ジークウッドの街で補給を終えた俺達は、残虐の王ネフィスアルバが潜むオウッティ山脈へと向かう予定だった。 しかし、ランデルの思考回路が焼き切れてしまった為、一度ジャックス城に引き返すことになった。 四天王の一人、狂乱の一角獣ライトニングビーストを倒したことで士気が最高潮に達していた兵士達からは、あちこちで不平不満がこぼれていた。「ランデル殿、わたくしノイマンから一言よろしいでしょうか。今という絶好の機会を逃すのは何故です? ネフィスアルバの首を取って来いというのが王からのご命令であったはずです。勇者殿の輝かしい功績を持ち帰ると同時に、我々は王命に背いた愚かな騎士として罰せられてもおかしくありません!」 ノイマンと名乗る腕章をつけた騎士がランデルに進言している。 眉間に皺を寄せた凄みのある表情で、その声は怒気を帯びている。 深緑色をした長い髪を後ろに束ねた、貴公子とも呼べる若い美青年だ。 おそらく他の騎士達より位が上の立場なのであろう。 次々に湧き上がる兵士達の鬱積を代弁しているのだろう。 彼の言い分は至極真っ当である。 それを聞いていた兵士達は、声こそ上げないが、小さく頷いて無言の肯定を示している。 重苦しい雰囲気となってしまったが、俺としては一刻も早く城に戻りたい。 正直なところ、余計なことは言わないで欲しい。 俺は城で休み、ランデル達がネフィスアルバを倒すという当初の予定に戻したいからだ。「おい若造。貴様は、ユートルディス殿の隣にいる女が何者か分かっておるのか?」「……はい? 勇者殿の恋人では?」 ランデルの問いに、ノイマンが答える。「この愚か者があああああああ!」「ぐふぇあっ!」 ランデルが怒声を放ち、青い手甲をノイマンの腹部に深々とめり込ませると、鍛冶師が力強く槌を振り下ろしたかのように甲高く金属質な音が鳴り響く。ノイマンの体はくの字に折れ曲がり、斜め下から繰り出されたランデルの拳の軌道をなぞるように、放物線を描いて空中へと浮かび上がった。 苦悶の表情を浮か
최신 업데이트 : 2025-03-18 더 보기