Share

和解

last update Last Updated: 2025-03-08 18:10:40

 食事中に俺の話を聞きたいと言われて連れてこられたはずなのだが、俺はほとんど喋らなかった。

 ランデルが泣きながら口をゆすいでいたせいで、進行を取れる人間が居なくなってしまったからだ。

 俺を前にした兵士達は、自分の考える勇者ユートルディスはこうだみたいな話題で盛り上がっていた。

 ユートルディス談義が白熱し、何故か取っ組み合いの喧嘩にまで発展し、俺の目の前に地獄絵図が広がった。

 怒号と悲鳴が響き渡り、呆然と立ち尽くしていた俺は、最終的に俺の為に争うんじゃないという美少女みたいなセリフを言わされる羽目になった。

 さて、四天王の首が張り付けられた悪趣味な馬車に、俺とランデルが二人で乗っている訳だが。

 小休止という名の地獄が終わり、四天王ネフィスアルバが潜むオウッティ山脈へと向かっている。

 緩やかな下り坂なので、馬車の速度が上がり、デコボコした路面が俺のお尻を終わらせにきている。

 衝撃を和らげるクッションのような何かが欲しいと思い、座席とお尻の間に手を入れてみたところ、鎧の重さで手の骨がゴリゴリと音を立てて砕けそうになった。

 それだけでもきついのに、もう一つの問題が生じている。

 馬車の幌に、狂乱の一角獣ライトニングビーストの体液と血液が染み込み始めている。

 そのせいで、凝縮された凄まじい獣臭と血生臭い不快な香りが馬車の中に充満している。

 馬車の揺れと不快な臭いでいつ吐いてもおかしくない。

「にゃありゃんぢぇりゅ、びゃしゃにょうえにょやちゅぎゃきゅしゃきゅちぇひゃきしょうぢゃきゃりゃ、しょりょしょりょありぇしゅちぇにゃい?」

※なあランデル、馬車の上のやつが臭くて吐きそうだから、そろそろあれ捨てない?

「お気づきでしたか。ユートルディス殿がおっしゃる通り、そろそろ物資の残りが怪しくなってきておりますので、途中街に寄り補給したいと考えております!」

勇太:あの、今のって会話になってました? 各々が自分の意見を述べただけでしたよね?

コメ:平常運転だね!

コメ:いつもの聞き違いではなかった。

勇太:もしかして、俺がキンタマを食わせたことを怒ってるんで
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Related chapters

  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   ランデルの下ネタ

     どの世界でもエロ談義は男同士の絆を深めてくれるんだな。 言葉では言い表せない不思議な感覚で、自分という存在が受け入れられたような気持ちになる。 何気ない友人との会話の中で、好きな異性のタイプとか、実はこんな性癖があるとか、秘密を打ち明けた時に、分かるわーと共感し共感される謎の一体感だ。コメ:うわ、最低ですね。登録解除します!コメ:勇太くん好きだったのに幻滅しました。コメ:エロ求めてねえんだわ。じゃあな!コメ:はあ、こういう勘違いキャスターいるんだよな。視聴者が何を求めてるのかを理解してくれよ。コメ:そういう流れになるならエロ専のチャンネルにしな。俺は勇者ユートルディスの冒険が見たかったのに。 打ち解けたと感じた俺とランデルは、好みの女性のタイプやら何フェチかなど、そっち方面の話題で盛り上がった。 途中、コメントが荒れて視聴者が激減しているのに気付いたが、おかまいなしに話を続けた。 今だけは配信なんてどうでもよく、ただただ楽しいひと時を過ごす方が有益だと判断したからだ。 全然要らない情報だが、ランデルは腰のクビレに興奮するらしい。 目つきの悪い気の強そうな女性がタイプで、それを上から屈服させるのが堪らないと言いながら気持ち悪い顔をしていた。 どうやらランデルは、エスの者だったようだ。 これも全然要らない情報だが、俺はお尻フェチだ。 ケツはデカければデカいほどいい。 学生の時は、後ろから見るジャージ姿がたまらなかった。 獣人と呼ばれる動物の特徴や特性を体に宿した人間がいるらしく、その中でも猫人族が凄いらしい。 容姿は人間とほぼ変わらないが、柔軟性のあるしなやかな体が、男たちのあらゆる欲望を受け入れてくれるのだとか。 また、猫獣人の特徴として、舌のつくりが違うらしい。 ブラシのように突起状になっており、ザラついているのだが、それが大量の唾液を纏った時に、恐ろしい兵器に変わるという。 細かく小さな突起群にぬるりと撫でられた時、男たちは自然と喜びの声を上げてしまうのだとか。 そういった理由

    Last Updated : 2025-03-09
  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   馬車の中

