐採、その他様々な影響で地球の寿命が尽きかけていた。 人間が生活可能な環境ではなくなる寸前だったと表現した方が正しいかもしれない。 ある日を境に、紫色の葉をつけた新種の樹木が地球上の至る所で発見されるようになった。 その不思議な樹は、魔樹(まじゅ)と名付けられ、あっという間に勢力を拡大した。 後に判明した事だが、ほぼ同時期に宇宙全体でこの魔樹という植物が確認されたという。 魔樹は、月光を浴びると大気中に魔素(まそ)を放出する性質を持っていた。 魔素は生態系を元通りに整え、地球の機能は正常に戻った。 それだけでなく、魔素は膨大なエネルギーに変換する事が可能で、魔素の研究が盛んになった。 魔素には与えられた情報を現実に発現するという特性もあり、まるで魔術の素(もと)かのようであった。 電気回路が魔素回路に置き換わり、魔素を用いた通信技術が発達し、産業革命を超える技術革新が起こった。 一番大きな変化は、延髄にマイクロチップを埋め込むことで人体をコンピュータ化したことだろう。 ヒューマンコンピュータ、通称ヒューコンと呼ばれるようになる。 ヒューコン化した人類は、超長距離間ワープを実現させる事に成功した。 地球上の何処にでも気軽に移動出来るだけでなく、地球とは別の世界へも一瞬で移動出来るようになったのだ。 ここで、驚くべき事実が発覚した。 世界で初めて別の世界へ行った人物の発表によると、地球とは異なる生態系の世界に降り立った瞬間に、特別な力を授かったと言うのだ。 研究が進むにつれ、別の世界を異世界と呼ぶようになり、特別な力はスキルと名付けられた。 異世界への超長距離間ワープの際に、細胞レベルで魔素と結びついた肉体が宇宙空間を一瞬で移動することで、何らかの力が作用してスキルが身につくという説。 異なる世界に降りたつ事で、防衛反応のような何かがスキルを芽生えさせるという説。 全て推論の域を出ない曖昧な報告ではあったが、それら全ての論証は世界を震撼させた。 異世界から地球に戻る際にはスキルを失い、また異世界に行くと別のスキルを授かるという摩訶不思議な現象を解明出来た学者はまだ居ない。 まるで小説やゲームのようだと若者達の間で異世界旅行が人気となり、それに目をつけたどこかの国がワールドキャス
最終更新日 : 2025-01-27 続きを読む