「御武運を!」
剣と盾を持ってきた騎士が深々と頭を下げた。俺の両腕はだらりと下がった。ボクサーがノーガードで相手を挑発しているような体勢だ。
「ささ、ユートルディス殿。出陣ですぞ!」
ランデルが俺の背中に両手を当てて、強制的に前へ前へと進ませようとしてくる。
押すな押すなクソジジイ! マジで死ぬってあんな化け物。俺は生まれてから一度も喧嘩をした事が無いし、口論すら避けてきた人畜無害な人間なんだぞ。「「「ユートルディス! ユートルディス!」」」ミノタウロスがまだ暴れ回っているというのに、みんな俺の方を向いて右手を天に突き挙げている。殴り飛ばされて宙を飛んでいる奴まで俺を応援している。
コメ:お、おい。流石にマズくないか?
コメ:死ぬやつだろこれ……。コメ:調子に乗った俺達が悪かった! マネチャするからリセットしろ!コメ:ワクワク!コメ:ごめん、俺配信閉じる。場の雰囲気に流されて、勝手に足が前に進んでしまう。
戦場におもむいた兵士は、こんな感じで死んでしまうのだろう。 あぁ、ミノタウロスまであと半分くらいの距離まで来てしまった。 近づけば近づくほど化け物の巨大さが分かる。 死刑台に向かう囚人てのはこんな気持ちなんだろうか。視聴者数が五千人を突破していた。
死肉にたかろうとハゲワシが集まってきたようだ。 ハゲといえば、ランデルは何をしているのだろうか。後ろを振り向き、潤んだ目でランデルに助けを求めてみたが、ランデルは大剣を地面に突き刺し、全力でユートルディスコールに混ざっていた。
危なくなったら助けに来てくれるよな?
信じてるからな? そのうなずきは何を意味してるんだ? ちゃんと助けてくれよランデル!コメ:いや、マジで何してんの?
コメ:もう見てられない。コメ:また馬鹿な新人キャスターが死ぬな。コメ:誰か何とか出来ないの?コメ:他人「ユートルディス殿、ついにモロンダルの坑道に到着しましたぞ!」 街道から脇道に入り、緩やかな坂道を登り続けること四日間。 背の低い樹木と、黄緑や濃緑色の苔が所々に生えた、巨大な白い岩山に到着した。 銀鉱山として栄えていたらしく、微量ながら銀が含まれているのか、岩肌は陽光を反射してラメが入っているかのようにキラキラと輝いていた。 坑道の入り口は、鳥居型に組まれた木材で補強されており、おそらく中まで同様の作りになっているのだろう。 岩山の見惚れるような白に、鮮やかな緑黄色の植物がその形をくっきりと表現し、思わず息を呑むような美しい景色だった。 そして、坑道の入り口からは、何の力も無い俺でも目視出来るほどの禍々しくドス黒いオーラが溢れ出しており、思わず息を引き取りそうになる光景だった。 そして、俺はお尻が痛い。 おそらく真っ赤に腫れあがっているだろう。 昔鉱山だったというだけあり、ここに来るまでの道は平らに整えられていたのだが、砂状の硬い路面には小石が目立つようになり、馬車が揺れに揺れた。 精神的にも肉体的にも俺は限界を迎えている。 この数日間、俺は何度もランデルを説得した。 四天王はランデルが倒してくれと。 しかし、俺のスキル『絶望的な滑舌』が邪魔をして会話にならなかったのだ。「りゃんぢぇりゅ、おりぇにちゃちゃきゃうちきゃりゃはにゃい!」※ランデル、俺に戦う力は無い! と、言ってみた。「ははは、流石ですなユートルディス殿。ちゃちゃっとやっちゃって下さい!」 と、返されて気を失なった。「りゃんぢぇりゅ、おにぇぎゃいぢゃきゃりゃいっきゃいみゃじみぇにひゃにゃしをきいちぇきゅりぇ!」※ランデル、お願いだから一回真面目に話を聞いてくれ! と、声を荒げてみたが、少し沈黙が続いた後ランデルは瞳を|潤《うる》ませた。「……ユートルディス殿、ワシはこの命を国に捧げております。そう言って頂けるのは騎士冥利に尽きますが、最後までお供させて頂きます!」