     三日経ち、視聴者が七人になってしまった。 特に何も起こらなかったというのもあるが、ランデルとの会話のほとんどが下ネタだったというのが大きいみたいだ。 視聴者が期待していたのは、従来のキャスターと異なる新しいスタイルの英雄であり、鼻の下を伸ばした欲望丸出しの成人男性ではなかった。 異世界で勇者ユートルディスになってしまった一般人が、何度も死戦をくぐり抜ける奇跡の冒険に胸を熱くしていたのだ。 俺の人間性やユーモアだったり、ランデルの男らしさや強さに魅力を感じてくれていた方々も居たのだが、何日も同じような下品な話しを続けていれば、見る気も無くすのは当然だ。  コメントがお叱りや非難する声で溢れていたのは気づいていた。 しかし、ランデルと仲良くなって初めてまともに会話が出来たこと、男としての本能で自制が効かなかったことで、視聴者を蔑ろにしてしまったのだ。 いくら後悔や謝罪をしたところで視聴者は戻って来てはくれないだろう。 その人達はもう俺の配信を見ていないのだから。 今更リセットをして新しい冒険を始めたところで、俺という人間の印象が固定されてしまった以上、何をしようが覆されることは無いだろう。 今回の反省を次に活かそうとしても、一度離れてしまった人の心が戻ってくるような甘い仕事ではない。 俺のキャスターとしての人生は終わったに等しい。 後は、自分の好きなようにラドリックという異世界での冒険を楽しむだけだ。 その内に、自分という人間性を含めてやっぱり俺の配信が見たいという視聴者が戻って来てくれるのを願うしかない。 というわけで、仲良くなったランデルと暇つぶしに推理ゲームをすることにした。 お題に対して解答者は質問をしていき、出題者はそれについて「はい」か「いいえ」で答える。 これを繰り返すことで、お題が含む謎を解き明かし、答えを導き出すという遊びだ。 例えば、『中身の見えない箱の中に、金貨が一枚、銀貨が三枚、銅貨が五枚入っており、この中から一枚がランダムに貰える。男は、自分が確実に金貨を貰えると分かった。何故か?』という問題があった

    Last Updated : 2025-03-10
  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   地獄の推理ゲーム

    「おんにゃは、しゃいきんにゃきゃよきゅにゃっちゃゆうじんきゃりゃきいちゃ、しぇきゃいいちおいしいりょうりをぢゃしゅおみしぇにいきちゃいちょおみょっちゃぎゃ、しょにょみしぇにょびゃしょぎゃわきゃっちぇいりゅにょに、ちゃぢょりちゅきゅきょちょにゃきゅしょにょしょうぎゃいをおえちぇしみゃっちゃ。にゃじぇきゃ?」※女は、最近仲良くなった友人から聞いた、世界一美味しい料理を出すお店に行きたいと思ったが、その店の場所が分かっているのに、辿り着くことなくその生涯を終えてしまった。何故か?勇太:みなさんも一緒に考えてみて下さいね。「なるほど。その店は、友人から聞いたすぐ後に無くなってしまったのでは?」「いいえ」※いいえ「その友人なのですが、最近知り合ったという部分が重要ですかな?」「ひゃい」※はい ほうほう、このジジイ初っ端からなかなかいい質問をしてくるじゃないか。 俺との会話が成り立たないだけで、騎士を率いているし、本当に頭が良いのかもしれない。「その問題に出てくる女というのは、その女じゃないと成り立ちませんか? 例えば、男でもよいのでしょうか?」「ひゃい」※はい「ほう、では何か辿り着けなかった理由があるのですな?」「ひゃい」※はい「ふむ……」 こういう時だけ会話が成り立っているという事実に腹が立つんだが。 しかし、質問自体は的確だし、このゲームが初めてとは思えないくらい、いい線をいっている。勇太:みなさんも気になった事があれば質問してみて下さい!「その店が辿り着けない場所にあったのでは?」「いいえ」※いいえ「その店は、誰でも気軽に食べに行けるような店なのですか?」「ひゃい」※はい「むむむ……」 困ってる困ってる。 ただでさえ厳つい顔のランデルが眉間にシワを寄せて悩んでいるせいで、鬼のような形相に変化し

    Last Updated : 2025-03-11
  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   ジークウッドの街

