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伝説の装備って重いんだね

last update Last Updated: 2025-01-27 02:46:55
「ではユートルディス殿、そろそろ参りましょうか!」

 宝物庫から出て、ランデルと一緒に今来た道を戻っているだけなのだが、全身から大量の汗が吹き出してくる。

 盾と剣を預かってもらえたのは幸運だったが、金ピカの全身鎧は脱がせてもらえなかった。

 このミラージュメイルがとにかく重くて、まともに歩けない。

 全身分を合わせたら四十キロ前後あるのではないだろうか。

 普通に歩こうとするとももを上げる感覚が狂い、段差の無いところでつまずいて転びそうになる。

 ペンギンのようにヨチヨチと歩くしかなく、それだけでも息が上がる。

コメ:デバフかかってる?

コメ:ゼンマイで動いてるのかよw

勇太:こういう感じに動くおもちゃありますよね?

コメ:冷静で草

 視聴者数は三十三人に増えていて、登録者数が二十五人になっている。

 配信開始から二時間程度でこの人数は多いのだろうか?

 コメントを見る限り、みんな楽しそうに視聴してくれているのは分かる。

 だんだん歩くのが辛くなってきたので、コメントと会話をして気を紛らわせたい。

勇太:他のキャスターさん達も初日はこんな感じなんですかね?

コメ:初日で四天王を倒しに行く奴が他に居るとでも?

コメ:最初の挨拶で死にたくないから安全に行くって言っておきながら、滑舌が悪くなるスキルで魔王を倒しに行くのが普通だと思ってる?

コメ:勇者ユートルディスはお前だけだわ!w

 城の外に出る頃には、心臓が破裂しそうなほど強く鼓動していた。

 城は小高い丘の上にあるようで、石造りの街並みが一望出来る。

 少し下った所にある石畳の広場では、兵士達が綺麗な長方形の形に整列している。

 冒険の始まりを感じさせる圧巻の光景であった。

 異世界に来たんだと強く認識させられ、今更ながら三億を諦めて元の世界に戻りたくなった。

 脳内では、帰還という二文字の危険信号が繰り返し点灯している。

 それはそうだろう。

 俺がやっている事は時間をかけた自殺に等しいのだから。

「ユートルディス殿、いよいよですな。このランデルがどこまでもお供しますぞ!」

「おうてぃにきゃえりちゃいよおりぇは……」

※お家に帰りたいよ俺は……

「ほう、流石はユートルディス殿。残虐の王ネフィスアルバが『オウッティ』山脈に潜んでいることに気づかれましたか。この場所からでも奴
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     おそらく、角がある方がオスで爪が長い方がメスだろう。 迫り来る二体のプァルラグに怯むことなく、ランデルは巨大な剣を振り上げた。 大きく左足を前に出すと、込められた力で大地が砕けた。 仰け反らせた背をバネのようにしならせ、踏み込んだ力を全身で爆発させた。「ぬうんっ!」 ランデルが大剣を振り下ろすと、目の前の地面が激しく炸裂した。 放たれた衝撃波が土煙を巻き上げながらプァルラグをに迫る。 驚いたプァルラグは急ブレーキをかけて立ち上がったが、ランデルの強力な一撃を受けると後方に吹き飛ばされた。コメ:ジジイすげえええええ!【四千円】コメ:タイキンより強くね?w【二千円】コメ:ゴミ呼ばわりされてるとは思えないwコメ:ランデルかっけえな!コメ:人間業じゃねえぞw【二千円】 ゆっくりと起き上がったプァルラグは、警戒するようにランデルを睨みつけている。 下手に動けないその様子がランデルの剣撃の威力を物語っていた。 四足歩行の時も迫力があったが、立ち上がったプァルラグはその比ではない。 目の前に二本の大木が現れたかのようだ。「ダディ、ちょっと借りるね!」「ん? あ、ちょっちょ……」※ん? あ、ちょっと…… 俺の手からルミエールシールドと聖宝剣ゲルバンダインを奪い取ったナタリアが前傾に身を屈めて溜めを作った。 ナタリアの後ろ髪が鞭のように空気を打つと、目の前からその姿が消えた。 放たれた矢のように風を切り、一直線にプァルラグへと向かって行く。コメ:え、何してんの?コメ:ナタリアちゃんが危ない!コメ:ランデル頼む、止めてくれ!コメ:勇太お前マジでゴミだな。コメ:ナタリアたそ戻って来てー!「きょりゃ! にゃちゃりあ、みゃちにゃしゃい!」※コラ! ナタリア、待ちなさい! 俺の叫びも、伸ばした手も、ナタリアには届かなかった。