ドラゴンには、スキル『炎の勇者』を持つタイキンさんでさえ苦戦していた。 弓や魔法をものともしない|強靱《きょうじん》な鱗に守られ、尻尾の一薙ぎで巨大な建造物を吹き飛ばし、上空から灼熱の炎を吐いて街を壊滅させてしまう最強最悪のモンスターだ。 名前のついたモンスターはネームドと呼ばれ、同種の中でも抜きん出た強さを誇ることで知られている。 ネームドドラゴンというだけでも恐ろしいのに、その中で一番強い個体を一分もかからず瞬殺したのが狂乱の一角獣ライトニングビーストという四天王らしい。勇太:良かった、俺なら今回の四天王を簡単に倒せるらしいです。……んなわけあるかいっ! コメ:突然のノリツッコミwww コメ:この状況でよくふざけていられるなw 勇太:ちょっと企画やっていいですか? コメ:唐突すぎて草 コメ:面白かったらマネチャするわw 勇太:俺よりランデルの方が強いって分かってもらえれば、代わりに戦ってくれると思うんですよね。なので、今からジジイと模擬戦します! コメ:自殺する気か? コメ:ちゃんとイカれてて草 コメ:身投げ企画お疲れ様です! 危険なのは重々承知の上だが、説得しても伝わらないのだから体で分からせるしかない。 直接戦えば、いくらこのジジイが脳無しだとしても、俺がどれだけ弱いか気付いてくれるはず。「りゃんぢぇりゅ、いっきゃいりぇんしゅうしにゃい? みょぎしぇんちぇいうにょきゃにゃ。おりぇぎゃちゃちゃきゃえにゃいっちぇきょちょを、しょろしょろきぢゅいちぇひょしいんぢゃよにぇ」 ※ランデル、一回練習しない? 模擬戦っていうのかな。俺が戦えないってことを、そろそろ気付いて欲しいんだよね「よろしいのですか? ワシが本気で戦っても傷一つつけられるかどうか……。しかし、いち武人として、勇者と戦えるのはこの上ないほまれ。全力で行きますぞ!」 近くにいた騎士に聖宝剣ゲルバンダインとルミエールシールドを持って来てもらった。 勇者の戦いが見れると興奮していたのか、剣と盾を雑に渡された。 あまりの重さ
模擬戦という名の茶番が終わり、俺は自分の弱さを証明出来なかった。あのアホジジイがまともにやっていたとて、どうせ俺が手を抜いただの花を持たせてくれてありがとうだのと言ってきたに違いない。ユートルディスコールはどちらにせよ起きていただろう。どちらにせよ最初から俺の負けだったのだ。 このままでは、四天王と戦うことになってしまう。ミノタウロスのときは、奇跡が俺の命を守ってくれたけれど、今回ばかりは間違いなく死ぬ。勇者の立場を利用して、無理矢理ランデルを戦わせてしまおう。 それしかない気がする。 「ではユートルディス殿、早速ライトニングビーストを倒してしまいましょう!」「ひゃいひゃい、しょりぇじゃおにぇぎゃいしみゃしゅにぇ」※はいはい、それじゃお願いしますね「『ソロで俺が行きますね』、ですと? 四天王なんぞユートルディス殿の敵ではないのでしょうが……」 そんでこれね。 俺のスキルって、活舌が悪くなるだけじゃなく、不運まで引き寄せてるんじゃないか?勇太:うわ、またやっちまった。自然な流れでランデルにお願いしようとしただけなのに!コメ:悪夢再び。コメ:お願いしますと言うと行かされる定期wコメ:このスキル『絶望的な滑舌』がマジで悪さしかしないな。コメ:変なデバフよりよっぽど厄介だよねwww勇太:さすがに四天王は無理なんですが。コメ:四天王じゃなくても無理だろw【二千円】 四天王と戦うなんて絶対に嫌だ。 俺はゴネる! 何が何でも逃げきってやる!「いや、ちぎゃう。りゃんぢぇりゅぎゃ……」※いや、違う。ランデルが……「みなのもの、聞けい! これより勇者ユートルディス殿が単独で坑道に入る!」 この流れはまずい、今度こそ殺されてしまう。 こいつらを戦わせて、俺はいつでも逃げれるように遠くで見ていたいのに。 「みゃちぇみゃちぇみゃちぇ!」※待て待て待て!