    「全隊止まれ! これより物資の補給に入る! 補給部隊は、物資調達後自由行動! それ以外は、部隊毎に交代で馬車の見張りをするように! くれぐれもライトニングビーストの首を盗まれないように気をつけろ! 解散!」 隊列を指揮する騎士の号令で目が覚めた。 どうやらジークウッドの街に到着したようだ。 生首を大事にする考え方は理解出来ないが、そんな事はどうでもよくなっている。 いつもはお尻の痛さと精神的苦痛で、不快な気持ちになりながら馬車を降りていたが、今日は違う。 ランデル大先生の助言を聞いたり、自分の中でのイメージトレーニングに忙しく、道中が楽しく充実していたのは初めてだった。 ここ数日は、常に視聴者が五人前後いるのだが、俺がコメントをしても返事をしてくれない。 今までが上手くいきすぎていただけなのだと思いたいが、とても寂しかった。 今日は全てを忘れて楽しみたいと思う。 一人旅だと思えば気が楽だ。 こんなに胸が高まっているのはいつ以来だろうか。 小学生の時、友達が秘密基地にエロ本を持ってきた時だろうか。 中学生の時、修学旅行で、先生の見回りを掻い潜り、女子の部屋でトランプをやった時だろうか。「明日の朝出発しますので、ユートルディス殿はワシと一緒に行動しますか?」「うん!」※うん! この世界に来てから、一番の笑顔で、一番元気に返事をしたかもしれない。 鎧を脱がせてもらえたのも嬉しかった。 絡まれたりしたら嫌だし街にも詳しくないので、ここはランデル先輩と一緒に行動した方がいいだろう。 ランデルが、金貨を一枚手渡してくれた。「この金貨が一枚あれば、二ヶ月は余裕を持って生活出来ます。平民の年収が金貨九枚前後といったところでしょうか。ユートルディス殿の体力が続く限り楽しんで下さい!」「にゃりゅひょぢょ、ありぎゃちょう!」※なるほど、ありがとう! こんな小さなコイン一枚が結構な大金みたいだ。 無くさないように気をつけないと。「では、行きましょ

    Last Updated : 2025-03-12
  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   卒業

    「いやー、美味かったですなユートルディス殿。特に、タラバスパイディーはワシの大好物なんです!」「りゃんぢぇりゅにはきゃんしゃしにゃいちょいきぇにゃいにゃ。よきゅわきゃりゃにゃいちゃべみゅにょびゃきゃりぢゃっちゃきぇりょ、じぇんびゅめちゃきゅちゃうみゃきゃっちゃ!」※ランデルには感謝しないといけないな。よく分からない食べ物ばかりだったけど、全部めちゃくちゃ美味かった! 俺とランデルは、三杯目のエールを飲みながら料理の余韻に浸っていた。 少し酔っ払ってしまったが、とても楽しい気分だ。「さて、そろそろ目的の場所に向かいますが、人間の店にします? ……それとも?」「じゅうじんっしょ?」※獣人っしょ?「「だははははははははは!」」 ランデルも酔っ払っているのか、笑い上戸になっている。 馬車の中で、獣人の凄さをこれでもかという程聞かされていたので、ここは獣人の店以外ありえない。 この世界でしかできない事を、俺はやるのだ。「それじゃあそろそろ?」「いっちゃいみゃしゅきゃ?」※行っちゃいますか?「「わはははははははははは!」」 何が面白いのか分からないが笑いが止まらない。 お酒を飲んで楽しくなっているのと、これから起こるであろうハッピーな出来事への期待で最高に楽しい。 会計を済ませて酒場を後にすれば、いよいよお待ちかねのご褒美タイムだ。 初めてだと緊張して下半身が敵前逃亡してしまうと聞いたことがある。 酒が入ると弱虫になってしまうと聞いた事もある。 しかし、今の俺は緊張よりもワクワク感で一杯で、なんなら既にいつでも出撃できる状態になっている。 会計の時に、牛獣人の胸を食い入るように見続けて気持ちを昂らせたからな。「さあユートルディス殿、本日のメインイベントといきましょう!」「おしゅしゅみぇのみしぇはありゅにょ?」※オススメの店はあるの?「ユートルディス殿、このランデル、不詳の身ではありま

    Last Updated : 2025-03-13
  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   ワーキャス専用スレ その2

    ワーキャスについて語るスレ【第1806世界】206 名前:異世界好きの名無しさん ユートルディスの時代来るかもしれん!207 名前:異世界好きの名無しさん すぐ死ぬだろ208 名前:異世界好きの名無しさん 死ぬの分かってるのにミノタウロスに向かって歩いて行った時は、コメントが悲鳴で溢れてたよ!209 名前:異世界好きの名無しさん そらそうやろw 目の前で人死ぬとこなんて見たい奴おらんw210 名前:異世界好きの名無しさん タイキンの方が面白い。ユートルディスはクソw211 名前:異世界好きの名無しさん >>210 で、でたーwwwタイキンキッズ奴ーwwwww212 名前:異世界好きの名無しさん そいつ、まろんだのんチャンネルより面白いわけ? まろんタソの魅力に勝てないならこの話終わりで!213 名前:異世界好きの名無しさん >>212 ブスの話は今要らないんでw214 名前:異世界好きの名無しさん >>213 ○すぞテメー!215 名前:異世界好きの名無しさん タイキンがダンジョン行かない時はユートルディス見てるぞ! 結構おもろいw216 名前:異世界好きの名無しさん 俺も最近見てるわw ・ ・ ・ワーキャスについて語るスレ【第1809世界】795 名前:異世界好きの名無しさん 今日のユートルディス見てた奴おる?796 名前:異世界好きの名無しさん 今タイキンが下層攻略中なんでwwwww 弱小キャスター乙wwwwww797 名前:異世界好きの名無しさん >>795 見てたで!798 名前:異世界好きの名無しさん タイキンてネームドドラゴン30秒で倒せん