  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   プァルラグ襲来

     馬車は、豊かな緑に囲まれた広い街道を走っている。 木々の間を通り抜ける風は青々とした草木の香りを含み、大きく息を吸い込むと気分が落ち着くような気がする。「蛇がとぐろを巻くように生えているのが蛇木(じゃぼく)、妖精の羽のように一対の半透明の葉があるあの花はフェアロワイス、茎がまん丸と大きく傘が屋根のようになっているキノコが家茸(かたけ)、家茸の茎には入り口があって、中に入った生物を養分にするんじゃ」 ランデルが外を指差し、ナタリアにあれはこれはと教えている。 くしゃりと目尻に横皺を寄せた青い鎧の老兵は、なんとも好々爺然としている。 ナタリアもランデルに懐いているようで、おじいちゃんと孫のような関係性になっていた。 父になって早六日なのだが、色々と変化があった。 最近の子供は成長が早いと聞くが、俺の娘のナタリアは小学校五年生くらいの身長になっている。 飛んだり跳ねたり走り回ったりと元気いっぱいだ。 髪も肩まで伸びて、癖のない真っ直ぐな黒髪が光を浴びて天使の輪を作り出している。 アルに似て整った顔立ちだが、つり目がちで勝気な雰囲気がある。 子供らしい喋り方ではあるが、もう普通に話せるようで、いつの間にか兵士達のアイドル的存在になっていた。 昼の休憩と夜の野営の時、兵士達はナタリアを奪い合うように話したり遊んだりしている。 裁縫上手な兵士がナタリアの服を作ってくれているのだが、有り合わせの布で作った間に合わせなので、デザインはあまりよろしくない。 ナタリアは、アルのことをママと呼び、俺のことをダディと呼び、ランデルのことをハゲちゃんと呼ぶようになった。 アルの血を強く受け継いでいるのか、アルのように炎を操ることが出来るようだ。 また、俺とは違い身体能力も高いようで、棒切れを使った模擬戦という名のチャンバラごっこではあるが、ノイマンと互角以上に戦っていた。 次はハゲちゃんを倒すと意気込んでおり、非常に愛くるしい。 反抗期に殺されないことを祈るしかない。 そして、俺にとって重大な問題が発生している。「にゃあ

  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   こんにちは

    「しゅみゃにゃいぎゃ、みじゅをみょっちぇきちぇきゅりぇにゃいきゃ?」※すまないが、水を持ってきてくれないか?「はっ!」 アルの体から大量の水分が汗として放出されてしまっているので、心配そうに見守っていた兵士に水をお願いした。 ほっと安堵の息を吐き、アルの額に滲む汗を手拭いで吸い取ってやる。 アルは、長いまつげをたくわえたまぶたを伏せると、弱々しくへにゃりと笑った。 その目元には涙が滲でいた。「ありが……とう……ございます……。良くなった……気がします……」 再び苦しそうな表情を浮かべたアルのひたいから、大量の汗が噴き出す。 アルを抱える俺の腕も湿ってきていることから、症状が治まっていないのが分かる。 明らかに強がりを言っている。 ハイポーションの効果が出るのには時間が掛かるのだろうか。 いや、そんなはずが無い。 俺が溺れた時、ランデルは俺にハイポーションを飲ませてすぐに、俺が助かったと確信していた。 万能薬でも治せないような絶望的な状態なのかもしれない。「勇者殿、水をお持ちしました!」 兵士が水を持ってきてくれた。 水差しからコップに注いでもらい、アルに水を飲ませる。 一瞬安らいだような表情を浮かべたが、すぐに歯を食いしばるように苦しみだしてしまった。 アルの体は熱を持ち、薄らとピンク色に染まっている。 胸部が苦しそうに上下し、首筋から流れた汗が胸元を伝う。 俺に癒しを与えてくれる唯一の存在が目の前で苦しんでいるのに、これ以上何も出来ないのが歯痒い。 水を飲ませて、汗を拭いてあげることしか出来ない。「ぢょうしちゃりゃ……」※どうしたら……「勇者……様……。手を…&hel

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