坑道の中を覗く勇気なんて無いので、狂乱の一角獣ライトニングビーストがどのような姿なのかは分からない。 しかし、暗闇の奥から心臓を握り潰されるような恐ろしい気配を感じた。 暗闇から漏れ出す漆黒のオーラが、四天王の心情を表すかのように激しく揺れ動いている。 そのプレッシャーだけで胸が苦しくなり、過剰に空気を取り込もうと呼吸が荒くなった。 血の気が引くとともに意識が遠のき、背筋が粟立つ。 恐怖で思考が阻害される。 一般人が無闇に近づいていいものでは無かった。「我が名は狂乱の一角獣ライトニングビースト。我に挑んだ事を後悔させてやるわ! 勇者よ、死ぬがいい!」 濃密な死の予感が脳内を埋め尽くすと同時に、腰が抜けて情けなく尻餅をついてしまった。 俺は、自然と生存本能に任せた行動を取っていた。 地面に投げ捨てたルミエールシールドを両手で拾い上げ、その後ろに屈んで隠れた。「グルォオオオオオオオ!」 けたたましい咆哮とともに、坑道の奥から放出された漆黒のイカヅチが山も壁も地面も関係なく吹き飛ばした。 轟音と共に俺の周囲が黒く光り輝き、地形がどんどん変わっていく。 幸か不幸か、ライトニングビーストは俺をいたぶるつもりらしく、自分の力を誇示するからのように俺を避けた場所を狙っているようだ。 俺の周囲は火山のマグマ溜まりのようになっていた。 逃げ場が無いとはこの事だなと自分の死を受け入れるしかなく、無我の境地に達している。 液状化した地面から放射される熱でとんでもなく暑いが、サウナよりはまだ我慢出来る程度で済んでいるのが救いだろうか。 まあ、俺のすぐ側を黒い稲妻が通った時点で、脚からこんがり焼けてしまうだろうけど。コメ:おいおいヤバいって!コメ:世界の終わりみたいな光景なんだが……。コメ:何でリセットしないの?コメ:分からんが、死の恐怖で頭が真っ白になってるのかもしれない。 もう俺には盾の持ち手を両手で握りしめ、神に祈る事しか出来ない。 だって、死
「やりましたなユートルディス殿! このライトニングビーストの首は、馬車の上に張り付けにしましょう。一気に士気が上がりますぞ!」「よ、よきゃっちゃにぇ……」※よ、よかったね…… 悪趣味がすぎる。 その馬車に乗る俺の気持ちを考えて欲しい。 ランデルは、誇らしげな表情で巨大な人面獅子の頭を馬車の屋根に縛りつけていく。 鼻歌混じりに作業をしているランデルからは、狂気しか感じられない。 幾重にも縄で頑強に締め付けられたライトニングビーストの生首は、面白可笑しくデコボコに変形していた。まるで、お笑い芸人が輪ゴムや透明なテープで顔面をぐるぐる巻きにして、変顔を作っているかのようだ。 あんなに誇り高そうな態度をしていた四天王を思うと、少し可哀想になった。 もし俺がこの世界で死ぬのなら、こいつにイタズラされないように跡形も無く消え去りたい。コメ:うわぁ……。コメ:俺達は何を見せられているんだ。コメ:馬車が血で染まっていく。コメ:サイコパスかな?wコメ:気持ち悪くなってきた。 馬車は、簡単な作りの木製の車体にアーチ状に加工した金属が取り付けられ、そこに幌を括り付けている安っぽい見た目をしている。 お世辞にも頑丈とは言えない手作り感満載の馬車なので、巨大なライトニングビーストの生首の重さで幌がヘコんでしまった。 二頭身にデブォルメされて、随分と可愛らしくなったものだ。 「しかし、凄まじかったですな。四天王が放ったカオスライトニング・ゼラとユートルディス殿の『オーディンマストダイ』でしたか? 技のぶつかり合いは鳥肌ものでしたぞ!」 このジジイの言っている事が何一つ理解できないんだが。 オーディンマストダイって何? 一般人の俺に技もなにもないんだが。「いや、おうてぃにきゃえりちゃいっちぇいっちゃんだけぢょにぇ」※いや、お家に帰りたいって言ったんだけどね「これは失礼、『オーディニ
そういえば、先日のミノタウロスは最高に美味しかった。 肉は筋繊維が太くて硬すぎる為、噛み切れないので食べないらしいが、内臓系はどの部位も絶品らしい。 俺は、ミノタウロスのミノというダジャレのような部位を頂いた。 塩を振るだけのシンプルな味付けであったが、歯応え、旨み、脂身、全てにおいて究極のミノと言えた。 怪我をした騎士には、優先的にレバーが与えられていた。 彼らがレバーを噛み締めるたびに、恍惚とした表情を浮かべていたのは忘れられない。 ちなみに、一番美味いのは大腸らしいのだが、切り開いて川で洗ったりと下処理が大変なので、食べるまでに時間がかかってしまう。 