    Last Updated : 2025-03-14
  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   壊れた老兵

     初めての経験を終えた俺は、一皮剥けて精神的に成長したような感じがした。 大人の階段を上った俺には見える景色が違っていた。 店の外に出ると、歓楽街ならではの喧騒がどこか心地いい。 乾いた風が肌を撫でると、汗で濡れた体がひんやりと冷たかった。 深々と頭を下げる店のガードマン二人が俺の背中を見送る。 振り返らずに右手を少しあげるだけで礼を示した。 心の余裕を態度で示す、そんなハードボイルドな男になっちまったみたいだ。 ランデルは、店の入り口近くで待っていてくれた。 腰に手を当てて一人たたずんでいる。 全てを出し切ったような、満足そうな顔で夜空を見上げるランデルの顔は、どこか少年を思わせるものがあった。 ここにも一人、ハードボイルドな男を発見しちまった。「りゃんぢぇりゅ、おみゃちゃしぇ! ぢゃいびゅちゃにょしんぢぇちゃみちゃいぢゃにゃ!」※ランデル、お待たせ! 大分楽しんでたみたいだな!「おお、ユートルディ……おや、そちらの方は? あれ、たしか? いや……そんなはずが……」 そう、俺には見える景色が違っていたのだ。 先程まで一緒に愛を育んでいたアルテグラジーナちゃんに手を引かれて、黒いドレスから浮き出る形のいいお尻のシルエットを楽しみながら退店していた。 俺には、腰の動きに合わせて左右に揺れる可愛いお尻しか見えていなかった。 ランデル、すまんな。 俺にも今の状況が理解できていないんだ。「四天王が一人、炎眼の死神アルテグラジーナです。この度、勇者様の物となりましたので、今は四天王ではなくなりましたが。私のお腹には、勇者様のお子がおります。生涯、添い遂げる事を決めましたので、これからは幸せな家庭を築いていこうと思いますっ!」「ああ、そうでしたか。ああ、四天王のね。はいはい、なるほどなるほど……」 ランデル、お前どこを見ている? 虚ろな目で遠くを見ているけど、絶対に思考放棄し

    Last Updated : 2025-03-15
  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   仕事をしてくれない活舌

    「次から気をつけてくださいね。こちら、会計になります」 店員さんの冷たい視線が胸に突き刺さる。 伝票を貰ったアルが目を丸くしているので、おそらくランデルの酒代が高くついたのだろう。 ここの勘定は俺が代わりに立て替えておいて、明日水増しして請求してやるとしよう。「けっきょうしゅりゅ?」※結構する?「えっ? はっ、はいっ! アルは、勇者様と……『結婚するっ』!」 ……ん? そうじゃないんだが? 俺は、会計がいくらになったか聞いただけなんだけど。「「「うおおおおおおおお! めでてえじゃねえか!」」」「皆さん、ありがとうございますっ!」 ……んん?  おい客、「坊主、一杯奢るぜ!」じゃないんだよ! なんか俺がサプライズでプロポーズしたみたいな雰囲気になってるけど、全部君らの勘違いなんだ。 アルも大喜びでお客さんと握手してるし。どうするんだこれ。 俺の意思とは関係なく物事が進んでいく。「勇者様、幸せになりましょうねっ!」「……しょうぢゃにぇ」※……そうだね とはいえ、俺みたいな一般人が四天王に逆らえるはずないしな。 幸せになろうと言われたら幸せになるしかないという。「「「若い二人の素晴らしい門出を祝って、皆で乾杯しようじゃないか!」」」 勘違いした客どもが騒ぎ始め、俺たちを祝福して乾杯を始めてしまう。 アルが、嬉しさ一杯の笑顔を浮かべて抱きついてきた。いい匂いがするし、肌が柔らかくて気持ちがいいのだけれど、とてつもなくまずい状況になっているのは理解している。 でも、抗えるわけがない。同じシチュエーションで断れる男が居るのなら紹介して欲しいくらいだ。 周りの客が全員、優しい顔で拍手を送ってきている。 さっきまで怒っていた店員までもが、「おめでとうございます!」なんて