早く食べられる部位は、身分が上の物に優先的に提供されるという仕組みらしい。 その理論でいくと、一般男性の俺が大腸を食べられるはずなのだが、勇者として祭り上げられているピエロなので、俺の願いが叶うことは無いだろう。 小さく切り分けられたミノタウロスの大腸が網の上に乗ると、焚き火でその上質な油が溶け出し、なんとも香ばしい良い香りのする煙が立ち昇っていた。 こんがり焼けた大腸を口に含み、飛び上がって体でその美味しさを表現する奴らを見て、次があれば俺もあれを食べさせてもらおうと決意した。 ワイバーンも美味かったしな。 次は目玉以外を食べさせてもらいたいが。「ユートルディス殿、今回圧倒的な力を見せて頂き、騎士達の士気は最高潮に達しております。是非、次のオウッティ山脈では残虐の王ネフィスアルバの討伐を我々にお任せ下され!」 これは願ってもない申し出だ。 アホランデルから初めてまともな提案が出てきた気がする。 しかしだ、ここは最新の注意を払って返答しなければならない。 俺の滑舌とエスパー翻訳ジジイの相互作用で、どんな曲解をされるか分かったもんじゃないからな。 ここでお願いしますと言うと俺が行かされるので、ここは短く分かりやすい返事をするとしよう。 お願いしますと言うと俺が行かされるっておかしいけどな。「うん!」※うん! 流石に伝わっただろう。
「勇者殿、こちらが本日の昼食になります!」 いつもの麦がゆと……何だこれは? 握りこぶし大で、そら豆に似た形状の茶黒い物体が串に刺さっている。 気のせいじゃなければいいのだが、こんがり焼けたその物体からは、嫌な臭いのする湯気と微弱な黒くて禍々しいオーラが立ち昇っている。コメ:キモwww コメ:またゲテモノじゃねえか! コメ:さすがに不味そう。 コメ:なんか黒いオーラ出てない?w「きぇみょにょしゅうをぎょうしゅきゅしちゃようにゃきょうりぇちゅにゃあきゅしゅうをはにゃちゅきょりぇはにゃにきゃにゃ?」 ※獣臭を凝縮したような強烈な悪臭を放つこれは何かな?「はっ、こちらはライトニングビーストの睾丸を串焼きにしたものです! 先の四天王との激戦で、勇者殿が疲弊されているかもしれないとランデル殿に相談しまして、精のつきそうな部位をお持ちしました!」 ちょっとこいつが何を言っているのか理解できない。 俺は今、本当に正しい解答を聞けたのだろうか。「えっちょ、ききみゃちぎゃいじゃにゃいちょいいんぢゃきぇりょ。きょりぇはにゃにきゃにゃ?」 ※えっと、聞き間違いじゃないといいんだけど。これは何かな?「はっ、こちらはライトニングビーストのキンタマを串焼きにしたものです! 戦の疲れに一番効くのは獣のキンタマですので、多少臭いますが、食べやすい調理法を選んだつもりです!」勇太:イカれてんのかこいつらは! 睾丸が何か分からなかったから聞き直したんじゃないんだよ! 可愛く言い直されても困るんだが! コメ:別に可愛くないけどなw コメ:四天王なんて食えるのか? 勇太:多少ってレベルじゃないくらい臭いですよこれ。 コメ:見てるだけで吐き気するw コメ:腹壊しそう。「えっちょ……りゃんぢぇりゅ? きょりぇっちぇしゃっきにょしちぇんにょうぢゃよにぇ? いみゃみゃぢぇぢゃりぇきゃちゃびぇちゃきょちょありゅにょ?」 ※えっと……ランデル? これってさっきの四天王だよね? 今まで誰か食べたことあるの?「はっ
食事中に俺の話を聞きたいと言われて連れてこられたはずなのだが、俺はほとんど喋らなかった。 ランデルが泣きながら口をゆすいでいたせいで、進行を取れる人間が居なくなってしまったからだ。 俺を前にした兵士達は、自分の考える勇者ユートルディスはこうだみたいな話題で盛り上がっていた。 ユートルディス談義が白熱し、何故か取っ組み合いの喧嘩にまで発展し、俺の目の前に地獄絵図が広がった。 怒号と悲鳴が響き渡り、呆然と立ち尽くしていた俺は、最終的に俺の為に争うんじゃないという美少女みたいなセリフを言わされる羽目になった。 さて、四天王の首が張り付けられた悪趣味な馬車に、俺とランデルが二人で乗っている訳だが。 小休止という名の地獄が終わり、四天王ネフィスアルバが潜むオウッティ山脈へと向かっている。 緩やかな下り坂なので、馬車の速度が上がり、デコボコした路面が俺のお尻を終わらせにきている。 衝撃を和らげるクッションのような何かが欲しいと思い、座席とお尻の間に手を入れてみたところ、鎧の重さで手の骨がゴリゴリと音を立てて砕けそうになった。 それだけでもきついのに、もう一つの問題が生じている。 馬車の幌に、狂乱の一角獣ライトニングビーストの体液と血液が染み込み始めている。 そのせいで、凝縮された凄まじい獣臭と血生臭い不快な香りが馬車の中に充満している。 馬車の揺れと不快な臭いでいつ吐いてもおかしくない。「にゃありゃんぢぇりゅ、びゃしゃにょうえにょやちゅぎゃきゅしゃきゅちぇひゃきしょうぢゃきゃりゃ、しょりょしょりょありぇしゅちぇにゃい?」 ※なあランデル、馬車の上のやつが臭くて吐きそうだから、そろそろあれ捨てない?「お気づきでしたか。ユートルディス殿がおっしゃる通り、そろそろ物資の残りが怪しくなってきておりますので、途中街に寄り補給したいと考えております!」勇太:あの、今のって会話になってました? 各々が自分の意見を述べただけでしたよね? コメ:平常運転だね! コメ:いつもの聞き違いではなかった。 勇太:もしかして、俺がキンタマを食わせたことを怒ってるんで
強い風を感じて目が覚めた。 いつの間にか椅子の上で横になっていたようで、目の前にはランデルと王様が座っていた。 前後左右に揺れている感覚があるが、箱馬車の中にでも居るのだろうか。 白い車内に赤い椅子とメルヘンチックだ。 どうやら、気絶している間に連れ出されてしまったらしい。 ふと視聴者数を見ると、四千人に減っていた。 最近は、何もなくても二万人前後が見てくれていたのだが、アルとナタリアが周りに居ないとここまで少なくなってしまうみたいだ。 一時期、一桁台にまで落ちてコメントが無くなってしまった事を考えれば、俺だけの配信でもこれだけ集まってくれるのは素直に嬉しいのではあるが。コメ:お、起きたか?コメ:大変な事になってるぞ!コメ:外見ろ外!コメ:勇太くん、リセットせなきついで?コメ:今回はさすがに死んじゃうかも。コメ:早く外見ろ! なんだかコメントが騒がしい。 目の前のランデルも王様も和やかに会話をしているというのに、何故リセットする必要があるのだろうか。 寝転がりながら窓を見ると、今日の天気は快晴のようだ。 こういう日は、俺の心も晴々とした気持ちになる。 少し肌寒いが、青々とした空がとても綺麗だ。 さぞ景色も輝いて見えることだろう。 起き上がって窓の外を見てみると、俺は空に居た。「にゃんぢゃきょりゃあああああああ!」※何だこりゃあああああああ! 木も、街も、山すらも小さく見える。 切り立った岩山、青々とした平原、森の中に佇む奇岩、上空から見る世界は壮大で、言葉に出来ないほど美しい。 時折雲を突き抜け、景色が流れるように変わっていく。 なかなかスピードが出ているようだ。 ……どうしてこんな事になっているのだろうか。「ユートルディス殿、お目覚めですかな?」「勇者よ、まもなくだぞ。気を引き締めよ!」コメ:だから言ったじゃん!wコメ:睡眠時三
「ハゲちゃん、お城に着いたらベッドで寝れるかな? あたし、またフワフワしたい!」「城のベッドは、もーっと柔らかいじゃろうな。しばらくは毎日気持ちよく眠れるのうナタリア」「本当? あたし楽しみ!」 ジークウッドの街でベッドを経験してから、ずっとこんな感じだ。 初めてベッドに横になったナタリアは、寝そべりながら空に浮いているみたいと感動していた。 俺達は今、森の中を走っているのだが、ここを抜けたら城が見えてくる。 闇皇帝ドラキュリオを倒すには色々としがらみがあり、準備期間中は城で過ごすことになるというランデルの話を聞いたナタリアが期待に胸を膨らませているのだ。 このまま順調に進めば、昼過ぎには城に到着するだろう。 俺としては、ベッドよりも国お抱えのシェフが作るご飯の方が気になっている。コメ:当たり前の幸せすら与えてやれない勇太を許してあげてねナタリアちゃん……。コメ:こっから一年近く城で暮らすんだっけ?コメ:近くにダンジョンとか無いのか? 同じ場所で同じ日常を見続けるのはきついぞ?コメ:いやいや、勇太が戦えるわけ無いだろwコメ:ゴブリンてスライムより弱いんだっけ?コメ:ワロタwww コメントの言う通り、俺も長期間冒険が出来ない事を危惧している。 変わり映えの無い毎日という、俺が捨てたものを見せてしまう事になる。 この世界に来る前とは違い、今の俺にはアルとナタリアという家族がいる。 つまらない日常とはならないだろうが、それは俺にとってであり、視聴者からすると退屈かもしれない。 俺が選んだラドリックという世界にも、タイキンさんが活躍しているようなダンジョンは存在している。 元々、タイキンさんのような配信をしたくてこの世界を選んでいるからだ。 城の近くにダンジョンがあるかは分からないが、俺に倒せるのはスライムくらいだろう。 いや、スライムすら倒せないかもしれない。 ゲームのようにレベルという概念があればいいのだが、それが無い以上は難し