    Last Updated : 2025-03-16

Latest chapter

  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   ドラキュリオ帝国

     強い風を感じて目が覚めた。 いつの間にか椅子の上で横になっていたようで、目の前にはランデルと王様が座っていた。 前後左右に揺れている感覚があるが、箱馬車の中にでも居るのだろうか。 白い車内に赤い椅子とメルヘンチックだ。 どうやら、気絶している間に連れ出されてしまったらしい。 ふと視聴者数を見ると、四千人に減っていた。 最近は、何もなくても二万人前後が見てくれていたのだが、アルとナタリアが周りに居ないとここまで少なくなってしまうみたいだ。 一時期、一桁台にまで落ちてコメントが無くなってしまった事を考えれば、俺だけの配信でもこれだけ集まってくれるのは素直に嬉しいのではあるが。コメ:お、起きたか?コメ:大変な事になってるぞ!コメ:外見ろ外!コメ:勇太くん、リセットせなきついで?コメ:今回はさすがに死んじゃうかも。コメ:早く外見ろ! なんだかコメントが騒がしい。 目の前のランデルも王様も和やかに会話をしているというのに、何故リセットする必要があるのだろうか。 寝転がりながら窓を見ると、今日の天気は快晴のようだ。 こういう日は、俺の心も晴々とした気持ちになる。 少し肌寒いが、青々とした空がとても綺麗だ。 さぞ景色も輝いて見えることだろう。 起き上がって窓の外を見てみると、俺は空に居た。「にゃんぢゃきょりゃあああああああ!」※何だこりゃあああああああ! 木も、街も、山すらも小さく見える。 切り立った岩山、青々とした平原、森の中に佇む奇岩、上空から見る世界は壮大で、言葉に出来ないほど美しい。 時折雲を突き抜け、景色が流れるように変わっていく。 なかなかスピードが出ているようだ。 ……どうしてこんな事になっているのだろうか。「ユートルディス殿、お目覚めですかな?」「勇者よ、まもなくだぞ。気を引き締めよ!」コメ:だから言ったじゃん!wコメ:睡眠時三

  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   ゴブリン襲来

    「ハゲちゃん、お城に着いたらベッドで寝れるかな? あたし、またフワフワしたい!」「城のベッドは、もーっと柔らかいじゃろうな。しばらくは毎日気持ちよく眠れるのうナタリア」「本当? あたし楽しみ!」 ジークウッドの街でベッドを経験してから、ずっとこんな感じだ。 初めてベッドに横になったナタリアは、寝そべりながら空に浮いているみたいと感動していた。 俺達は今、森の中を走っているのだが、ここを抜けたら城が見えてくる。 闇皇帝ドラキュリオを倒すには色々としがらみがあり、準備期間中は城で過ごすことになるというランデルの話を聞いたナタリアが期待に胸を膨らませているのだ。 このまま順調に進めば、昼過ぎには城に到着するだろう。 俺としては、ベッドよりも国お抱えのシェフが作るご飯の方が気になっている。コメ:当たり前の幸せすら与えてやれない勇太を許してあげてねナタリアちゃん……。コメ:こっから一年近く城で暮らすんだっけ?コメ:近くにダンジョンとか無いのか? 同じ場所で同じ日常を見続けるのはきついぞ?コメ:いやいや、勇太が戦えるわけ無いだろwコメ:ゴブリンてスライムより弱いんだっけ?コメ:ワロタwww コメントの言う通り、俺も長期間冒険が出来ない事を危惧している。 変わり映えの無い毎日という、俺が捨てたものを見せてしまう事になる。 この世界に来る前とは違い、今の俺にはアルとナタリアという家族がいる。 つまらない日常とはならないだろうが、それは俺にとってであり、視聴者からすると退屈かもしれない。  俺が選んだラドリックという世界にも、タイキンさんが活躍しているようなダンジョンは存在している。 元々、タイキンさんのような配信をしたくてこの世界を選んでいるからだ。 城の近くにダンジョンがあるかは分からないが、俺に倒せるのはスライムくらいだろう。 いや、スライムすら倒せないかもしれない。 ゲームのようにレベルという概念があればいいのだが、それが無い以上は難し