宿の近くで飯屋を探していると、一際賑やかな客引きが居た。「楽しい食事を体験してみない? 旅の思い出になること間違いなし! 今だけオープン記念でお得に食べれるよ!」「ダディ、楽しい食事だって! あたしあそこの店がいいかも!」「ちゃしきゃにきににゃりゅにぇ!」※確かに気になるね! まだ空席があったようで、すぐに案内してくれた。 オープンしてまだ三日しか経っていないらしい。 コース料理の店なので、酒場でワイワイやりたい客層が多いジークウッドの街ではイマイチ客の入りが良くないのだとか。 店内は、テーブル席が六つの暖かい雰囲気で、厨房に居るやけに体つきがいい角刈りの男がミスマッチだった。「メヂールのカルパッチョだ。緑の皿から食え」 角刈りが料理を運んでくれた。 マグロに似た薄切りの魚が花の形に盛り付けられ、サラダが添えられている。 ドレッシングで半円状に模様が描かれていて、見た目でも楽しませてくれるようだ。 とても目の前で腕を組んでいるゴリラのような男が作ったとは思えない。 何故この男は料理を運んだ後も俺たちのテーブルの近くで仁王立ちしているのだろうか。 そして何故全く同じ見た目のカルパッチョが二皿ずつあるのだろうか。 |縁《ふち》が赤と緑の二種類の白い皿がある。「早く食え」 角刈りが急かしてくる。 この店が流行らないのはこいつのせいなんじゃないか?「何これ! 全然違う!」「本当ですねっ! 見た目も味付けも全く同じなのに、何故でしょうかっ?」 二つの皿を食べ比べたナタリアが驚きの声を上げている。 アルは、片方の皿から一口食べて目を瞑り、別の皿から食べて首を傾げている。「ほう、分かるかい?」 ゴリラの表情は変わっていないのだが、声のトーンが一つ上がった気がする。 よく見るとソワソワしていて、少し嬉しそうだ。コメ:勇太早く食えよ!コメ:ウホウホ言ってる奴をお前の舌で黙らせろ!
「ランデル殿に伝令、ジークウッドの街に到着しました!」「見張りは交代で、それ以外は自由行動! 今日は羽目を外して、精一杯英気を養え!」 オウッティ山脈を出発してから六日経ち、夕暮れ時にジークウッドの街に到着した。 兵士達も疲れや色々な物が溜まっているだろうということで、今日は街で一泊する。 こういう時は鎧を脱がせてもらえるし、久々に野営の硬いゴザのようなマットではなく宿屋の柔らかいベッドで眠れるのは嬉しい。 ナタリアは生まれて初めてベッドで眠ることになる。 そう考えると不憫でならない。コメ:ずっと思ってたんだけど、配信方式が視界共有だと勇太くんが寝る時に画面が真っ暗になるから、睡眠時は三人称にしてくれん?コメ:あ、俺もそれ思った!コメ:ワーキャスの自動設定で変えれるで?勇太:俺と一緒に寝て、俺と一緒に冒険して、みんなで同じ時間を過ごせると思ってたんですが。コメ:誰がお前の生活リズムに興味あんねん!wコメ:アルちゃんとかナタリアたんの寝顔見たいんじゃこっちは!コメ:これがゴブリンの思考かwwwコメ:ゴブトルディスはよ設定変えろ!コメ:ゴブトルディス草 ナタリアとランデルのディベートから、コメントが面白がってゴブリン呼ばわりしてくる。 まだこの世界のゴブリンを見た事が無いのにも関わらずだ。 結構傷ついてるんだからな!「ユートルディス殿! 前回は一緒に行動しましたが、今回はどうします? ワシはいつものアレに行きますが」「おりぇはありゅちょにゃちゃりあちょきょうぢょうしようきゃにゃ。きゃにぇぢゃきぇきゅりぇ!」※俺はアルとナタリアと行動しようかな。金だけくれ!「そうですか。ユートルディス殿も丸くなったもんですな……」 一緒に夜遊びしたのは一度きりの筈なんだけど、このジジイは俺の何を知っているのだろうか。 日本で暮らしている時も安月給だったから、楽しみといえば配信を見るぐらいしか無かったのだが。 まあ、こいつは俺をゴ