  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   食レポゴブリン

     宿の近くで飯屋を探していると、一際賑やかな客引きが居た。「楽しい食事を体験してみない? 旅の思い出になること間違いなし! 今だけオープン記念でお得に食べれるよ!」「ダディ、楽しい食事だって! あたしあそこの店がいいかも!」「ちゃしきゃにきににゃりゅにぇ!」※確かに気になるね! まだ空席があったようで、すぐに案内してくれた。 オープンしてまだ三日しか経っていないらしい。 コース料理の店なので、酒場でワイワイやりたい客層が多いジークウッドの街ではイマイチ客の入りが良くないのだとか。 店内は、テーブル席が六つの暖かい雰囲気で、厨房に居るやけに体つきがいい角刈りの男がミスマッチだった。「メヂールのカルパッチョだ。緑の皿から食え」 角刈りが料理を運んでくれた。 マグロに似た薄切りの魚が花の形に盛り付けられ、サラダが添えられている。 ドレッシングで半円状に模様が描かれていて、見た目でも楽しませてくれるようだ。 とても目の前で腕を組んでいるゴリラのような男が作ったとは思えない。 何故この男は料理を運んだ後も俺たちのテーブルの近くで仁王立ちしているのだろうか。 そして何故全く同じ見た目のカルパッチョが二皿ずつあるのだろうか。 |縁《ふち》が赤と緑の二種類の白い皿がある。「早く食え」 角刈りが急かしてくる。 この店が流行らないのはこいつのせいなんじゃないか?「何これ! 全然違う!」「本当ですねっ! 見た目も味付けも全く同じなのに、何故でしょうかっ?」 二つの皿を食べ比べたナタリアが驚きの声を上げている。 アルは、片方の皿から一口食べて目を瞑り、別の皿から食べて首を傾げている。「ほう、分かるかい?」 ゴリラの表情は変わっていないのだが、声のトーンが一つ上がった気がする。 よく見るとソワソワしていて、少し嬉しそうだ。コメ:勇太早く食えよ!コメ:ウホウホ言ってる奴をお前の舌で黙らせろ!

  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   思い出の地

    「ランデル殿に伝令、ジークウッドの街に到着しました!」「見張りは交代で、それ以外は自由行動! 今日は羽目を外して、精一杯英気を養え!」 オウッティ山脈を出発してから六日経ち、夕暮れ時にジークウッドの街に到着した。 兵士達も疲れや色々な物が溜まっているだろうということで、今日は街で一泊する。 こういう時は鎧を脱がせてもらえるし、久々に野営の硬いゴザのようなマットではなく宿屋の柔らかいベッドで眠れるのは嬉しい。 ナタリアは生まれて初めてベッドで眠ることになる。 そう考えると不憫でならない。コメ:ずっと思ってたんだけど、配信方式が視界共有だと勇太くんが寝る時に画面が真っ暗になるから、睡眠時は三人称にしてくれん?コメ:あ、俺もそれ思った!コメ:ワーキャスの自動設定で変えれるで?勇太:俺と一緒に寝て、俺と一緒に冒険して、みんなで同じ時間を過ごせると思ってたんですが。コメ:誰がお前の生活リズムに興味あんねん!wコメ:アルちゃんとかナタリアたんの寝顔見たいんじゃこっちは!コメ:これがゴブリンの思考かwwwコメ:ゴブトルディスはよ設定変えろ!コメ:ゴブトルディス草 ナタリアとランデルのディベートから、コメントが面白がってゴブリン呼ばわりしてくる。 まだこの世界のゴブリンを見た事が無いのにも関わらずだ。 結構傷ついてるんだからな!「ユートルディス殿! 前回は一緒に行動しましたが、今回はどうします? ワシはいつものアレに行きますが」「おりぇはありゅちょにゃちゃりあちょきょうぢょうしようきゃにゃ。きゃにぇぢゃきぇきゅりぇ!」※俺はアルとナタリアと行動しようかな。金だけくれ!「そうですか。ユートルディス殿も丸くなったもんですな……」 一緒に夜遊びしたのは一度きりの筈なんだけど、このジジイは俺の何を知っているのだろうか。 日本で暮らしている時も安月給だったから、楽しみといえば配信を見るぐらいしか無かったのだが。 まあ、こいつは俺をゴ

  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   ディベート勝負 後編

    コメ:なんか緊張してきたなwコメ:議題がしょうもないけど楽しみだわ。勇太:俺がカッコいいとかダサいとか自分で言うの恥ずかしいんですけど。コメ:たしかにwwwコメ:じゃあ何でその議題にしたんだよ!wコメ:何で勇太だけ罰ゲームになってんの?w「しょきょみゃぢぇ! しぇんきょうにゃちゃりあ、いきぇんをぢょうじょ!」※そこまで! 先攻ナタリア、意見をどうぞ!「カッコいい男って、あたしは思いやりがあって頭がいい人だと思う。 今着ている服はダディが買ってくれたんだけど、あたしがママみたいに可愛い服を着たいって気付いてくれて、服屋さんに連れて行ってくれたの。 高級店で高い服だったのに、あたしが店の中で悩んでたのを見てくれてて、似合うからって三着も買っちゃって。 その時ね、あたし実は見てたんだよね。 会計の時に、ダディのお金が無くなっちゃったのを。 ダディったら、自分の服も買わなきゃいけないのを忘れて、全部あたしとママの服にお金を使っちゃってたんだから。 気付かないフリして次のお店に行ったんだけど、そこの服も可愛くって、ついダディに欲しい服を見せたら、買うって言うの。 お金も無いのにどうするんだろうと思ったら、機転を利かせてハゲちゃんに買ってもらっちゃったんだよ? あたしのダディは、優しくて、頭が良くて、世界一カッコいいんだから!」「……うん、うん。ちょっちょみゃっちぇにぇ」※……うん、うん。ちょっと待ってねコメ:え、勇太くん泣いてる?wコメ:きしょwコメ:ナタリアちゃんええ子や!【一万円】コメ:俺もこんな娘が欲しい。【二万円】コメ:この短時間でこんなに上手く話を|纏《まと》められるの凄すぎんか?【一万円】コメ:このプレゼンに勝つの無理じゃね?wコメ:いい話だけど、勇太は頭良くないよな?コメ:言っちゃダメ!www「しょりぇぢぇは、りゃんぢぇりゅきゃりゃしちゅぎを!」※それ