コメ:なんか緊張してきたなwコメ:議題がしょうもないけど楽しみだわ。勇太:俺がカッコいいとかダサいとか自分で言うの恥ずかしいんですけど。コメ:たしかにwwwコメ:じゃあ何でその議題にしたんだよ!wコメ:何で勇太だけ罰ゲームになってんの?w「しょきょみゃぢぇ! しぇんきょうにゃちゃりあ、いきぇんをぢょうじょ!」※そこまで! 先攻ナタリア、意見をどうぞ!「カッコいい男って、あたしは思いやりがあって頭がいい人だと思う。 今着ている服はダディが買ってくれたんだけど、あたしがママみたいに可愛い服を着たいって気付いてくれて、服屋さんに連れて行ってくれたの。 高級店で高い服だったのに、あたしが店の中で悩んでたのを見てくれてて、似合うからって三着も買っちゃって。 その時ね、あたし実は見てたんだよね。 会計の時に、ダディのお金が無くなっちゃったのを。 ダディったら、自分の服も買わなきゃいけないのを忘れて、全部あたしとママの服にお金を使っちゃってたんだから。 気付かないフリして次のお店に行ったんだけど、そこの服も可愛くって、ついダディに欲しい服を見せたら、買うって言うの。 お金も無いのにどうするんだろうと思ったら、機転を利かせてハゲちゃんに買ってもらっちゃったんだよ? あたしのダディは、優しくて、頭が良くて、世界一カッコいいんだから!」「……うん、うん。ちょっちょみゃっちぇにぇ」※……うん、うん。ちょっと待ってねコメ:え、勇太くん泣いてる?wコメ:きしょwコメ:ナタリアちゃんええ子や!【一万円】コメ:俺もこんな娘が欲しい。【二万円】コメ:この短時間でこんなに上手く話を|纏《まと》められるの凄すぎんか?【一万円】コメ:このプレゼンに勝つの無理じゃね?wコメ:いい話だけど、勇太は頭良くないよな?コメ:言っちゃダメ!www「しょりぇぢぇは、りゃんぢぇりゅきゃりゃしちゅぎを!」※それ
「伝令兵はすぐに出発しろ! 補給はジークウッドの街で一度のみ、最短で城へと戻るぞ!」 待機部隊と合流し、短い作戦会議の後すぐに出発する事になった。 もちろん俺はその作戦会議に呼ばれていない。 これから二週間近くかけて城に戻るのだが、馬車の中でランデルから作戦について教えて貰った。 足の速い馬五頭を選び、先に五人の伝令役を城に向かわせることで、ジャックス王に闇皇帝キディス・メイガス・ドラキュリオ討伐の準備を整えて貰うらしい。 俺達が城に到着するより五日程度早く伝令兵が報告する予定だ。 ジャックス王国含む三カ国程度で同盟を組み、一気にドラキュリオ帝国を攻め滅ぼす大規模な戦争になるかもしれないとランデルが言っていた。 ジャックス王国には既に魔王軍のスパイが潜入している為、秘密裏に動く必要があり、実際に戦争が起こるまでには一年以上かかる可能性があるとも言っていた。 異変に気付いたドラキュリオ帝国側が何か手を打ってくる事もあり得るので、不測の事態に備えた緊張状態がしばらく続きそうだ。 この話を聞いていたアルは、馬鹿馬鹿しいと鼻で笑っていた。 アルが言うには、ヴァンパイアである闇皇帝は太陽の光に弱いので、夜もしくは自身が発生させた闇の中以外では全力で戦えないらしい。 昼間に闇の外から焼き殺すか、俺が聖なる勇者の力で闇を祓えば一瞬で終わると自信満々の顔で言い放っていた。 ナタリアが俺に尊敬の眼差しを向けていたので心が痛かった。 ちなみに、全力の闇皇帝にはアルでも勝てないらしい。 俺なら勝てるらしいが。 ナタリアのマルーン色の目がキラキラと輝いていたので、罪悪感で胸が苦しくなった。コメ:へぇ、勇者ユートルディスってそんなに強いんだね!コメ:俺達は|欺《あざむ》かれていた?コメ:まあ、四天王の半分はユートルディスがなんとかしちゃってるもんな。勇太:ジャンケンなら勝てるかもしれませんね。コメ:つまんなすぎて草コメ:ユーモア忘れてきた?コメ:勇太くんおもしろーい!(真顔)「ねえねえダディ!
「ダディ見て見てー!」 ナタリアの声が聞こえた。 視線を移すと、魔剣ゲイルウィングを持って走っている。 あの小さな手に握られているのが花やヌイグルミだったらどれほど可憐だっただろうか。 距離を取ったナタリアは、龍の翼に似た黒い大剣を両手で持ち、大きく振りかぶった。 白いワンピースを着た少女が、自分の身長の二倍に近い巨大な剣を軽々扱っているという異常な光景だった。 ナタリアの視線の先には、ダンゴムシのように体を丸めたランデルがいる。 まさかとは思うが……。「ハゲちゃんいくよー!」 ナタリアが右足を前に出した。 玄関を開けて、散歩にでも出掛けるような軽い一歩であった。 ナタリアが体を捻り、剣を振った。 庭で素振りをする野球部のように、その行為に罪悪感など持ち合わせていない。 右から左へ横薙ぎに空を斬った魔剣の刀身から、半円状の漆黒の刃が放出された。 地を這うように飛ぶそれは、ズガガガと大地を削りながらランデルに向かって行く。「はへ?」 突然ナタリアに呼ばれたランデルは、甲羅から首を出す亀のように顔を上げると、情けない声を漏らした。 黒い何かが迫って来ているのだから当然だろう。「ハーゲちゃーん! 受け止めてー!」 魔剣を地面に起き、口の両脇に手を添えたナタリアが可愛らしく呼びかける。 ナタリアの声に反応したランデルは、巨大な鉄剣を持って立ち上がった。 青い鎧の老兵が、先の戦闘で刀身が傷ついた大剣を上段に構えた。 心なしか、その口元は笑っているように見えた。「やるではないかナタリア! ぬううんっ!」 地面を叩きつけるように振り下ろされた大剣が、闇の刃を真っ二つ切り裂いた。 二つの刃が交差した甲高い金属音、その直後に大地が割れる鈍い衝撃音が響く。 爆発した地面が砂埃を巻き上げ、ランデルの姿を覆い隠した。「ハゲちゃんすごーい!」 強い風が砂煙を霧散させると