  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   ディベート勝負 全編

    「伝令兵はすぐに出発しろ! 補給はジークウッドの街で一度のみ、最短で城へと戻るぞ!」 待機部隊と合流し、短い作戦会議の後すぐに出発する事になった。 もちろん俺はその作戦会議に呼ばれていない。 これから二週間近くかけて城に戻るのだが、馬車の中でランデルから作戦について教えて貰った。 足の速い馬五頭を選び、先に五人の伝令役を城に向かわせることで、ジャックス王に闇皇帝キディス・メイガス・ドラキュリオ討伐の準備を整えて貰うらしい。 俺達が城に到着するより五日程度早く伝令兵が報告する予定だ。 ジャックス王国含む三カ国程度で同盟を組み、一気にドラキュリオ帝国を攻め滅ぼす大規模な戦争になるかもしれないとランデルが言っていた。 ジャックス王国には既に魔王軍のスパイが潜入している為、秘密裏に動く必要があり、実際に戦争が起こるまでには一年以上かかる可能性があるとも言っていた。 異変に気付いたドラキュリオ帝国側が何か手を打ってくる事もあり得るので、不測の事態に備えた緊張状態がしばらく続きそうだ。 この話を聞いていたアルは、馬鹿馬鹿しいと鼻で笑っていた。 アルが言うには、ヴァンパイアである闇皇帝は太陽の光に弱いので、夜もしくは自身が発生させた闇の中以外では全力で戦えないらしい。 昼間に闇の外から焼き殺すか、俺が聖なる勇者の力で闇を祓えば一瞬で終わると自信満々の顔で言い放っていた。 ナタリアが俺に尊敬の眼差しを向けていたので心が痛かった。 ちなみに、全力の闇皇帝にはアルでも勝てないらしい。 俺なら勝てるらしいが。 ナタリアのマルーン色の目がキラキラと輝いていたので、罪悪感で胸が苦しくなった。コメ:へぇ、勇者ユートルディスってそんなに強いんだね!コメ:俺達は|欺《あざむ》かれていた?コメ:まあ、四天王の半分はユートルディスがなんとかしちゃってるもんな。勇太:ジャンケンなら勝てるかもしれませんね。コメ:つまんなすぎて草コメ:ユーモア忘れてきた?コメ:勇太くんおもしろーい!(真顔)「ねえねえダディ! 

  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   追い討ち

    「ダディ見て見てー!」 ナタリアの声が聞こえた。 視線を移すと、魔剣ゲイルウィングを持って走っている。 あの小さな手に握られているのが花やヌイグルミだったらどれほど可憐だっただろうか。 距離を取ったナタリアは、龍の翼に似た黒い大剣を両手で持ち、大きく振りかぶった。 白いワンピースを着た少女が、自分の身長の二倍に近い巨大な剣を軽々扱っているという異常な光景だった。 ナタリアの視線の先には、ダンゴムシのように体を丸めたランデルがいる。 まさかとは思うが……。「ハゲちゃんいくよー!」 ナタリアが右足を前に出した。 玄関を開けて、散歩にでも出掛けるような軽い一歩であった。 ナタリアが体を捻り、剣を振った。 庭で素振りをする野球部のように、その行為に罪悪感など持ち合わせていない。 右から左へ横薙ぎに空を斬った魔剣の刀身から、半円状の漆黒の刃が放出された。 地を這うように飛ぶそれは、ズガガガと大地を削りながらランデルに向かって行く。「はへ?」 突然ナタリアに呼ばれたランデルは、甲羅から首を出す亀のように顔を上げると、情けない声を漏らした。 黒い何かが迫って来ているのだから当然だろう。「ハーゲちゃーん! 受け止めてー!」 魔剣を地面に起き、口の両脇に手を添えたナタリアが可愛らしく呼びかける。 ナタリアの声に反応したランデルは、巨大な鉄剣を持って立ち上がった。 青い鎧の老兵が、先の戦闘で刀身が傷ついた大剣を上段に構えた。 心なしか、その口元は笑っているように見えた。「やるではないかナタリア! ぬううんっ!」 地面を叩きつけるように振り下ろされた大剣が、闇の刃を真っ二つ切り裂いた。 二つの刃が交差した甲高い金属音、その直後に大地が割れる鈍い衝撃音が響く。 爆発した地面が砂埃を巻き上げ、ランデルの姿を覆い隠した。「ハゲちゃんすごーい!」 強い風が砂煙を霧散させると