青の老兵と元騎士団長の誇りを賭けた戦いは、アルが強制的に終わらせてしまった。 騎士のランデルに対しての復讐としては、これ以上ない残酷なものであっただろう。 パワーポーションを飲み、命を削ってまで倒そうとした相手が居なくなってしまったのだ。 水を差されたランデルは、固まったように動けないでいる。 ランデルの周りを陽炎のように立ち昇る空気が、魂が漏れ出しているかのように見えてしまう。 兵士達もどうしたらいいのか分からない様子でポカンとしており、アルとナタリアだけが楽しそうに会話している。 異様な空間が出来上がってしまった。コメ:おい勇太、ランデルを慰めてやれよ。コメ:ランデルも悪いけど、アルちゃんの仕返しもエグいなwコメ:あぁ、アルたそ。俺の頭を消し飛ばしてくれないかなぁ。【一万円】コメ:燃え尽きちまったみたいだな……。勇太:大量に買った携行食はどうするんでしょうね?コメ:心配するとこ違くね?wwwコメ:思考が主婦で草「ノイマン、ネフィスアルバを立たせよ!」「はっ!」 ランデルの指示で、ノイマンがネフィスアルバの元へと走る。 ランデルの瞳に光が戻っていた。 ノイマンが頭の無い死体を抱え上げて立ち上がらせると、ランデルは岩を掻き分け、瓦礫の中に潜っていく。 なんだか嫌な予感がするが、そうでない事を願うしかない。「青い鎧はジャックス王国最強の騎士のみが着用を許されておる! 人間を裏切り、騎士である事から逃げた弱者になど負けはせん!」 地中から決め台詞が聞こえた。 ランデルが背中で瓦礫を持ち上げながらゆっくりと立ち上がる。 パラパラと体からこぼれ落ちる小石が雰囲気を盛り上げているが、もはやギャグでしかない。 嫌な予感が的中したようだ。 あの大根役者は、全てを無かった事にしてやり直そうとしている。 呆れて物も言えない。 乾いた笑いが浮かんでくる。 当の本人は至って真面目なようで
コメ:娘に守られる勇者……おる?コメ:今度こそ死んだかと思ったわ!コメ:勇太の心拍メーターさ、一瞬ゼロになってたんだけど?勇太:あー、回らないお寿司を食べた思い出を振り返ってた時ですかね?コメ:知らんわ!wwwコメ:脳が死を受け入れてて草 膠着状態から一転して大剣同士の激しい打ち合いが始まった。 動きが速すぎて俺には二人が何をしているのか分からないが、右で左で剣戟が鳴り、その度に衝撃波が飛んでくる。 俺はサッとナタリアの後ろに隠れたので、もう安心だろう。 念の為にバリアのポーズをしておいた。「やーっぱり年とったらダメダメじゃんねー? 俺っちのパワーとさー、魔剣ゲイルウィングが合わさっちゃったらさー、だーれも勝てないワケなのよー!」 ランデルが押され始めた。 ランデルは、地に足をつけて腰を起点にした遠心力を生かす攻撃を得意としている。 ネフィスアルバは、それと同等の威力を右腕だけで繰り出せる。 体格差があるため、単純な力の勝負で分が悪いランデルは技術でカバーしていた。 しかし、剣に加えて突きや蹴りの格闘術を織り交ぜ始めたネフィスアルバの猛攻は凄まじく、なかなか反撃の隙を見出せないランデルは後手に回らざるを得なくなってしまった。「ぬぐあっ!」 なんとか紙一重で攻撃を受け流していたランデルであったが、ネフィスアルバの左拳を肩に受け、体勢を崩してしまう。 その隙を見逃さず、ネフィスアルバが強力な袈裟斬りを放つ。 ドラゴンの翼膜のような禍々しい刃がランデルに迫る。 咄嗟に剣の腹を盾にしたランデルであったが、真正面から受け止めた凄まじい衝撃により、後方に吹き飛ばされてしまった。 振り下ろされた魔剣ゲイルウィングの刀身から漆黒の斬撃が放たれたのだ。 剣を振るった軌跡を追うように弧を描いた闇の剣線に押し出されたランデルは、その勢いのまま瓦礫の山に突っ込み、ガランガシャンと音を立てながら埋もれてしまった。 ネフィスアルバが初めて見せた飛ぶ斬撃だった。