  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   悲劇

     青の老兵と元騎士団長の誇りを賭けた戦いは、アルが強制的に終わらせてしまった。 騎士のランデルに対しての復讐としては、これ以上ない残酷なものであっただろう。 パワーポーションを飲み、命を削ってまで倒そうとした相手が居なくなってしまったのだ。 水を差されたランデルは、固まったように動けないでいる。 ランデルの周りを陽炎のように立ち昇る空気が、魂が漏れ出しているかのように見えてしまう。 兵士達もどうしたらいいのか分からない様子でポカンとしており、アルとナタリアだけが楽しそうに会話している。 異様な空間が出来上がってしまった。コメ:おい勇太、ランデルを慰めてやれよ。コメ:ランデルも悪いけど、アルちゃんの仕返しもエグいなwコメ:あぁ、アルたそ。俺の頭を消し飛ばしてくれないかなぁ。【一万円】コメ:燃え尽きちまったみたいだな……。勇太:大量に買った携行食はどうするんでしょうね?コメ:心配するとこ違くね?wwwコメ:思考が主婦で草「ノイマン、ネフィスアルバを立たせよ!」「はっ!」 ランデルの指示で、ノイマンがネフィスアルバの元へと走る。 ランデルの瞳に光が戻っていた。 ノイマンが頭の無い死体を抱え上げて立ち上がらせると、ランデルは岩を掻き分け、瓦礫の中に潜っていく。 なんだか嫌な予感がするが、そうでない事を願うしかない。「青い鎧はジャックス王国最強の騎士のみが着用を許されておる! 人間を裏切り、騎士である事から逃げた弱者になど負けはせん!」 地中から決め台詞が聞こえた。 ランデルが背中で瓦礫を持ち上げながらゆっくりと立ち上がる。 パラパラと体からこぼれ落ちる小石が雰囲気を盛り上げているが、もはやギャグでしかない。 嫌な予感が的中したようだ。 あの大根役者は、全てを無かった事にしてやり直そうとしている。 呆れて物も言えない。 乾いた笑いが浮かんでくる。 当の本人は至って真面目なようで

  • 異世界で配信始めます〜滑舌が悪くなるスキルのせいで、魔王を倒すことになりました。勇者じゃなくて勇太なんだが?〜   悪魔の悪戯

    コメ:娘に守られる勇者……おる?コメ:今度こそ死んだかと思ったわ!コメ:勇太の心拍メーターさ、一瞬ゼロになってたんだけど?勇太:あー、回らないお寿司を食べた思い出を振り返ってた時ですかね?コメ:知らんわ!wwwコメ:脳が死を受け入れてて草 膠着状態から一転して大剣同士の激しい打ち合いが始まった。 動きが速すぎて俺には二人が何をしているのか分からないが、右で左で剣戟が鳴り、その度に衝撃波が飛んでくる。 俺はサッとナタリアの後ろに隠れたので、もう安心だろう。 念の為にバリアのポーズをしておいた。「やーっぱり年とったらダメダメじゃんねー? 俺っちのパワーとさー、魔剣ゲイルウィングが合わさっちゃったらさー、だーれも勝てないワケなのよー!」 ランデルが押され始めた。 ランデルは、地に足をつけて腰を起点にした遠心力を生かす攻撃を得意としている。 ネフィスアルバは、それと同等の威力を右腕だけで繰り出せる。 体格差があるため、単純な力の勝負で分が悪いランデルは技術でカバーしていた。 しかし、剣に加えて突きや蹴りの格闘術を織り交ぜ始めたネフィスアルバの猛攻は凄まじく、なかなか反撃の隙を見出せないランデルは後手に回らざるを得なくなってしまった。「ぬぐあっ!」 なんとか紙一重で攻撃を受け流していたランデルであったが、ネフィスアルバの左拳を肩に受け、体勢を崩してしまう。 その隙を見逃さず、ネフィスアルバが強力な袈裟斬りを放つ。 ドラゴンの翼膜のような禍々しい刃がランデルに迫る。 咄嗟に剣の腹を盾にしたランデルであったが、真正面から受け止めた凄まじい衝撃により、後方に吹き飛ばされてしまった。 振り下ろされた魔剣ゲイルウィングの刀身から漆黒の斬撃が放たれたのだ。 剣を振るった軌跡を追うように弧を描いた闇の剣線に押し出されたランデルは、その勢いのまま瓦礫の山に突っ込み、ガランガシャンと音を立てながら埋もれてしまった。 ネフィスアルバが初めて見せた飛ぶ斬撃だった。

Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status